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カメラの「USB充電」「USB給電」って何? キーワードは“PD対応”だ!

最近、「USB給電」という言葉を聞くことが増えてきた。そこで今回、デジタルカメラの稼働時間を伸ばすことができる、モバイルバッテリーによるUSB充電とUSB給電の基本を紹介する。電力安定供給のキーワード“PD対応”を覚えよう!

 

USB3.1 Type-C端子の登場が大きく関わってくる

デジタルカメラの進歩はパソコン関連の進歩と平行して進んでいることが多い。なかでも最新のUSB3.1 Type-C端子の貢献度には素晴らしいものがある。もともとはデータや信号などを送る規格として誕生したUSBだが、USB3.1 Type-C端子は電源や電力パワーを最高100Wまで送れる規格になっている。これによって今までACコード経由で電源を供給する必要があったのが、データ転送と同時に電力も送ることが可能になった。

 

こうしたUSB規格の進化に伴い強化されてきたのがUSBモバイルバッテリーで、読者の中にも、使用しているスマホやタブレットなどの内蔵バッテリーが少なくなったとき日常的にモバイルバッテリーから充電を行っている方も多いはずだ。デジタルカメラでも同様のことが要求されるようになり、最近ではUSB経由によるモバイル充電やモバイル給電が可能なミラーレス一眼カメラが増えてきている。今回はUSB3.1 Type-C端子を装備したモバイルバッテリーからカメラへの充電・給電するための基礎知識を簡単に解説していく。

 

ただし、まだまだ発展途上の機能ということもあって、これが正解といった明確な答えが存在しないのが現状だ。特にモバイルバッテリーは中国製のものが多く、出力電圧やアンペアなどまちまちなことが多い。トラブらないように最低限の知識をしっかりと理解し、自分の使用するカメラに合ったものを丁寧に探してほしい。

 

USB充電、USB給電って何?

<USB充電>

カメラ内のバッテリーを電源OFF時にチャージ

端子を経由してモバイルバッテリーからカメラ内のバッテリーをチャージできるのが「USB充電」。カメラの電源OFF時に使える機能になる。

メリット
・スマホ、タブレット、カメラをモバイルバッテリーひとつで充電できる。
・予備のカメラ用バッテリーを沢山持たなくてよくなる。
・移動時など、カメラ電源OFF 時にカメラ内のバッテリーが充電できる。

 

USB給電

モバイルバッテリーでカメラを稼働する

カメラ撮影時にカメラ内バッテリーを消費せず、USB経由のモバイルバッテリーでカメラを稼働させることができる。長時間の撮影や動画撮影に威力を発揮する。純正予備バッテリーが少なくて済む。標準装備するカメラが増えてきている。

メリット
・長時間露光撮影やタイムラプスなど動画撮影時、撮影の途中でバッテリー交換が出来ない撮影に便利。
・冬場など低温時の撮影でカメラ内バッテリーの消耗が早い場合でも長時間の撮影が可能。
・カメラ用予備バッテリーや充電器を持たなくて済むのでカメラバック内がスッキリする。

 

給電可能なカメラはまだ少ない

デジタル一眼レフカメラはAC電源キットなどはあるが、USB充電にはぼ未対応。ここ数年の最新ミラーレス一眼カメラでは、充電のみ対応機種と充電・給電、両方に対応する機種が存在する。詳細は各カメラメーカーHPなどにて確認してほしい。

まずカメラの端子の種類をチェック

現在、カメラ側のUSB端子の形状はメーカーや機種によりまちまちなので、最初に自分のカメラのUSB端子がどの形状なのかをチェックしておく必要がある(CHARGEと記入されている場合もある)。また購入したカメラのマニュアルなどで、USB入力やバッテリーの項目をよく読み、充電・給電対応状況やカメラ購入時に同梱されたケーブルがUSB充電や給電に使用できるのか?を知っておこう。場合によっては新たにケーブルを購入する必要がある。

<USB Micro端子(マイクロUSBと呼ばれる)>

 

<USB Micro-B端子(マイクロBと呼ばれる)>

 

<USB Type-C端子(タイプCと呼ばれる)>

 

つながればチャージランプなどが点灯する

カメラに合ったモバイルバッテリーやケーブルを使用すればカメラ側端子に接続した瞬間に充電開始のマークやチャージランプが点灯して知らせてくれる。うまくつながらないと充電も給電も始まらない。

▲キヤノンEOS Rの充電マーク

 

Type-Cから出力するケーブルを使おう!

もっとも重要なのは使用するUSBケーブルのモバイルバッテリー側の出力端子がUSB Type-Cであること。現在まだまだ発展途上の状態なので、これが正解という回答はまだ無いのだが、安定して使いたいなら、高出力の電力を送ることができるType-Cのモバイルバッテリーからカメラ側端子に変換できるケーブルが必要だと覚えておこう。

<USB Type-C – USB Microケーブル>

<USB Type-C – USB Micro-Bケーブル>

 

<USB Type-C – USB Type-Cケーブル>

 

Type-Aからは充電のみが可能

モバイルバッテリーには端子が複数装備されていることが多い。USB 3.1規格に則ると厳密にはType-Aからは充電のみが可能。Type-Cなら充電と給電が可能になる。写真の2種類の変換ケーブルを見てほしい。上のケーブルはType-A – micro-B 変換だから充電のみ、下はType-C – micro-B変換のケーブルだから充電と給電に使えることになる。

