『CAPA』本誌連動企画として毎月公開している、月例フォトコンテスト「学生の部」ピックアップ作品レビュー。今回は『CAPA』2021年6月号より、誌面に掲載された入賞作品に加え、全応募作品の中から審査員の鶴巻育子先生が目を留めた“気になる作品”をピックアップしてアドバイスします。さらなるレベルアップのためのヒントが満載です!
〈講評〉鶴巻育子
1席「Eye」
道畑あおい (和歌山県田辺市 / 17歳 / 和歌山県立神島高等学校 / 写真部)
最初に少年の澄んだ大きな目に引きつけられ、そのあとに、顔、身体、岩、画像全体へと視点が広がっていく。マスクの市松模様や岩の配置が造形的に見ても面白い。正面から狙った無駄のない構図によって映像的にもインパクトがあります。階調豊かな丁寧なモノクロプリントもきれいですし、堂々と作品と言える作品です。
2席「作業中」
藤田陽留 (鳥取県八頭町 / 13歳 / 鳥取県立鳥取聾学校 / 写真部)
たまたま、絆という文字が額装された壁の目の前で作業しているだけのシーンですが、偶然性によるユニークさや違和感を切り取る写真ならではの面白さが出ている作品です。パースがついた構図で余計なものがない無機質な空間が効いています。的確な露出とプリントの質を上げれば、もっといい作品になったはずです。
3席「学校を休んだ日」(4枚組)
谷口朱胡 (和歌山県田辺市 / 17歳 / 和歌山県立神島高等学校 / 写真部)
美しさと孤独が交差するような作品と感じていました。「平日の昼間、みんなが勉強をしている時間に私は何をしているんだろう」そんな疑問を持ちながら、撮影していたのを知るとさらに共感。自分を客観的に見たとき妙な違和感が生まれます。素直に書いた言葉が加わることで作品のイメージが明確になりました。
入選「夏の妹」
久保風依 (三重県伊勢市 / 18歳 / 皇學館高等学校 / 写真部)
不機嫌そうな表情、顔にかかった髪の毛、長い指、大人に近づいている雰囲気に色っぽさを感じる一方で、麦わら帽子と浮き輪を持つ仕草のギャップがかわいい。
入選「紅白」
鈴木良和 (愛知県みよし市 / 16歳 / 豊田南高等学校 / 写真部)
雪が星屑、信号機は人工衛星や宇宙船の一部のように見えます。全体の色合バランスも良く、美しく迫力を感じる作品です。何より、美しいと思った気持ちを優先し、説明的に切り取っていないのがいい。
入選「すたれた場所で男は笑う」
田原颯汰朗 (島根県大田市 / 16歳 / 島根県立大田高等学校 / 写真部)
まるで映画のようなタイトルが、作品の魅力を倍増させています。バスタブやタイヤが転がった奇妙な場所と、口元しか見えなくても人の良さがにじみ出ている少年とのアンバランスさが面白い。
入選「evening」
藤本愛永 (香川県坂出市 / 17歳 / 香川県立坂出商業高等学校 / ジャーナル研究部)
作者は映画のワンシーンのように演出したようですが、役者のぎこちなさが目立ちます。その滑稽さがこの作品の魅力です。小道具のセレクトもおかしい。喜劇と捉えると映画のワンシーンとも言えるかも?
入選「廃れた都市」
中田大介 (愛知県小牧市 / 16歳 / 愛知県立小牧南高等学校)
廃れた都市というタイトル、一枚の大きな板のような物体となれば、これはモノリスか。実際は解体された建物の一部とわかっていても、そう見てしまえば楽しくなります。
入選「待ち時間」
濱口真梨 (三重県志摩市 / 18歳 / 皇學館高等学校 / 写真部)
仲良し二人がスマホを見ながらバスを待つ。素朴で可愛らしい日常の風景です。時代の錯覚を覚えるのはフィルムの効果でしょうか。それにしても素直な写真が心地良い。このままの感覚で撮り続けてほしいです。
入選「枯れていく」(3枚組)
奥野玲音 (島根県大田市 / 16歳 / 島根県立大田高等学校 / 写真部)
森を歩きながら淡々とシャッターを切っていく視点がいい。「面白い形の木がたくさんあった」とコメント。今度は面白い形を探すより、もっと直感的に切り取っていくとさらに深い作品になると思います。