ボケ味は？ 解像力は？ 大口径広角レンズ「FE 35mm F1.4 GM」の描写力を実写チェック

伊達淳一のレンズパラダイス『CAPA』2021年8月号 Other Shots

伊達淳一カメラマンがさまざまなレンズを使い倒しレビューする『CAPA』本誌人気連載の「レンズパラダイス」。2021年8月号の「レンズパラダイス」Other Shots 前編では、ソニー「FE 35mm F1.4 GM」の描写力を、誌面に掲載しきれなかった実写作例で検証する。

1. 前編 :「ソニー FE 35mm F1.4 GM」の描写力チェック
2. 後編 : フルサイズEマウント大口径35mmレンズ5本の描写を比較チェック

ソニー FE 35mm F1.4 GM

とろけるようにスムーズな後ボケ

雨粒が付着したタチアオイの花をド・アップで撮影。広角とはいえ、開放F1.4の近接撮影では被写界深度は極めて浅いので、ピント拡大を併用してAF-Sで花のシベの先端にピントが合うよう頑張ってみた。近接撮影でもピント面ににじみはなく、後ボケもとろけるようにスムーズだ。

口径食も少なく縁取り感もほとんどない

絞り開放の口径食はこの程度。周辺の光点ボケの欠けはそれほど大きくはなく、ボケの輪郭の縁取り感もほとんどなし。後方の微ボケ領域も滑らかで、アジサイの花も自然にぼけている。

前ボケも滑らかで、ピント面はキレのある解像

手前に植え込みを入れて前ボケもチェック。小雨混じりでフラットな光線状況ということもあり、広角レンズとは思えないほど滑らかな前ボケだ。しかも、ピント面の解像も驚くほどキレが良く、絞り開放とは思えないほどの解像だ。

F2.8では周辺光量が向上、前ボケもうるさくはならない

絞り開放とF2.8の比較。絞り開放でも十分過ぎるほどシャープだが、F2.8に絞るとコントラストと周辺光量が向上し、かなり硬質な描写に変わってくる。ボケがうるさくなりやすい前方の微ボケ領域を切り出してみたが、絞り開放ではコントラストが低くなることもあって、前ボケとしては柔らかだ。F2.8にするとコントラストが向上し、ボケ量も少なくなるので、もっとうるさいボケになるかと思ったが、硬さはあるものの、それほど微ボケはうるさくなっていない。

■F1.4

■F2.8

前後にぼけたヒゲなどにも色づきは見られない

横浜関内の猫カフェMiysisにて。35mmの画角と開放F1.4の明るさは、室内でペットを撮影するのにもピッタリで、室内の雰囲気を感じさせつつ、背景をフワッと大きくボカせるのが魅力。動物瞳AFで目にビシッとピントが合っていて、ヒゲや毛並みを見ても、前後のボケに色づきはなし。手前のヒゲはわずかに二線ボケ傾向があるが、それほどうるさくはなく好感が持てる。

開放F1.4としては軽量なので手持ち撮影も楽にこなせる

Miysisの看板猫、スコティッシュ・フォールドのひなちゃん。実は左手に「DJI Pocket 2」を装着した自撮り棒を持ちながら、右手だけでカメラを構えているのだが、開放F1.4のレンズとしてはかなり軽量なので、こうした片手撮影も楽にできる。後方の目に映った照明のボケに多少縁取り感が出ているが、これは猫の水晶体のレンズ効果によるものだろう。窓からの外光で背景が明るく、＋1.3というプラス補正を行なっているが、シャドーの黒浮きやハイライトのにじみもなく、クリアな描写が得られている。

ポートレートにおいて背景を適度にぼかせる

ポートレート撮影といえば85mm前後の中望遠が人気で、背景を大きくぼかし、モデルを浮き立たせた撮影が楽しめるが、35mmF1.4を使ったポートレート撮影は、周囲の状況を入れ込みつつ、前後を開放F1.4の明るさで適度にぼかせるのが持ち味だ。

絞り開放で船体を鮮明に描写

横浜大桟橋に停泊中の超大型クルーズ船「飛鳥 II」を、絞り開放で手持ち撮影。「飛鳥 II」の船体は細いワイヤーまで鮮明に描写されているのはもちろん、画面周辺の光源にパープルフリンジやコマフレアはほとんど感じられない。遠景の点像性能はかなり高レベルだ。

後編では、フルサイズEマウント大口径35mmレンズ4本と撮り比べて検証します。

※参考価格は記事執筆時点の量販店価格です。