サムヤン得意の超広角14mmの中でも特にコスパが高いシリーズ
コストパフォーマンスが高くて明るい超広角14mmとして、多くのユーザーに愛されているサムヤンの「14mm F2.8 ED AS IF UMC」がリニューアル。2020年9月18日に「SAMYANG MF 14mm F2.8 MK2」となって発売された。この新しい14mm超広角レンズをテストする機会に恵まれたので、解像力やぼけディスクなどの実写チャートの結果を交えてレポートする。
実際の撮影シーンを想定してより使いやすく深化
ひと昔前に35mm判フルサイズ用で14mmの開放F値2.8レンズといえば、実勢価格20万円オーバーの高級レンズが常識だった。超広角の広い風景や星空を広く取り込んだ星景写真が撮れる憧れのレンズというイメージがある方も多いのではないだろうか。
サムヤンは、そんな14mm F2.8クラスの単焦点を現行で5本 (F2.4を1本含む) もラインナップする、14mmを得意とするレンズメーカーだ。なかでも今回紹介する「MF 14mm F2.8 MK2」の前のモデルになる「14mm F2.8 ED AS IF UMC」は、実勢価格が4万円台というコストパフォーマンスの高さと画質のよさで多くのユーザーに愛用されてきた。
まずは「MF 14mm F2.8 MK2」にリニューアルされ、どこが変わったのかをみていこう。みてすぐにわかるのは外観デザイン。従来モデルは黒に赤いラインのワンポイントというデザインだったが、「MF 14mm F2.8 MK2」はブラックボディにシルバーラインを基調にした、よりシックなものになった。シンプルなデザインのおかげで、装着するカメラボディのデザインを選ばない。
次にフォーカスロックの搭載。フォーカスロックとはピントリング (ピント位置) を固定する機能だ。「MF 14mm F2.8 MK2」では、ピントリングの前、よりレンズ先端側に配置されている。無限遠などにピントを合わせた後、フォーカスロックを「Lock」側に回すとピントリングが固定される仕組み。暗がりで撮影する夜景や星景写真の撮影の際に便利な機能だ。
ピントリングだけでなく、絞りリングにも機能が追加された。絞りデクリック機構だ。一般的に静止画用カメラの交換レンズは、絞りリングを回転するとクリック感がある。本レンズでは1/2段ごとにクリックが感じられる。絞りデクリック機構を使うと、このクリックの解除が可能。無段階でなめらかに操作できる。レンズ操作時に音の発生が問題になる動画撮影時などに優位に働く。また、無段階なので1/2段以下の細かな絞り操作も可能になるそうだ。
さらに従来モデルの「14mm F2.8 ED AS IF UMC」では6枚であった絞り羽根が9枚に変更された。絞り込み時には18本の光条が華やかに発生し、ぼけの形状もより真円に近くなったという。 また、マウント部にウェザーシーリングを追加。カメラとレンズを連結するマウント部分から侵入する水分やホコリをシャットアウトする。
「MF 14mm F2.8 MK2」はニコンF、キヤノンEF、キヤノンEF-M、ソニーE、富士フイルムX、マイクロフォーサーズのそれぞれのマウントに対応するモデルが用意される。対応マウントの幅の広さはうれしいところだ。 ただし今回のリニューアルでは、基本的に光学系の変更はないとメーカーからは発表されている。従来モデル同様、10群14枚で2枚の非球面、3枚の高屈折、2枚の低分散と、レンズの半数が特殊レンズという構成である。
大きさはキヤノンEF用で最大径約87mm、長さが約93.6mm、質量は約641g。同じキヤノンEF用では従来モデルよりも約3mm短くなり、質量は約90g重くなった。ちなみに最短撮影距離は28cmで変化はない。ただし、「14mm F2.8 ED AS IF UMC」では公開されていなかった最大撮影倍率が、「MF 14mm F2.8 MK2」は0.08倍であることが明記されている。
基本的に、より使いやすく深化したという「MF 14mm F2.8 MK2」へのリニューアル。ただし、韓国・サムヤンオプティクス公式サイトに掲載されたMTFグラフが変わっていることを筆者は見逃していない。 本記事では、筆者がAmazon Kindle電子書籍『SAMYANG MF 14mm F2.8 MK2 レンズデータベース』を制作する際にソニーEマウントモデルとソニー「α7R III」の組み合わせで撮影した各種チャートを元にレンズの詳細を解説していく。