東京では、4度目の緊急事態宣言が発出され、カメラを取り巻く状況も厳しいものがある。外出自粛が求められ、撮影に出かけづらい状況の中、機材レンタルの会社は、この状況をどう見ているのだろう。「GooPass」を運営するカメラブで話をうかがった。
コロナの影響はあまりないがプロモーションが打てない
カメラブ代表の高坂勲さんによると、旅行に出かけやすいかどうかという世間の空気感は変わったものの、コロナによる会員の減少といったような影響は見られないのだそうだ。むしろ、昨年の7月から11月ごろまでは、Go Toトラベルによる旅行需要とカメラのレンタル需要とがマッチして、単発の利用も含めて利用者が急増した。
会員数は、創業以来のペースで増えたそうだが、緊急事態宣言が発出され、新規感染者数が増えている状況では、「カメラを持って撮影に出かけよう!」という積極的なプロモーションを打ちづらいのが悩みだと言う。
会員登録者数は昨年末時点で約3万人。この5月末には約4万5千人を超え、右肩上がりで増え続けている。ただし、登録だけして利用を控えている人も多い傾向にあり、アクティブユーザーになっていない人も相当数いるのだそうだ。コロナ禍で撮影に行きたくても行けない状況なのだから、これはやむを得ないだろう。
ユーザー層はコロナ以前と大きく変わっていない。40代までが中心で、女性は3割ほどいるのだという。旅行市場が回復してくれば、女性の割合はさらに増えるだろうと高坂さんは分析している。
旅先での撮影からベランダで撮れる風景へ
ユーザーはおうち時間をどう楽しんでいるのだろう。高坂さんによると、天体撮影をする人が増えた印象があるそうだ。毎月のようにピンクムーンやブルームーンなどというように名付けられ、さまざまな天体ショーがニュースに取り上げられたことが一因にもなっているのではと言う。自社のWEBメディア「GooPass Magazine (グーパス マガジン)」でも天体撮影を取り上げたところ、記事へのアクセスが急激に増え、そこで紹介されている機材の貸し出しが増えた。「旅行ができなくなって、月や星、ベランダから撮影できるような被写体に、撮影の対象が移ったのが、コロナ禍の新しい傾向じゃないかなと思っています」
また、長野県千曲市と共同で「月の撮影会」を、阿智村星空の街と「星空撮影会」を開催した際の印象から、天体を撮りたい人は多いというのを感じているのだそうだ。
モノを提供した先にある、それをどう使うかを提案したい
「撮影体験をどれだけ作れるかが、この先の勝負だと思っています」と語る高坂さん。GooPassでは 撮影体験のサブスクの準備を進めているのだそうだ。「世の中には撮影映えのするイベントや場所、施設がまだたくさんあると思っています。そういったものをクリエイター視点で厳選されたコンテンツとして、少しでもお得に使えるようにパッケージ化して用意しようと考えています」
カメラをずっと借り続けることはしなくても、撮影を続けている人はいる。そういう人向けに、より撮影がはかどるようなコンテンツを提供しようと言うのだ。それは、自分自身に対して仕掛けているサービスでもあると高坂さんは言う。カメラはたくさん持っているのに撮影ができない。同じ状況にいる人は少なくない。誰かと関わりながら撮ることが大事だと感じ、そういう体験こそが作り出したいものでもあると考えている。
千曲市や阿智村など、いくつかの自治体とコラボして撮影会なども行なったが、こうした活動は、旅行市場への参入のきっかけと考えている。カメラ市場からカメラを活用していく市場にも活動を広げていきたいとの想いがあってのことだ。
自治体とコラボして撮影の場を提供
機材の貸し出しだけでなく、撮影の場を提供しようという活動も始めた。その第一弾は、日本一の星空「長野県阿智村」の地域活性、観光活性を推進するスタービレッジ阿智誘客促進協議会とのパートナー協定。星空鑑賞施設「日本一の星 浪合パーク」の新企画「星☆撮るすぽっと」で、2021年5月8日にカメラ機材の貸し出しや、「GooPass presents 星空写真撮影会」をはじめとするイベント運営を行なった。ただ、コロナ禍の中で大々的にイベントの告知をしにくい状況が悩みの種、緊急事態宣言が明けたらすぐに、撮影会などのイベントを告知できるよう準備を進めている。
テイクアアウトレンタルを拡大
ビックカメラと展開している「テイクアウトレンタル」も、今後さらに拡張していく事業のひとつ。店舗でモノを買うときの選択肢に、「レンタル経由にする」というのがあってもいいのではという想いからだ。
「他のモノも扱ったら? というお話もいただいていますが、それよりも今までなかった需要が生み出せるかどうかのほうが取り組みとして価値があると思っています。まずはカメラでしっかり需要を増やすことを目指したいんです」
テイクアアウトレンタルとは?
ビックカメラの店舗で、気になった新品の機材をそのままレンタルできるサービス。商品が気に入ったら、そのまま購入することができる。気にいらなければ返却することができ、購入する場合は、レンタル期間の利用料分が割引きされる。前回の取材時にはまだ実証実験段階で、対象店舗も渋谷東口店本館のカメラコーナーとビックカメラ池袋本店だけだったが、その後「ビックカメラ アミュ プラザくまもと店」でも2021年3月5日のオープンと同時に取り扱いを開始し、対象商品も増えている。
ハードルを下げてカメラに長く深く関わってもらいたい
こうした一方で、足元のGooPassユーザーを増やしていくことも忘れていない。GooPassが提案するGooPassセットを235種類まで増やした。一生のうち、写真愛好家が購入するレンズはせいぜい数本。使わずに終わるくらいなら、少しでも触れてもらいたいというのが、GooPassの元々のコンセプト。「買うハードルを下げ、利用するハードルを下げ、カメラに長く深く関わってもらいたい」というのが高坂さんの願いでもある。GooPassの活動がどう変化していくのか、今後も注目だ。
機材のバリエーションを拡大
現在、レンタル機材は1355種類に増えている。新製品の導入も早く、ジャンルではアクションカメラやシネマカメラをはじめ、ドローン、コンバージョンレンズ、マウントアダプターなど幅広い商品を扱うようになっている。さらにフィルター、三脚、ジンバル、マイク、編集用のノートパソコンなど、アクセサリーも多岐にわたり、カメラユーザーの多様なニーズに対応している。