「座って撮影の瞬間を待ちたい!」という想いを叶えるカメラリュックが出た
今回紹介するケンコー・トキナーの「aosta Sanctuary (アオスタ・サンクチュアリ) III IS リュック」は、「aosta フォンタナ II ISリュック」の “座れるリュック” のコンセプトを受け継いだ、リュックタイプのカメラバッグだ (実勢価格23,000円前後)。
普段から撮影をしている方ならご存じだと思うが、撮影以上に待ち時間が長いというのは、被写体を問わず珍しいことではない。
筆者のように自然風景などをメインに撮影しているフォトグラファーの場合には、日の出や日没、星景写真の薄明の終わりや月の入りなど、シャッターチャンスは一瞬だが、カメラのセッティングをしてからシャッターを切るまで、長い待ち時間が続く。これは鉄道写真や自然動物、野鳥、飛行機や花火といった撮影でも同様だろう。そんなとき「持ってきたカメラバッグに座れたら、ラクなのに」と思った方も多いのではないだろうか。
かなり大柄の男性でも安心して座れる耐荷重100kg
頑丈な鉄製のフレームが入っている「aosta Sanctuary III IS リュック」は、リュックを立てた状態で座る構造になっている。メーカーの注意書きには「椅子としての安定性を保証するものではございませんので、お座りになる際は転倒にご注意ください」とある。実際に座ってみると、座り心地は悪くないものの、どっしりと安定するような印象ではない。座ったまま、後ろに倒れたりしないように気を付ける必要がある。ましてやリュックの上に立とうなどと考えるのは、かなり無謀な行為で、危険極まりない。とはいえ、撮影の合間に座る程度としては、十分すぎるほどである。
耐荷重は100kgで、同一コンセプトの前モデルと同じ。かなり大柄・太めの成人男性でも安心して座ることができる。
「aosta Sanctuary III IS リュック」の最大の特徴である “座る” に対応するため、イスとして使用する際に座面となる部分にある上部のハンドベルトは、ゴムで引っ張られて内側に収納されるように工夫されている。また、リュックの底面にも大型のゴム製パーツが取り付けられており、安定感がアップするように配慮されている。
カメラバッグとしての性能は?
“座れる” という付加価値がつくと、フレームのせいで重いとか、収納力に不満が出るとか、カメラバッグとしての作り込みが甘いのではと思ってしまう方もいるだろう。しかし「aosta Sanctuary III IS リュック」は、実際には中上級者向けのカメラリュックとして完成度の高い作りになっている。細部をみていこう。
「aosta Sanctuary III IS リュック」のサイズは、前モデルが外寸 W300×H430×D210mm、内寸 W280×H340×D130mm、質量2160g、容量10Lであったのに対して、外寸 W330×H500×D210mm、内寸 W300×H390×D125mm、容量15Lとひと回り大型化され、容量もアップしている。なお質量は、ブラックカモフラージュ (BKCF) が2780g、グリーンカモフラージュ (GRCF) が3000gと外装色によって異なっている。
「aosta Sanctuary III IS リュック」は、専用のPCポケットをはじめ、三脚を装着するためのベルト、一脚ポケット、アクセサリーを入れるためのメッシュポケットが3つ装備されており、カメラバッグとして必要な機能を十分に満たしている。もっとも大きなポケット部分には、バッグのなかで見当たらなくなりやすいペン用のポケットが設けられているところも個人的には高評価だ。また、リュックを背負ったときの背中側、背当て部分には小さなポケットがあり、レインカバーが収納されている。カメラバッグとして思いつく装備はほとんど完備されているといえるだろう。
容量15Lとは思えないほどの大収納力が頼もしい
カメラバッグの容量○○Lという表記は数値上のスペックであって、実用性とは別モノという印象を持っている。「aosta Sanctuary III IS リュック」のメイン収納室のサイズ15Lも実際の収納力としてはどうなのかという思いでいた。そこで我が家にあった「Amazonベーシック カメラリュック 一眼レフ用 (12.1L)」や「Amazonベーシック カメラリュック (一眼レフ用 ラップトップ収納可 22.8L)」と並べてみた。
写真左から「Amazonベーシック カメラリュック 12.1L」「aosta Sanctuary III IS リュック」「Amazonベーシック カメラリュック 22.8L」。フレームを内蔵した「aosta Sanctuary III IS リュック」は、右側の22.8Lのカメラリュックよりも大きく、明らかに20L越えのサイズに見える。そこで実際にどのくらいの量の機材を収納できるのか、満杯になるまで機材を入れてみることにした。
すべての機材とリュックを含めた総重量は12.3kgとなり、とても15Lクラスのカメラバッグの収納量とは思えないレベル。試しに22.8Lの「Amazonベーシック カメラリュック」にも同じ機材が収納できるかを試してみた。
実際に「aosta Sanctuary III IS リュック」が満杯になるまでに入れた機材は下記のとおりだ。
- カメラ
Canon EOS 6D Mark II
SIGMA fp- レンズ&マウントアダプター
Canon EF17-40mm F4L USM
Canon EF85mm F1.8 USM
Irix 15mm F2.4 Blackstone
SAMYANG XP 14mm F2.4
SIGMA 45mm F2.8 DG DN | Contemporary
SIGMA 50mm F1.4 DG HSM| Art
SIGMA 150-600mm F5-6.3 DG OS HSM | Contemporary- アクセサリー
交換用カメラバッテリー×8
記録メディアケース
ブロアー
フィルターケース (フィルター×8)
ステップアップリング×6
アダプターリング×9
クリーニングクロス ×2- パソコン
MacBook Pro 13インチ
容量15Lのリュックに入っていた機材を容量22.8Lのリュックに移し替えたのだから、当然すべての機材が収納できるはずなのだが、「aosta Sanctuary III IS リュック」に収納されていた機材は、22.8Lのリュックには収納しきれず、「Canon EF85mm F1.8 USM」が入りきらなかった。
リュックの大型化により、「SIGMA 150-600mm F5-6.3 DG OS HSM | Contemporary」などの超望遠ズームレンズを装着したカメラをそのまま収納できる。超望遠ズームレンズにテレコンバーターやマウントアダプターを装着した状態で収納できる余裕はうれしい。また、メイン収納室の深さが約125mmあるので、かなり大きなレンズでも立てた状態で収納できるようになっている。「aosta Sanctuary III IS リュック」は、スペック上は15Lだが、収納量は十分に確保されており、中上級者のメインのカメラリュックとして見ても使い勝手は悪くない。
気になるポイントを差し引いても試してみる価値あり
メイン収納室の収納量だけでなく、多くのポケットを備え、細部に渡るまで配慮の行き届いた「aosta Sanctuary III IS リュック」。しかも “座れる” のだから、待ち時間の長い撮影をする方にとっては、魅力的な選択枝の一つといえるだろう。
ただし、気になるポイントがないわけではない。ひとつは、さすがに耐荷重100kgの鉄製フレームが入っているためか、リュック自体の質量が3kg近く、運ぶときの疲労は無視できない。正直、機動性の面では、同サイズのカメラリュックと同等とは言い難い。駐車場から撮影現場までの移動に使うといった、短距離での利用がオススメだろう。ふたつめはクッション素材の薄さだ。筆者が厚手のショルダーストラップとウエストベルトが好みということもあるが、軽量化のためなのか、これらのクッションがやや薄手であることが気になった。
とはいえ、立って待つのと座って待つのでは体力の消耗や待てる時間、撮影時の集中力などがまったく違ってくる。「aosta Sanctuary III IS リュック」は、試してみる価値のあるカメラリュックといえるだろう。