写真家・獣医師の竹田津実さんが『生態写真集 キタリス』を上梓した。
北海道の森の中に建てた動物診療所はなかなかの賑わいで、そこの獣医である竹田津さんが心を通わせた相手の一つがキタリス (エゾリス) だ。彼を人間と知ってか知らずか、朝になるとやってきて窓を叩く奴がいる。キタリスは冬眠をしないから、獣医は一年中、森を散歩し彼らの暮らしを観察する。遠出してしまい、帰り道がわからなくなった若者 (もちろん人間に非ず) を見かけたり、キタリスがクマタカをからかう様子をヤマガラが見て笑ったりする光景も目にする。
彼らの寿命は4~5年と短く、別れはあっという間にやって来る。写真では森を縦横無尽に駆け巡る彼らの姿を捉え、ページの途中に挿入される日々のエッセイと、写真に添えられた文章が、その生態や森の暮らしの魅力をより深く教えてくれる。知ることで愛情は深まっていく。
竹田津 実『生態写真集 キタリス』
A5判・192ページ
本体 3,300円(税別)
2019年9月26日発売
新潮社
〈文〉市井康延