春の花といえば真っ先に思い浮かぶのが「桜」。桜が咲き誇っている姿を見ると、自然とカメラを向けたくなります。しかし、桜は色が淡く、その繊細な色が出にくいため、桜を美しいまま撮影するのは至難の業。そこで今回は、桜をきれいに撮るテクニックやコツを紹介します。
【サクラの撮り方(1)】よくある失敗とその解決方法
<ココが残念>
(1)周囲を取り入れたため、説明的で煩雑な印象→解決法(1)
(2)薄曇りの空がイマイチ→解決法(2)
(3)露出不足?若干暗く感じる→解決法(3)
【解決法(1)】一本桜は画面いっぱいに見せると迫力が出る。
樹齢数百年にもなる一本桜は、年輪を重ねた貫禄ある姿が魅力。サクラの全体を見せることにこだわらず、枝先などはカットしてもよいので、画面いっぱいにサクラを捉えることで迫力や力強さを出したいところ。この際、日の丸構図だと力強さを出せますが、脇役があるときは左右のバランスを考慮してフレーミングしましょう。
【解決法(2)】快晴の青空はフレームイン、それ以外は極力フレームアウト
ヌケのよい澄んだ青空を背景にするとサクラは映えますが、少しでもかすんでいると白いサクラはかすんだ空に同化してしまいます。PLフィルターを使っても、かすんだ空ではよい結果は得られません。薄曇りや曇天の日は森や山を背景にして枝ぶりや樹形を切り取るのがおすすめ。柔らかな光によりサクラの質感を生かしやすいです。
【解決法(3)】背景が明るいときはプラス補正、暗いときはマイナス補正を行う
サクラは白色に近く、プラス補正が基本。晴天でも曇天でも概ねプラス0.3~0.7補正で適正露出を得られます。ただ逆光時のように背景が明るいときは、暗く写りがちなので注意しましょう。反対に、背景に日陰や山など暗いものがくるときは、明るめに写るので若干のマイナス補正が必要になります。
詳しくはこちら → https://getnavi.jp/capa/special/285633/
【サクラの撮り方(2)】桜の魅力を引き出す構図
どんなイメージでサクラを撮影したいのか、表現意図をはっきりと持つことが構図決定の第一歩です。サクラだけを捉えてサクラの魅力を引き出すのか、脇役を入れてサクラが咲く雰囲気を生かすのかでフレーミングは違ってきます。
基本テクニック:サクラの樹形に注目して形や線を生かして切り取る
サクラの一部を切り取るとき、幹や枝のライン(流れ)を生かすとまとまりのある構図に仕上げやすいです。サクラの優しさを出したいから細い枝を生かす、サクラの貫禄を出したいから太い幹を生かすなど、しっかりとした表現目的を持って撮影しましょう。構図になる形を見つけようとするとつまらない写真になってしまうので注意が必要です。
きれいな扇形に見えるポジションを探して撮影
18mm相当の広角レンズで見上げるように撮影することで、シダレザクラらしい大きく枝を広げた特徴ある樹形を生かすことができました。扇形を生かすなど、樹形が格好よく見えるポジションを探すことが大切です。
横に流れる枝のラインに注目
横方向に並ぶ3本の枝に注目し、望遠レンズでサクラの枝ぶりを切り取った1枚。すっきりとした背景に整った形を見せることで構図の核を作り、サクラの淡い色合いや優しい質感を生かすことができました。
対角線を生かして伸びゆく印象に
対角線方向に太い幹と分岐した枝を配置し、画面いっぱいにサクラの枝ぶりを見せることで旺盛な樹勢が伝わるように心掛けました。画面内で最も長いラインとなる対角線を生かすと、伸びゆく感じを伝えやすいです。
応用テクニック(1)脇役があるときは上下や左右、対角に配置してバランスをとる
主役と脇役がある場合、画面のどちらか一方に片寄ってしまうと、バランスが悪くなります。主役と脇役を画面内に無駄なく配置できるよう、上下左右のバランスが取れるポジションを選ぶことが大切です。そのうえで、大きさの大小をコントロールするため、撮影距離やレンズの選択も大切にしたいところ。
<bofore>
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<after>
右下に人物を置いてバランスを整える
棚田が広がる農村に咲く一本桜。サクラを真ん中に小さく捉えると、左右の空間が空いてしまってやや散漫になってしまいます。サクラをやや左寄りの上部に画面いっぱいに見せて迫力を出し、脇役となる人物を右下に置くことで上下左右のバランスを整えました。
応用テクニック(2)意図的に空間を取り入れて周囲の余韻を伝える
サクラをクローズアップするとき、マクロレンズでただ大きく捉えるだけではもったいないです。ボリューム感を出したいなら画面いっぱいに見せるのも効果的ですが、意識して空間を取り入れることで、余韻を伝えることにも挑戦してみましょう。水面からは静けさや冷たさ、ナノハナなら華やかさ、黒々とした森からは力強さを伝えられます。
