機材レポート

明るい単焦点レンズ5本分の性能を1本に凝縮! 全域F1.7の高性能ズームレンズで写す嵐山・嵯峨鳥居本の早春景色

大口径で明るい単焦点レンズ5本分の性能を1本に凝縮したという大口径標準ズームレンズ「LEICA DG VARIO-SUMMILUX 10-25mm / F1.7 ASPH.」。今回は本レンズを使用し、写真家・園部大輔さんが嵐山・嵯峨鳥居本を舞台に早春の景色を高精細に描き出してくれた。

パナソニック
LEICA DG VARIO-SUMMILUX 10-25mm / F1.7 ASPH.
237,600円(税込/パナソニック公式オンラインストア価格)

ライカの厳しい光学基準をクリアした、LEICA DG VARIO-SUMMILUX(ライカDGバリオ・ズミルックス)レンズの1本。35mm判換算で20〜50mmをカバーし、ズーム全域で開放値F1.7を実現している。今回は、マイクロフォーサーズ機としてはほぼ最高性能を誇るルミックスGシリーズのフラッグシップ機「LUMIX G9 PRO」と組み合わせて使用した。

■レンズの詳細はこちら(メーカー公式ページ)

■LUMIX G9 PROの詳細はこちら(メーカー公式ページ)

 

<作例>

降りしきる雨の中、長い石段を登って行く。濡れた石段や苔の質感表現はもちろん、超広角域での石段の描写も周辺まで素晴らしく、まさに超広角単焦点を使っているかのような表現力を感じる。協力/鈴虫寺(妙徳山 華厳寺)

パナソニック LUMIX G9 PRO LEICA DG VARIO-SUMMILUX 10-25mm / F1.7 ASPH. 絞り優先オート F5 1/60秒 ISO500 WB:マニュアル

 

【Profile】

園部大輔

1977 年、埼玉県生まれ。学生時代よりイラストレーターとして活動し、広告代理店勤務を経て写真家の道へ。旅の風景や山岳・星景・夜景等を得意分野として活動。著書に『絶景山岳写真入門』『ファンタスティックRAW現像』(玄光社)など。

 

ズーム全域で実感したまさに単焦点並みの実力

このレンズを使う前は「単焦点5本分の性能を発揮する超高性能レンズ」というキャッチフレーズにやや疑念を抱いていたが、実際に使ってみるとゆがみも少なく、周辺部まで素晴らしい群を抜いた描写性能のレンズだった。マイクロフォーサーズとしてはやや大柄なレンズだが、使い方と性能を妥協しない1本を手に入れたいのであれば最良の選択となるはずだ。ルミックスの上位機種には手ブレ補正が搭載されており、広角から標準域の焦点距離であることや、ズーム全域のF値が1.7であることを考えれば、通常の使用で手ブレに悩まされることはないと断言してもいいだろう。

 

それよりも超広角といえる20mm相当の焦点距離でレンズ先端が触れるほどの接写ができることや、ズーム時にF値が変わらないで扱えることなどが、今まではできなかった表現やとっさのシャッターチャンスに思い通りの撮影を行う一助になってくれる点を高く評価したいと思う。

 

もちろん50mm相当の焦点距離でもかなりの近接撮影が可能なので、それを起点に背景のボケの大きさや画角を確認しながら焦点距離を変化させていくことで、ただぼかすだけでなく、どのようなボケ具合の背景がベストマッチなのか、よりこだわった撮影に挑戦できるのが素晴らしい。

 

超広角から標準域のズームレンズの中で、マイクロフォーサーズ史上最高峰の1本と言っても過言ではないだろう。

 

明るい単焦点レンズ5本分を1本でまかなえる

このレンズの謳い文句は、超広角 20mm/広角 24mm/広角 28mm/準標準 35mm/標準 50mm(いずれも35mm判換算)という「明るい単焦点レンズ5本分の性能」を1本に凝縮していること。確かに現状10mmの超広角でF1.7を実現しているレンズはほかに存在しない。レンズ性能を数値、実写で確認してみてもその描写性能は見事だった。以下、作例を見ていこう。

■10mm(20mm相当)

天候に恵まれず鳥居本に数日間通い詰めて、ようやく晴天の素晴らしい情景を撮影することができた。超広角を生かして雰囲気、空気感をしっかりと伝えるよう丁寧に構図を決め、雲の流れまで考慮しつつじっくりと撮影に臨んだ。

パナソニック LUMIX G9 PRO LEICA DG VARIO-SUMMILUX 10-25mm / F1.7 ASPH.  絞り優先オート F5.6 1/1250 秒 - 1.3 補正 ISO200 WB:マニュアル

 

■12mm(24mm相当)

立ち並ぶ車輪を撮影しようとしていた刹那、走り抜けてゆく人力車を目にして瞬間的に構図に入れた。視点を下げたことと広角のパースにより、迫力と人力車が駆け抜けるスピード感を表現した。

パナソニック LUMIX G9 PRO LEICA DG VARIO-SUMMILUX 10-25mm / F1.7 ASPH. 絞り優先オート F1.7  1/125 秒 ISO200 WB:マニュアル

 

■14mm(28mm相当)

どの焦点距離でもかなりの接写が可能、かつF1.7という明るさに加え、G9 PROの速写性を生かすことで、広角での接写にスナップの要素を組み合わせて印象的なシルエットを切り取ることができた。

パナソニック LUMIX G9 PRO LEICA DG VARIO-SUMMILUX 10-25mm / F1.7 ASPH. 絞り優先オート F1.7 1/200 秒 ISO200 WB:マニュアル

