機材レポート

広く写りすぎて困っちゃう!? マイクロフォーサーズ用の円周魚眼レンズ「LAOWA 4mm F2.8 Fisheye MFT」レビュー

動物の「鼻デカ写真」が撮れるレンズとしても注目される魚眼レンズ。対角線の画角が180度以上あり、非常に広い範囲を写すことができる魚眼レンズは、通常の超広角レンズと異なり、強い歪曲収差があるのが特徴で、デフォルメ効果を活かしたインパクトのある写真が撮れる。

 

マイクロフォーサーズ用の魚眼レンズとしては、オリンパス、パナソニック、サムヤン、七工匠などから対角線魚眼レンズがすでに発売済みだが、イメージサークルをフルに利用した円形画像が得られる実用的な円周魚眼レンズは選択肢(※)が少なかった。そうしたなか、発売された「LAOWA(ラオワ) 4mm F2.8 Fisheye MTF」は、マイクロフォーサーズユーザー待望の円周魚眼レンズと言っても過言ではない。

※LENSBABY サーキュラーフィッシュアイ(画角185度/ケンコー・トキナー取り扱い)、Entaniya(インタニヤ)のFisheye 250 MFT 3.0(画角250度)がある

▲オリンパスのOM-D E-M5に装着したLAOWA 4mm F2.8 Fisheye MTF

 

超小型・軽量の円周魚眼レンズで、価格もリーズナブル

LAOWA 4mm F2.8 Fisheye MTF は、一般的な円周魚眼レンズの画角180度を超える210度という広い範囲を写すことができるレンズ。重さは135gと軽量で、ドローンやジンバルに載せて移動撮影することを想定している。価格はサイトロンジャパン(日本正規輸入代理店)のオンラインショップで22,950円(税別)と手頃であることも魅力だ。

 

210度という広い画角は、360度のパノラマ写真やVR画像の作成に有利になるとのこと。画角の広さは大きなアドバンテージだが、画像の円周部分の上下が若干切れてしまう点は、少し残念。さらに、マウント面からレンズ先端まで実測32mmと短いこともあり、グリップが前に大きく張り出したオリンパスのOM-D E-M1、E-M1 Mark II、E-M1X、パナソニックのLUMIX GH5以下GHシリーズ、G9以下Gシリーズでは、グリップが写り込んでしまうので、使用時に注意が必要だ。

 

開放F値はF2.8と明るく、星景写真にも使えそう。今回は日常的な風景や夜景の撮影を通して、このレンズのレポートをしたい。

▲LAOWA 4mm F2.8 Fisheye MTFのフォーカスリングにはレバーが設けられ、ピント合わせをスムーズに行うことができる。専用のレンズキャップは金属製のかぶせ式。

 

レンズより後ろにある被写体まで写る210度という広い画角

ある寺院の門前に立ち、カメラを水平垂直に構えて撮影。自分が写り込まないように両手を思い切り前に突き出し、液晶モニターを見ながらシャッターを切る。210度という画角は、カメラの真下にある消火栓の蓋、左右にまっすぐに伸びる参道の先まで写してしまう。なお、画面の上下の端が若干切れる。

オリンパスOM-D E-M5  LAOWA 4mm F2.8 Fisheye MTF 絞り優先オート F8 1/125秒 −0.3補正 ISO200 WB:オート

 

被写体に迫ればリトルプラネット調の写真が撮れる

最短撮影距離は8cm(レンズ先端からのワーキングディスタンスは28mmほど)と短い。そこで一輪の花に接近して撮影してみた。レンズをやや下に向けているため、画面下側には自分の足が写り込んでしまった。花の1つ1つが鮮明に写っており、緻密な描写に好感が持てる。花の群落が球形に見え、リトルプラネット調の写真になった。また、画面左端に太陽が入っているが、ゴーストの発生がよく抑えられている。

