レンジファインダー機を思わせるスタイルを持ち、光学ファインダー(OVF)と電子ビューファインダー(EVF)の切り替えができる、富士フイルムX-Proシリーズの三代目「X-Pro3」が登場した。
【外観編】チタン外装やHidden LCDでよりクラシックな雰囲気に
正面や上面のデザインはX-Pro2を踏襲。非常によく似ている。しかしX-Pro3の外装には、富士フイルムで初めてチタンを採用。チタンは加工が難しいものの軽くて丈夫。腐食に強いのも特徴だ。ボディカラーもブラックのみだったX-Pro2に対し、X-Pro3はブラックに加え、傷からカメラを守りつつチタンの風合いが感じられる表面加工「デュラテクト(DR)技術」を採用したDRブラック(デュラブラック)とDRシルバー(デュラシルバー)をラインナップする。今回はDRシルバーを使用したが、落ち着いた品のあるシルバーで高級感がある。また内部のフレームにはマグネシウムを使用。チタンとマグネシウムで高い堅牢性を誇る。
大きく変わったのが背面。現在のデジタルカメラは背面に3.0型前後の液晶モニターがあるのが普通だが、X-Pro3はその液晶モニターが内側に隠れていて、下方向に開くと現れる構造だ。富士フイルムではこれを「Hidden LCD」と呼んでいる。
そして閉じている状態では、1.28型の正方形のサブモニターを備える。ここには撮影情報のほかに、フィルムシミュレーションで選んだモードを表示できる。その姿はまるでフィルムのパッケージだ。かつてフィルム一眼レフには、何のフィルムを装填しているかわかるようにフィルムのパッケージを切って差し込めるメモホルダーがあった。X-Pro3のサブモニターは、まさにそのメモホルダーを意識している。当時を知っている人には懐かしいと感じるだろう。もともとクラシカルなデザインを持つX-Proシリーズだが、背面モニターが隠れたことで一層クラシックな雰囲気になった。なおメニュー画面を表示する場合はモニターを開き、ジョイスティック状のフォーカスレバーやタッチ操作で設定を行う。
X-Proシリーズの大きな特徴であるハイブリッドービューファインダーは、OVFではX-Pro2の視野率約92%から95%にわずかだがアップしている。OVFではレンジファインダーのように、レンズ交換しても像の大きさは変わらず、写る範囲を示すブライトフレームが切り換わる。そしてEVFはX-Pro2が液晶だったのに対し、X-Pro3は有機ELになった。色調も自然で、X-Pro2より視認性が向上しているのを感じる。
【実写編】新フィルムシミュレーションやカラークロームブルーを搭載
撮像素子と画像処理エンジンは、X-T3と同じX-Trans CMOS 4とX-Processor 4に進化した。画素数も2430万画素から2610万画素になっている。そしてフィルムシミュレーションには新たに「クラシックネガ」を搭載。その名の通り、古いネガカラーフィルムで撮影したようなレトロな雰囲気になる。さらにカラークロームエフェクトにブルーを新搭載。リバーサルフィルムで撮影したような深い青が出せる。またフィルムらしさが強調できるグレイン・エフェクト(粒状機能)には、強度のほかに粒度が設定可能になった。
以下、実際の作例を見ていこう。ここでは、レンズは小型単焦点のXF23mmF2 R WR、XF35mmF2 R WR、XF50mmF2 R WRの3本を使用した。X-Pro3ともよくマッチするデザインだ。ボディ本体の重量はバッテリーやSDカードを装填した状態でも500gを切っているため、手にすると見た目以上に軽く感じる。AFは軽快に駆動し、フォーカスレバーにより測距点移動もスムーズにできる。
【まとめ】フィルムカメラに近い感覚で撮影が楽しめる
背面モニターが隠れていて、通常は撮影した画像のチェックがすぐできないのは不思議な感覚だ。もちろんファインダーをEVFにすれば、モニターを開かなくても確認はできる。しかし、ここはあえてOVFをメインに使ってみると楽しい。撮ってすぐ結果がわからないのは、フィルムカメラに近い印象。仕上がりを想像しながら構図や露出を考えるのは、多くのデジタルカメラとは全く違う感覚だ。
背面モニターが隠れていることやメモホルダーのようなサブモニター、さらにグレイン・エフェクトの強化やカラークロームブルーなど、X-Pro3はXシリーズのなかでも特にフィルムカメラやフィルムを強く意識している機種だと感じた。デジタルでもフィルムカメラのように写真を撮りたい人に注目のカメラだ。レンジファインダーのようなスタイルからも、ズームレンズよりは単焦点レンズを装着して、街のスナップや風景、ポートレートに使いたい。