<Type-Aからは充電のみ>

 

<Type-Cは充電・給電に使える>

 

PD(パワーデリバリー)対応のケーブルを選ぼう

最近では給電に正式に対応したケーブルが発売され始めている。家庭電源のACケーブルのように高出力の電源を供給できるのが「PD(パワーデリバリー)対応」のケーブルだ。このPD対応ケーブルの接続端子内には、接続するカメラに必要な電圧に調整するコントローラーチップ( E-MARKER )が内蔵されており、名前の通り電力を安定供給することが可能。先にも書いたが安定した充電・給電には、カメラ側に必要な電力を正しく運ぶことができるケーブルが必要になる。現在市販される接続ケーブルには充電やデータ通信のみに対応したものが多く、電力を安定供給できるPD対応のケーブルは少ない。購入時に必ずよく確認しよう。

端子の形状変換アダプターはNG!


スマホの充電でおなじみの端子の先端形状を変換できるアダプターは便利だが、カメラでは安易に先端だけを変換するのは基本NG。すぐ壊れたり、最悪カメラ内部を傷つけることがあるので注意したい。

 

モバイルバッテリーも当然PD対応のものを!

スマホやタブレットの充電用に開発されたUSBモバイルバッテリーも進化している。カメラへの給電を行うには、USB Type-C端子を装備した“PD対応”のものを選択する必要がある。一般的なモバイルバッテリーはAC電源からUSB Microで充電を行い、USB Type-A端子から出力するものが多い。しかし、PD対応のモバイルバッテリーはUSB Type-C端子で充電を行い、接続機種に合わせてType-C端子とType-A端子の両方から出力できるようになっている。またPD対応のUSB Type-C端子には写真のようにPDと刻印してあるので、購入時の参考にしてほしい。ちなみにPD対応のモバイルバッテリーは10000mAh~25600mAhの大容量であることが多い。

▲PDの刻印が目印。これなら給電が可能だ。ちなみにPDには決まったロゴはまだない。

 

▲下の2つはType-C端子がないので給電はできない。

 

充電時もPD対応を選択しよう

モバイルバッテリー本体の充電には家庭のコンセントにつなぐ充電器が必要となる。この充電器にもPD対応のUSB Type-C端子を持ったものがあり、通常のUSB Type-A端子のものに比べ高速な充電が可能となる。現状では、充電器、モバイルバッテリー、そして接続ケーブル、すべてに、PD対応製品を選ぶことが確実な電力供給の第一歩だ。

 

カメラでUSB給電を使用する手順

最後に、ソニーαシリーズを使って給電するための手順を紹介しておこう。他社カメラでもおおむね手順は同様だ。

 

まず大きな注意点として、モバイルバッテリーからの給電でカメラが稼働するからといって、カメラ内のバッテリーを抜いたり、カメラ内のバッテリー容量がゼロになった状態にしてはいけない。給電が行えなくなってしまう。メーカーにより多少の違いはあるが、「カメラ内にバッテリーが入っていること」「また、そのバッテリーが1/3程度以上残っていること」が使用条件となる。

 

念のため最後に忠告しておくと、現状ではカメラごとに必要な電圧やアンペアが異なるので、誰にでもオススメできるような製品はまだ存在しない。メーカーのホームページや取り扱い説明書の「USB充電・給電」の項目などをチェックして、くれぐれも慎重に自分のカメラに合ったPD対応モバイルバッテリーとPD対応のケーブルを選んで撮影に挑んでもらいたい。

 

1 . 「USB 給電」をONにする

カメラのメニューの「USB端子」の項目から「USB給電」を「入」に設定しておく。これを最初に設定しておかないと、USBをつないでもカメラ側が反応してくれない。

 

2. バッテリーを入れる

カメラ内にバッテリーを装てんすることで給電機能が使えるようになる。バッテリー無しでは給電は行えない。また内蔵バッテリーの容量も1/3以上残っている必要がある。

 

3. カメラ電源をOFFにする

カメラ電源を一旦OFFにしてから、モバイルバッテリーとカメラをPD対応ケーブルで接続する。これでPD対応ケーブル内のE-MARKERがカメラに必要な電圧を測り調整してくれる。

 

4. 充電用チャージランプの確認

すべての調整は30秒ほどで終わる。電圧調整などが終了すると充電のチャージランプが点灯する。ランプが点灯しなければケーブルかモバイルバッテリーどちらかが規格外だ。

 

5. カメラの電源をONにする

チャージランプの灯を確認できたら、カメラの電源をON にしよう。モバイルバッテリーとカメラをつなぐケーブルがちょっとしたことで抜けないよう注意すること。

 

6. カメラ内のバッテリーのマークを確認

カメラの電源を入れたら、背面液晶のバッテリーマークを確認する。給電できていれば、バッテリーマークの横にAC電源ソケットのマークが表示される。これがカメラ外の電源で動いていることを表している。さあ撮影を始めよう。

 

パナソニックの場合>

パナソニックのカメラは、給電が始まる前に背面液晶に大きな文字でアラート画面が現れる仕組みになっている。とても便利だ。

 

<オリンパスの場合>

オリンパスのカメラは使用できるモバイルバッテリーをシビアに選ぶので、接続された瞬間に「USB設定項目」が背面液晶に現れる。「USB PD」を選択すると、カメラの規格に合った機器かチェックされ、その後に接続が行われる。

 

解説:森脇章彦