冴木一馬さんが写真集『花火景』を上梓した。
花火は多くの人が取り組む写真の題材だろう。ズームレンズを使い、華麗な光の造形美を捉えようとするが、冴木さんの場合、花火はあくまでモチーフの一つ。撮りたいのは花火のある光景だ。
暗い夜空に花火が打ち上げられることで、しんとした夜の世界もその瞬間、違う表情を見せる。さまざまな場所で花火を見上げる人たちがいるほか、古びた商店街のネオンサインとの対比は実に印象深い。
写真集の終盤には会場の灯りと夕焼けが拮抗した、花火が始まる前の会場を俯瞰した1枚を見開きで置いた。美しく重厚な装幀と、暗部が深く存在感のある印刷によって、一層その世界観が広がる。
冴木一馬『花火景』
247×182mm・120ページ
3,300円(税込)
2021年2月5日発売
赤々舎
〈文〉市井康延