写真家の上田義彦さんが初監督を務めた映画『椿の庭』が、2021年4月9日より東京・シネスイッチ銀座をはじめ、全国で順次公開される。また同日より、東京・丸の内のエプサイトギャラリーで同名の写真展が開かれる。
この映画の物語を着想したきっかけは15年前に遡る。上田さんの自宅近くにあった古い家が、あるとき空き地になった。住人とは一度も顔を合わせたことはないが、穏やかな静けさに包まれた家の記憶がありありと心に残っていた。
映画の舞台は葉山で、そこには長年家族と暮らした古い家を一人で守る老母が暮らす。古民家の佇まいや、家に差し込む優しい光などが、映画では美しく捉えられている。ポートレート、静物、風景など、さまざまな被写体を精緻に写し込んできた彼の感性が息づく。
また主人公の着物は監督の意向で、演じる富司純子さんの普段着から選んだという。「家は住んでいた人々の記憶を宿す装置」であり、それがこの映画のテーマ。日本人が育んできた文化、美意識、思想がそこから現れてくる。
写真展では映画で撮影されたフィルムから、上田さんが選んだ大切な、思い出深いシーンを選んでいる。
映画『椿の庭』
監督・脚本・撮影 上田義彦
出演 富司純子、沈 恩敬 (シム・ウンギョン)、田辺誠一、清水綋治、内田淳子、北浦 愛、三浦透子、宇野祥平、松澤 匠、不破万作、張 震 (チャン・チェン)、鈴木京香
上田義彦写真展『椿の庭』
会期 2021年4月9日 (金) ~5月12日 (水)
会場 エプサイトギャラリー
住所 東京都千代田区丸の内3-4-1 新国際ビル エプソンスクエア丸の内1F
時間 11:00〜17:00
休館日 日曜
料金 無料
問い合わせ エプソンスクエア丸の内 (TEL 03-6775-9481)
〈文〉市井康延