小林紀晴さんのフォトエッセイ『まばゆい残像 そこに金子光晴がいた』が発売された。
人はなぜ旅をするのか。本書を読むと自然とそんな問いが浮かんでくる。小林さんはこれまでに幾度となく放浪の詩人・金子光晴が辿った路程を訪ねてきた。最初の渡航から30年余が過ぎ、その旅を振り返る。新聞社のカメラマンからフリーになり、先の見えないときを過ごしていた自らの若き日々と、およそ80年前の詩人の旅と人生が記憶という時間軸の中でリンクする。そこに添えられた写真はある時代の記録でありながら、ここでは時間軸から解き放たれて存在する。読者も作者とともに旅の記憶に遊ぶ。
小林紀晴『まばゆい残像 そこに金子光晴がいた』
B6判変型・168ページ
本体 1,000円(税別)
2019年11月13日発売
産業編集センター
〈文〉市井康延