機材レポート

富士フイルム「X-Pro3」レビュー! フィルムカメラ好きにはたまらないギミック満載のクラシックなミラーレスカメラ

レンジファインダー機を思わせるスタイルを持ち、光学ファインダー(OVF)と電子ビューファインダー(EVF)の切り替えができる、富士フイルムX-Proシリーズの三代目「X-Pro3」が登場した。

▲ブラック、DRブラック、DRシルバーの3つをラインナップするX-Pro3。フジフイルムモールでの価格(ボディ/税込)はブラックが235,950円、DRブラック/DRシルバーが263,450円

 

【外観編】チタン外装やHidden LCDでよりクラシックな雰囲気に

正面や上面のデザインはX-Pro2を踏襲。非常によく似ている。しかしX-Pro3の外装には、富士フイルムで初めてチタンを採用。チタンは加工が難しいものの軽くて丈夫。腐食に強いのも特徴だ。ボディカラーもブラックのみだったX-Pro2に対し、X-Pro3はブラックに加え、傷からカメラを守りつつチタンの風合いが感じられる表面加工「デュラテクト(DR)技術」を採用したDRブラック(デュラブラック)とDRシルバー(デュラシルバー)をラインナップする。今回はDRシルバーを使用したが、落ち着いた品のあるシルバーで高級感がある。また内部のフレームにはマグネシウムを使用。チタンとマグネシウムで高い堅牢性を誇る。

▲X-Pro2を踏襲するダイヤル中心の操作。ISO感度はシャッターダイヤルと同軸で、ダイヤルを持ち上げて回す。クラシカルだが、数字はやや小さい。

 

▲ダブルスロットによりSDカードが2枚装填できる。SDカードはUHS-Ⅱに対応。

 

▲USB端子はUSB Type-Cを採用。USB充電が可能だ。その下はマイクとリモートコントローラーの端子。

 

▲バッテリーはNP-W126S。X-Pro2のNP-W126も使用可能だ。

 

大きく変わったのが背面。現在のデジタルカメラは背面に3.0型前後の液晶モニターがあるのが普通だが、X-Pro3はその液晶モニターが内側に隠れていて、下方向に開くと現れる構造だ。富士フイルムではこれを「Hidden LCD」と呼んでいる。

▲背面を下方に開くとモニターが現れる。メニュー画面を見ながらの設定はこれで行う。タッチパネルなのでタッチ操作による設定も可能だ。

 

そして閉じている状態では、1.28型の正方形のサブモニターを備える。ここには撮影情報のほかに、フィルムシミュレーションで選んだモードを表示できる。その姿はまるでフィルムのパッケージだ。かつてフィルム一眼レフには、何のフィルムを装填しているかわかるようにフィルムのパッケージを切って差し込めるメモホルダーがあった。X-Pro3のサブモニターは、まさにそのメモホルダーを意識している。当時を知っている人には懐かしいと感じるだろう。もともとクラシカルなデザインを持つX-Proシリーズだが、背面モニターが隠れたことで一層クラシックな雰囲気になった。なおメニュー画面を表示する場合はモニターを開き、ジョイスティック状のフォーカスレバーやタッチ操作で設定を行う。

▲かつてのメモホルダーを思い出すサブモニター。フィルムシミュレーションと、ホワイトバランス、ISO感度が表示される。

 

▲フィルムシミュレーションを変えれば画面のデザインも変わる。これはクラシックネガ。

 

▲撮影情報を表示させることも可能。

 

X-Proシリーズの大きな特徴であるハイブリッドービューファインダーは、OVFではX-Pro2の視野率約92%から95%にわずかだがアップしている。OVFではレンジファインダーのように、レンズ交換しても像の大きさは変わらず、写る範囲を示すブライトフレームが切り換わる。そしてEVFはX-Pro2が液晶だったのに対し、X-Pro3は有機ELになった。色調も自然で、X-Pro2より視認性が向上しているのを感じる。

▲一眼レフとは異なり、OVFではレンズ交換しても像の大きさは変わらない。望遠レンズではフレームが小さくなるため正確なピント合わせや構図を決めるのがやや難しくなるが、実際に撮影した写真とのギャップが楽しい。またEVFは有機ELになりとても見やすく、確実な撮影を行いたいときに重宝する。

 