<bofore>
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<after>
ナノハナの彩りを加えて華やかな写真に
花だけを大きく捉えると形や質感はよくわかりますが、図鑑的かつ説明的な写真になってしまいます。画面下部に背景のナノハナの黄色を取り入れると、彩りが加わって華やかさや空間による広がりを感じさせることができました。
詳しくはこちら → https://getnavi.jp/capa/special/285680/
【サクラの撮り方(3)】絞りとシャッター速度で表現が変わる
基本テクニック:サクラ風景を撮るときはパンフォーカス、花狙いならボケを生かす
山や海を背景にしたサクラを風景的に狙うなら、絞りF16程度(マイクロフォーサーズ機ならF8)まで絞り込んで、近景から遠景までシャープに見えるパンフォーカスにするのがベスト。一方、望遠やマクロレンズで絞りをF2.8~F8にすると、背景がきれいにぼけてサクラの持つ繊細な美しさを引き出せます。
標準域で絞り込んでサクラも富士山も見せる
写真は標準域48mmで風景的に狙ったサクラ風景。サクラにピントを合わせてF16まで絞り込み、サクラと富士山のどちらにもピントの合ったパンフォーカスにすることができました。
背景をぼかしてすっきりと前ボケを入れて優しい雰囲気に
絞り開放F2.8で背景をぼかし、サクラをすっきりと見せています。さらにメインのサクラとレンズの間に別のサクラを入れて前ボケを作り、優しく華やかな雰囲気に仕上げています。
応用テクニック:花筏の流動感はNDフィルターを使って長秒露光する
花筏(はないかだ)の軌跡を生かすなら、NDフィルターを使って10秒を超えるスローシャッターを切ります。風による流れは緩やかなので、数秒のシャッター速度では中途半端なブレ感になってしまいます。さらに、サクラの枝ぶりや水草など静止しているモチーフを画面に入れると、画面にメリハリがついて良いでしょう。
<before>
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<after>
13秒のスローシャッターで軌跡を捉える
池に落ちたサクラの花びらが風に吹かれて流れ出しています。そのタイミングを狙って13秒のスローシャッターを切ると、美しい軌跡を描くことができます。昼間はF16やF22まで絞り込んでもシャッター速度はせいぜい数秒。花びらの軌跡狙いならNDフィルターは必須です。
詳しくはこちら → https://getnavi.jp/capa/special/285723/
【サクラの撮り方(4)】空と光を生かした撮影
基本テクニック:PLフィルターを使って青空をより鮮やかに描写して、サクラを引き立たせる
快晴時の青空を背景にしたサクラは華やか。特に斜光やサイド光なら、サクラに適度な立体感が出て、澄んだ青空を生かしやすいです。この際、青空の深みを増し、サクラ色を鮮やかに見せるのに欠かせないのが「PLフィルター」。通常は効果を最大にして深い色を引き出すのがベターですが、例外的に雪山を背景にしたサクラでは効果を加減する必要があります。
<PLなし>
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<PLあり>
PL使用で空もサクラも印象的に
PLフィルターなしでは空の青さが物足りなくなってしまいます。PLフィルターを効果最大にして使うと青空の深みが増し、白い雲とのコントラストがよく映えます。ベニシダレのピンク色も一段と濃くなった印象に。
応用テクニック:朝夕の光を生かしてドラマチックに仕上げる
朝日や夕日を生かすと、ダイナミックなサクラ風景に仕上げられます。夜明け前のトワイライトと呼ばれる空のグラデーション、朝焼け空、そして朝の光が輝くときなど、刻々と変化する光や色を捉えましょう。これらを生かすのは逆光撮影ですが、明暗差が大きいので、階調補正機能やハーフNDフィルターを使って輝度差を補いましょう。
ハーフNDを使用して空の色を出す
日の出10分前、雲が色づき始め、夜明けの雰囲気が伝わってきます。雲仙岳や諫早湾を背景にスケール感のある風景になりました。朝焼け空とサクラやナノハナでは明暗差があるため、ハーフNDフィルターを使用しています。
明暗差が激しいのでHDRを使う
日の出30分後、朝の強い光を生かすため、HDR機能を使ってハイライトの白とびを抑え、シャドーとなるサクラやナノハナがつぶれないようにしています。光が強いとゴーストが出やすいハーフNDフィルターは外しています。
詳しくはこちら → https://getnavi.jp/capa/special/285673/