機材レポート

20世紀初頭に誕生した名玉のDNAを継承した貴重なオマージュレンズ「フォクトレンダー HELIAR 50mm F3.5」

中村文夫の古レンズ温故知新「フォクトレンダー HELIAR 50mm F3.5」

中村文夫の古レンズ温故知新「フォクトレンダー HELIAR 50mm F3.5」
HELIAR (ヘリアー) 50mm F3.5
ビューファインダーを省いたレンジファインダー機「BESSA T (ベッサT)」とセットで、2000本が限定生産された。2006年にはフォクトレンダー創立250周年を記念して、超高屈折率ガラスを採用した「HELIAR classic 50mm F2」も登場している。

 

ヘリアーへのオマージュを込めてコシナが2001年に発売したレンズ

フォクトレンダーは1756年にオーストリアのウィーンで創業した光学機器メーカー。1839年にダゲールがフランス学士院でダゲレオタイプを発表した翌々年には総金属製カメラを発売するなど、写真創生期から撮影用機材の開発に積極的に取り組んできた。

ヘリアーはフォクトレンダーが1900年に発売した大判カメラ用レンズで、収差を良好に補正した高性能レンズとして世界中の営業写真館で愛用された。

ヘリアーのDNAを継承した貴重な1本

今回紹介する「HELIAR 50mm F3.5」は、ヘリアー誕生101年を記念して、日本のコシナが2001年に発売した沈胴式のライカスクリューマウントレンズだ。レンズ構成は3群5枚で、1群目と3群目の貼り合わせレンズが中央の凹メニスカスを挟む設計。これはオリジナルのヘリアーにならったもので、いわばヘリアーへのオマージュと解釈できる。

現在、コシナは超広角レンズや中望遠レンズにもヘリアーの名称を用いているが、その多くはオリジナルのヘリアーとは異なる設計だ。大判用と35mm判用というフォーマットの違いこそあれ、ヘリアーのDNAの継承という意味で、このレンズは貴重な存在と言えるだろう。

 

中村文夫の古レンズ温故知新「フォクトレンダー HELIAR 50mm F3.5」
鏡筒側面にはレンズ構成図が誇らしげに刻印されている。専用フードは肉厚の金属製で高級感がある。

 

中村文夫の古レンズ温故知新「フォクトレンダー HELIAR 50mm F3.5」
マウントはライカスクリューマウント。バヨネット式マウントの「ライカM9」に装着する際は、Mマウントカプラーを使用する。

 

中村文夫の古レンズ温故知新「フォクトレンダー HELIAR 50mm F3.5」

黒一色で塗装された蒸気機関車の表面などはのっぺりした印象になりがちだが、このレンズはシャドー部の再現性に優れ、立体感のある描写が得られた。

ライカM9 F3.5 1/2000秒 ISO160 WBオート

 

 

〈文・写真〉中村文夫