『CAPA』本誌連動企画としてスタートした、月例フォトコンテスト「学生の部」ピックアップ作品レビュー。ここでは『CAPA』2020年12月号掲載の入賞作品に加え、全応募作品の中から審査員の鶴巻育子先生が目を留めた“気になる作品”をピックアップしてアドバイスします。さらなるレベルアップのためのヒントが満載です!
〈講評〉鶴巻育子
1席「鏡よ鏡」
水野希海 (愛知県津島市 / 17歳 / 愛知県立津島北高等学校)
砂浜の中央に突然海が現れたみたい。鏡を用いて、ピントの位置や被写界深度などの設定の工夫によって、トリッキーでメルヘンチックな空間を作っています。鏡の中に映っているのはラムネの瓶という、ちょっと間の抜けたユーモアセンスは好感が持てます。
2席「伝承あそび」
中根 誉 (愛知県豊田市 / 18歳 / 愛知県立猿投農林高等学校 / 写真部)
凧揚げをする男性の姿を整った構図でシンプルに美しく切り取っています。ただ目の前の出来事を素直に写している衒いのなさもいいですし、フィルムの粒状感も相まって眺めていて落ち着きます。写真らしい写真です。
3席「生活」(4枚組)
十林穂乃香 (和歌山県田辺市 / 和歌山県立神島高等学校3年 / 写真部)
被写体は作者のお母さん。撮られている意識が全くない。カメラの存在を感じさせず、両者の間にある距離感に、少しゾッとする作品。リアル過ぎて、かえってフィクションのようにも見えてくるのも不思議です。
入選「drop」
村松真帆 (愛知県津島市 / 18歳 / 愛知県立津島東高等学校 / 写真部)
実際雨降りだったのか演出なのか状況がわかりませんが、説明的に捉えていないことで、鳥肌の立った腕とそれぞれの水滴の存在が気になる仕組みとなっています。透明感があり、色味もきれいです。
入選「夕暮れ前のひととき」
安藤祐輝 (愛知県一宮市 / 15歳 / 一宮市立西成東部中学校)
廃バスが悲しげな光景ですが、手前のアゲハ蝶がいいアクセントになってメルヘンチックなストーリーを感じさせ、燃えるような夕陽がドラマチックに演出しています。奥行きと緊張感ある縦位置の構図でうまく切り取りました。
入選「手作り音色」
生越若葉 (島根県大田市 / 15歳 / 島根県立大田高等学校 / 写真部)
少年の表情と手の仕草が印象的。手作りのギターを持っているので、バックのカーテンによってステージのようにも見えてきます。ストロボを使用し乱雑な庭先の様子を生々しく写し出したのが成功しています。
入選「大きな海と小さな私」
向當和莉 (福井県越前町 / 17歳 / 福井県立丹生高等学校 / 写真部)
曲線と直線の配置が絶妙で素晴らしい構図。子どももいいタイミングで捉えています。アンリ・カルティエ・ブレッソンの写真を思い出すほどです。モノクロ表現でも映えそうな作品です。
入選「幻想世界」
菊田 華 (宮城県塩竈市 / 16歳 / 宮城県塩釜高等学校 / 写真部)
幻想的な要素はなく、とても現実的なモチーフが写っていますが、「幻想世界」というタイトルとのギャップが面白い。手前の植物、家、電柱と日常のレイヤーが美しいと感じる作者の目が素晴らしいです。
入選「夢まぼろし」
藤井香菜 (愛知県豊田市 / 18歳 / 愛知県立猿投農林高等学校 / 写真部)
女性と花の多重露光は珍しくないですが、大抵は美しく撮ろうとしているものが多いです。この作品は、ラフな格好でスナップ的な描写とマリーゴールドとの組み合わせの違和感がいい。この女性に親近感を覚えます。
入選「巨大な水たまり」
中山和奏 (愛知県岡崎市 / 光ヶ丘女子高等学校1年 / 写真部)
これしか帰る手段がなかったのでしょうが、随分と大きな水たまりの中を進んで行く作者の友人。それをただ後ろから撮影している図を想像すると面白い。広角で捉えて水たまりの大きさを強調すると、この状況の過酷さがより表現できたでしょう。
入選「生きる」(3枚組)
岡﨑ひなた (和歌山県田辺市 / 和歌山県立神島高等学校3年 / 写真部)
岡﨑さんの写真は、いつも光がきれいで何気なくいい瞬間を切り取っています。この作品もそうで、小さな命が美しく描かれています。題材、光、被写体の見つけ方などから、川内倫子さんの作品を彷彿とさせます。