 

■18mm(36mm相当)

嵐山を歩いていると印象的なシーンに出会えることが多い。スナップに最適な焦点距離で絞り開放にして撮影することで、状況を入れつつも背景をわずかにぼかして被写体を引き立たせることができた。

パナソニック LUMIX G9 PRO LEICA DG VARIO-SUMMILUX 10-25mm / F1.7 ASPH. 絞り優先オート F1.7 1/800 秒 ISO200 WB:マニュアル

 

■25mm(50mm相当)

標準域での画角はさまざまな用途に活用できるが、一般的なスナップや風景に加えて、28cmという近接能力を生かしたマクロ的な使い方も可能だ。接写でのボケ味も良く、春の華やかさが得られた。

パナソニック LUMIX G9 PRO LEICA DG VARIO-SUMMILUX 10-25mm / F1.7 ASPH. 絞り優先オート F1.7 1/100 秒 -0.7補正 ISO200 WB:マニュアル

 

【ここも注目】ブリージングが抑制されている

同じ焦点距離でも絞りを変化させると背景などの画角がわずかに変わってしまうレンズが多い。このレンズはそういった変化をほぼ感じることなく、ボケをスムーズに変化させられる。こだわりの動画撮影派には大きなメリットだ。

 

使えば使うほど手に馴染むこだわりの機能性と高画質

このレンズの特徴として、「絞りリングの特別なこだわり」が挙げられる。この絞りリングは動画撮影も考慮した仕様で、クリックレスで動かすことができ、適度な重さのトルク感も相まって、スムーズな絞り値変更を行うことが可能だ。この機能を活用すれば、静止画でも感覚的に絞り操作をしながら撮影することが可能になる。もちろん動画撮影の際にも表現の幅を大きく広げることができるだろう。

 

さらに撮影時にその快適さを実感できる「フォーカスクラッチ」を装備。瞬時にAFからMFに切り替えでき、加えてアナログの距離計が表示されるようになる。さらに回転角が絶対位置に依存しており正確にわかるため使いやすい。動画撮影時のMF操作性向上はもちろん、静止画のシーンでもピント位置固定で速写するスナップや星景などが劇的に撮りやすくなる。また、クラシカルなMF操作感覚を得ることができるのも楽しい。

 

防塵防滴、耐低温性にも安心感があり、使い込むほどに瞬時にあらゆる状況に対応可能な、一度使うと手放せないレンズになっている。

 

各焦点距離での描写性能が素晴らしいことは先にも述べたが、あらためて振り返ると、このレンズは単焦点ではなくズームレンズなのである。感性を研ぎ澄ますために焦点距離をあらかじめ決め、単焦点レンズのように情景を切り取っていくのも良いが、ズームレンズである自由さを楽しみながら、どの焦点距離でも味わえる単焦点並みの高画質をぜひ堪能してほしい。

 

撮影のなかで気づいた使い勝手の良さ

今回の撮影で実際にLEICA DG VARIO-SUMMILUX 10-25mm / F1.7 ASPH.を使っていくなかで、描写だけでなく使い勝手の部分でも気に入った部分が多くあった。また、動画撮影との相性の良さにも気づかされた。次の動画は今回のインプレッションをまとめたもの。実際に本レンズで撮影した動画作例も紹介しているので、あわせてご覧いただきたい。

 

■スムーズな絞りリング

クリックのない絞りリングの操作はやや不思議な感覚だが、適度なトルク感と操作性は好印象だった。もちろん動画でこの仕様は大きなアドバンテージとなる。

 

■フォーカスクラッチでMFに瞬間切り替え

クラッチを使ってMF に瞬時に切り替えできる。また、正確な距離計は慣れるほどに便利さを実感する。これくらいのサイズ感があるほうが実際は素早い操作ができる。

 

■拡大ピーキングでMF時も高い使い勝手

動画でも静止画でも、撮影する際にピント位置拡大とピーキングを併用することで素早く正確なMF を実現。しかもG9 PROでは新ファームによってAFでもピーキングを活用することが可能になっている。

 

■防塵防滴仕様が心強かった

今回の撮影ではかなりの雨にさらされることが何度かあったが、ボディ(G9 PRO)、レンズともに防塵防滴なので安心して撮影に集中できた。旅やアウトドアでは心強い機能だ。

 

■G9 PROと併用すれば夜景や低照度でも不安なし

本レンズは手ブレ補正が未搭載だが、焦点距離が短く明るいレンズなので夜景や低照度でも不安なく撮影が可能だ。G9 PROと併用すればボディ内手ブレ補正が加わり、さらに安心して撮影できる。

パナソニック LUMIX G9 PRO LEICA DG VARIO-SUMMILUX 10-25mm / F1.7 ASPH. 絞り優先オート F5.6 1/25秒 -0.7補正 ISO3200 WB:マニュアル

 

■レンズの詳細はこちら(メーカー公式ページ)

■LUMIX G9 PROの詳細はこちら(メーカー公式ページ)

 

LEICA DG VARIO-SUMMILUX 10-25mm / F1.7 ASPH.の主な仕様

レンズ構成  12群17枚(非球面レンズ3枚、ED レンズ4枚、UHR レンズ1枚)
絞り羽根枚数 9枚(円形虹彩絞り)
最小絞り F16
最短撮影距離 0.28m
最大撮影倍率 0.14 倍
フィルター径 77mm
最大径×全長 約87.6mm×約128mm
重さ 約690g

■製品の詳細はこちら(メーカー公式ページ)