▲X-Proシリーズでお馴染みの、OVFとEVFを切り替えるレバー。X-Pro3にも装備されている。

 

▲フォーカスレバーで測距点を左下に移動させて撮影。OVFで望遠はブライトフレームが小さく構図の決定が難しくなり、ボケ具合もわからない。しかし実際に撮影した結果とのギャップは、EVFでは得られない楽しさがある。

 

【実写編】新フィルムシミュレーションやカラークロームブルーを搭載

撮像素子と画像処理エンジンは、X-T3と同じX-Trans CMOS 4とX-Processor 4に進化した。画素数も2430万画素から2610万画素になっている。そしてフィルムシミュレーションには新たに「クラシックネガ」を搭載。その名の通り、古いネガカラーフィルムで撮影したようなレトロな雰囲気になる。さらにカラークロームエフェクトにブルーを新搭載。リバーサルフィルムで撮影したような深い青が出せる。またフィルムらしさが強調できるグレイン・エフェクト(粒状機能)には、強度のほかに粒度が設定可能になった。

▲フィルムシミュレーションには、クラシックネガが追加。富士フイルムらしい個性のある仕上がりが楽しめる。

 

▲グレイン・エフェクトは、これまでは単純に弱と強だけだったが、X-Pro3では粒度も追加され、より細かく設定できるようになった。

 

▲カラーリバーサルで撮ったような深い青が表現できるカラークロームブルー。強度は2種類が選べる。

 

以下、実際の作例を見ていこう。ここでは、レンズは小型単焦点のXF23mmF2 R WR、XF35mmF2 R WR、XF50mmF2 R WRの3本を使用した。X-Pro3ともよくマッチするデザインだ。ボディ本体の重量はバッテリーやSDカードを装填した状態でも500gを切っているため、手にすると見た目以上に軽く感じる。AFは軽快に駆動し、フォーカスレバーにより測距点移動もスムーズにできる。

▲屋根のラインや木の葉がシャープに描写された。X-Trans CMOS 4は高精細な画質を可能にしている。

 

▲和食器店の前に置かれていた小さな陶器。青が印象的だったので、カラークロームブルーを設定して強調させた。

 

▲赤い鳥居と灯篭が目に入った。さらにカラークロームブルーをSTRONGに設定し、深みのある空も表現。インパクトの強い写真になった。

 

▲橋の上からボートと水面に反射する光を狙う。ファインダーを覗いた状態では橋の手すりが入ってしまうため、背面モニターを開き、手すりの間からX-Pro3を出して撮影。測距点選択はモニターをタッチした。

 

▲フィルムシミュレーションをクラシックネガに設定。カラーネガで撮影した古いプリントを見ているような仕上がりだ。

 

▲クラシックネガで、あえてクラシカルとは異なる雰囲気を意識して撮影した。

 

▲本格的なモノクロが表現できるフィルムシミュレーション、アクロス。粒度も追加され、さらにモノクロのコントロールが楽しめるようになった。ここではグレイン・エフェクトを強、粒度を大に設定している。

 

▲X-Trance CMOS 4とX-Processor 4は高感度にも非常に強い。ISO12800で撮影しているが、拡大してもノイズが少なく、ラベルの文字もシャープだ。

 

【まとめ】フィルムカメラに近い感覚で撮影が楽しめる

背面モニターが隠れていて、通常は撮影した画像のチェックがすぐできないのは不思議な感覚だ。もちろんファインダーをEVFにすれば、モニターを開かなくても確認はできる。しかし、ここはあえてOVFをメインに使ってみると楽しい。撮ってすぐ結果がわからないのは、フィルムカメラに近い印象。仕上がりを想像しながら構図や露出を考えるのは、多くのデジタルカメラとは全く違う感覚だ。

 

背面モニターが隠れていることやメモホルダーのようなサブモニター、さらにグレイン・エフェクトの強化やカラークロームブルーなど、X-Pro3はXシリーズのなかでも特にフィルムカメラやフィルムを強く意識している機種だと感じた。デジタルでもフィルムカメラのように写真を撮りたい人に注目のカメラだ。レンジファインダーのようなスタイルからも、ズームレンズよりは単焦点レンズを装着して、街のスナップや風景、ポートレートに使いたい。

▲背面はX-Pro2には装備され、多くのデジタルカメラでも一般的な十字キーが省略された。可能な限りフィルムカメラに近づけているかのようだ。