鈴木サトルさんの写真集『奈落』が発売された。
本書は瞬間が見せる奇妙な光景を丹念に採取したもので、モノクローム写真の醍醐味が味わえる。鈴木さんはとりわけ子どもに惹かれているようだ。路上で天を仰ぎ慨嘆したり、人との交わりを断って居たりする姿など、彼らは一様に不機嫌そうだ。ただ光の存在もあり、奈落だけが描かれているわけではない。現実から遊離して、写真だからこそ見えてくる幾重もの物語が潜んでいる。
鈴木サトル写真集『奈落』
220×180mm・64ページ
2,200円(税込)
2021年1月27日発売
日本写真企画
〈文〉市井康延