『CAPA』本誌連動企画として毎月公開している、月例フォトコンテスト「学生の部」ピックアップ作品レビュー。今回は『CAPA』2021年9月号より、誌面に掲載された入賞作品に加え、全応募作品の中から審査員の鶴巻育子先生が目を留めた“気になる作品”をピックアップしてアドバイスします。さらなるレベルアップのためのヒントが満載です!
〈講評〉鶴巻育子
1席「WE」
湯川紗愛 (和歌山県田辺市 / 17歳 / 和歌山県立神島高等学校 / 写真部)
見た目で判断するのはいけませんが、怖そうな人たちです。「2人の堂々とした姿に惹かれて撮りました」と作者。まぁ、よくぞ声を掛けました。おそらく堂々とした作者の態度にお二人も気持ちを許したのでしょう。腕組みのポーズ、背景の汚れた壁、距離感、完璧なポートレートです。元田敬三さんのポートレート作品を彷彿とさせるインパクトがありました。
2席「導き」(4枚組)
伊藤優太 (埼玉県北本市 / 17歳 / 埼玉栄高等学校 / 写真部)
見ているとワクワクしてくる組写真です。最初は日常の中で見るフォルムの面白さに着目してしまいましたが、じっくり見ているとサイズ感が麻痺し、タイトルの文字どおり異空間に導かれて行くような感覚を覚えます。優れた色彩感覚と独特な構図は天性のものでしょう。4枚だけでなくもっと見たくなります。
3席「海風」
堀江蓮人 (鳥取県鳥取市 / 13歳 / 鳥取県立鳥取聾学校 / 写真部)
作者が風を感じシャッターを切っていることが想像できました。人物が画面に収まっていなかったり、服の裾が捲れていたり、人によっては失敗と見るかもしれませんが、それがリアルさに繋がりました。うまく撮ろうとせずに、感じたままを素直に写し止めることは、簡単なようでとても難しいのです。
入選「燕子花が見た白昼夢」
大河内春菜 (愛知県刈谷市 / 16歳 / 愛知県立知立高等学校 / 写真部)
色合いが美しく、文学的なタイトルでさらに作品に深みが加わりました。また、素直な視点と大胆な構図は大河内さんのほかの応募作品からも感じました。今の感覚を大切にしてほしいです。
入選「海の彼方へ」
北 楓佳 (和歌山県田辺市 / 15歳 / 和歌山県立神島高等学校 / 写真部)
弾むように歩く女性の手を取る男性。シルエットから二人の関係性が想像できます。海の上を歩いているように見えて、タイトルも含めてとてもロマンチックな作品に仕上がっています。
入選「さよなら」
髙島孝仁 (福井県越前町 / 16歳 / 福井県立丹生高等学校 / 写真部)
地面に映る影に友情が表れていて、温かい作品です。手を振る女の子の動きもいいタイミングで捉えています。影、コンクリートの道、草、木々と画面内にできた質感が異なった層も面白い。
入選「迷い道」
門田真亜子 (島根県大田市 / 16歳 / 島根県立大田高等学校 / 写真部)
きれいに並んだブロックの集合体の中に少女が一人立っています。デッドパンの手法を用いたことで、人物ではなく物として見え、鑑賞する人によって感じ方が変化し考える作品になっているのが魅力です。
入選「memories」(3枚組)
原 令奈 (和歌山県田辺市 / 18歳 / 和歌山県立神島高等学校 / 写真部)
いらないものを省き、被写体そのものを画面いっぱいに写したことで、凝視しているような強さがあります。3枚全く違う被写体ですが、繋がりを感じるセレクトで上手にまとまっています。
入選「狭間」
石黒なついちろ (愛知県小牧市 / 15歳 / 小牧高等学校 / 写真部)
「散った花たちは自分の道を諦めてしまった人たち (中略) そして希望と絶望の狭間に……」。シーンから受ける印象に沿って切り取っています。言葉を加えることで作品に深みが出る。写真表現をする上で素晴らしい試みです。
入選「神域」
平林温人 (東京都江東区 / 17歳 / 東亜学園高等学校)
神社に漂う神秘的な空気感を見事に表しています。グリーンを足した色合いが、緑を鮮やかに再現させたと同時に非日常の雰囲気を加える効果となりました。地面の影を意識した構図も素晴らしいです。