プロの写真家はRAW現像で仕上げることを前提に撮影することも多い。しかし、その工程は意外にも簡潔だったりする。風景写真家の工藤智道さんが行なっているRAW現像を3ステップで紹介する。
工藤智道 × Digital Photo Professional × 彼岸花
色や描写はRAW現像で調整、反射除去や密集感は現場で
一斉に鮮やかな花を咲かせる彼岸花。独特な形の花びらや群生して咲いている姿は美しく、写真に撮りたくなる。彼岸花のような濃い赤色はデジカメが苦手としている色だが、私はカメラの設定は風景撮影時と同じで、ホワイトバランスは「太陽光」、ピクチャースタイル (仕上がり設定) は「風景」で撮っている。そして、記録形式はもちろんRAWデータ。
屋外の撮影でホワイトバランスやピクチャースタイルの設定を細かく調整するのは難しい。普段撮影している風景のセッティングで撮っておき、現像時に色味や描写などを調整して仕上げるのが現実的だと考えている。
撮影の際には、アップで撮る場合と群生している状態を撮るのでは露出の設定が異なる。アップの場合は花写真としてやや明るめの露出で狙い、群生は風景写真としてやや暗めに撮影するのがポイントだ。どちらにしても明る過ぎると現像がしにくくなるので、ほんの少し暗いくらいの露出で撮影しておいたほうがいい。
また、彼岸花の花びらは光が反射しやすく、白っぽく写ってしまうことがある。PLフィルターを使って光の反射を除去することで、彼岸花本来の色を引き出せる。たくさん咲いているイメージを強調するのであれば、望遠レンズの圧縮効果を利用して密集感を出そう。撮影した彼岸花の写真は派手な色になり過ぎないように、鮮やかでありながら自然な雰囲気となるようにRAW現像で仕上げたい。
ホワイトバランスと色調整ツールで彼岸花のきれいな赤色を引き出す
使用ソフト : キヤノン Digital Photo Professional (DPP) Ver4.12.40.1
[ステップ1] ピクチャースタイルから調整するのが鉄則!「風景」から「ポートレート」に変更
DPPでは、ピクチャースタイル (仕上がり設定) を最初に調整するのが大事。ほかの項目を調整した後にピクチャースタイルを変更すると、調整済みのほかの項目が調整前の状態に戻ってしまう。今回はまずピクチャースタイル「風景」から「ポートレート」に変更し、鮮やかさを抑えつつも赤味を乗せた。同時にガンマ調整を自動にして、階調と輝度を整える。
「ガンマ調整」とは?
撮影したRAWデータを、好ましい階調と輝度になるようにダイナミックレンジを調整してくれる機能。多くの場合はガンマ調整をかけたほうがきれいな仕上がりになる。ただし、自動にするとシャドウやハイライトが調整されて、意図した描写とは異なる結果になる場合もある。そのようなときはツールパレットのシャドウ、ハイライトで再調整する。
[ステップ2] ホワイトバランスの色温度と微調整で黄色味を抑える
撮影したときの天候や光などによって最適なホワイトバランスは変わるので、現像でいろいろな設定を試してみて、好みの色味を見つけたい。それでもイマイチであれば「色温度」や「微調整」で細かく調節してみよう。ここでは写真全体の色味が若干黄色っぽかったので、色温度を「5000K」に設定。さらに微調整で「B-A」を「-4」、「M-G」を「-3」に調整した。
[ステップ3] 色調整ツールで彼岸花の色を引き出す
色調整ツールパレットに切り替えると、色別に調整することができる。各色のスライダーにはH (色合い)、S (彩度)、L (明るさ) をそれぞれ調整可能。ここでは彼岸花の色をさらに引き出すために、レッドとオレンジ、イエローのスライダーをそれぞれ細かく調整していった。色調整が終わったらシャープネスを整えて完成。シャープネスをかけ過ぎると、特に彼岸花のしべが不自然になるので注意しよう。