オリンパスOM-D E-M5  LAOWA 4mm F2.8 Fisheye MTF 絞り優先オート F5.6 1/400秒 +0.3補正 ISO200 WB:オート

 

▲LAOWA 4mm F2.8 Fisheye MTFに使用するカメラはグリップがフラットなモデルがベスト。写真はOM-D E-M5。カメラの持ち方も重要。グリップを握ると指が写ってしまうため、両手の指でカメラを上下から挟み込むように持つと指が写りにくい。 

 

レンズを真上に向ければ地上の風景が360度写る

大阪のシンボル、通天閣の下に立ち、レンズを真上に向けて、カメラを頭上に差し上げるようにして撮影。塔の底部に描かれた花鳥画が美しい。また、円周画像の周辺部には通天閣が立つ新世界の町並みがぐるり360度、写っている。

オリンパスOM-D E-M5  LAOWA 4mm F2.8 Fisheye MTF 絞り優先オート F4 1/40秒 −0.3補正 ISO1600 WB:オート

 

円周魚眼レンズは夜の都市風景にピッタリ

円周魚眼レンズと近代的な都市風景は相性がよい。特に夜は周囲が暗く、主要な被写体だけが明るく照らされたり、光を放っていたりするので、造形的な面白さが強調される。また、円周魚眼レンズのデフォルメ効果によって非現実的な情景がインパクトのあるものとなる。

オリンパスOM-D E-M5  LAOWA 4mm F2.8 Fisheye MTF 絞り優先オート F5.6 1/6秒 ISO200 WB:オート

 

トリミングして丸い円周魚眼画像に仕上げる

画面の上下がわずかに切れてしまう点が気になるときは、レタッチソフトを使って丸い円周魚眼画像に仕上げよう。次の写真は画像の上下がどれだけ切れているか示したもの。赤い円がLAOWA 4mm F2.8 Fisheye MTF本来のイメージサークル。レタッチソフトを使い、上下が切れない位置、ちょうど緑色の円の部分で画像を切り出し、少し大きめの黒100%の画像に貼り付ければ、欠けのない、丸い円周画像となる。

 

円形画像の縁の部分を自然な感じにしたければ、画像を円形に切り抜くのではなく、不用な部分に黒いマスクをかける。緑色の線の中を範囲選択したのち、選択範囲を反転し、「境界をぼかす」機能(Photoshopの場合)を使って周囲を黒く塗りつぶす。すると画像と黒いバックの境界部分がわずかににじみ、自然な仕上がりになる。

 

画像を緑の線の位置でトリミングした場合、画角が何度になるか計算していないが、180度を超える画角を維持できていると思われる。このようにトリミングすることで、周辺部の像が流れている部分や色にじみが生じている部分をカットできるので、画像の端まで鮮明な円周魚眼画像になるというメリットもある。

▲赤い線で囲んだ部分がLAOWA 4mm F2.8 Fisheye MTF本来のイメージサークル。緑色の線で囲んだ画像を切り抜けば、丸い円周魚眼の画像となる。

JR天王寺駅前の歩道橋から駅前の交差点を撮影。右側の高いビルは「あべのハルカス」。上下が切れない位置で円形の範囲を選択。レタッチソフトの「境界をぼかす」機能を使い、画像の縁が自然になるように設定し、周囲を黒く塗りつぶす。最後に1:1の正方形に仕上げた。

オリンパスOM-D E-M5  LAOWA 4mm F2.8 Fisheye MTF 絞り優先オート F4 1/2秒 −0.3補正 ISO200 WB:オート

 

LAOWA 4mm F2.8 Fisheye MTF の主な仕様

SPEC
●マウント/マイクロフォーサーズ
●焦点距離/4mm
●絞り/F2.8〜F16
●画角/210度
●レンズ構成/6群7枚
●絞り羽根/7枚
●最短撮影距離/0.08m
●フィルター径/取り付け不可
●サイズ(最大径×長さ)/φ45.2×32mm(実測値)
●質量/約135g
●付属品/レンズキャップ