一瞬のパフォーマンスを切り取るスポーツ写真は、カメラの総合力が試される。キヤノンミラーレス初のプロ向けカメラ「EOS R3」は、これまでにないポテンシャルをひっさげて、この秋に登場した。そんな「EOS R3」を、第一線で活躍する写真家は、どう捉え、どう使いこなしたのか? スポーツ写真家の奥井隆史さんに『CAPA』編集長の菅原隆治がインタビュー。現場の声を聞かせてもらった。
決定的瞬間を初出し! EOS R3 × 奥井隆史 スポーツ写真ギャラリー
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AFやファインダー性能は目を見張る進化を感じますね
── 奥井さんは、つい先日までインターハイやパラリンピックを取材されていたんですよね。「EOS R3」以前は、どんなカメラを使われていたんですか。
奥井 ミラーレスカメラ「EOS R5」をメイン機として使っていました。サブ機は一眼レフ「EOS-1D X Mark III」です。ミラーレスには数多くのメリットがありますが、さらに「EOS R3」は目を見張る進化を感じています。
選手が後ろを向いていても、暗い場所にいても、AFがしっかり捉え続けてくれた
── なるほど。ではその進化について、順を追って聞いていきましょう。まず、スポーツ写真で重要なAFのスピードとファインダーのレスポンスは違いを実感できましたか?
奥井 ものすごく速くなったと感じますね。選手を捉えるスピードだけでなく、後ろを向いてしまった場合でもAFが見失うことはありません。
── AFのトラッキング (被写体追尾) についてはどうでしょう。
奥井 僕はAFエリア選択をスポット1点や領域拡大の上下左右に設定することが多いのですが、どちらもトラッキングがスゴい。意地悪くカメラを右に左にと素早く振ってみても被写体を見失うことはありません。現場で撮っているときは、もうAFのことは気にならなくなり、フレーミングとシャッターチャンスにだけ集中できましたよ。
── AF検知性能も上がりましたが、暗いシーンでの撮影はどうでしたか?
奥井 僕は競技中だけでなく、選手がトラックから引き上げるときの後ろ姿などを狙うのも好きなんです。そんなシーンは光が当たらないことも多いのですが、選手が暗い所に入ってもしっかりAFは合い続けていました。
ブラックアウトやローリングシャッター歪みを気にせず使えるのがスポーツ写真では大きなメリット
── EVFのレスポンスについてはどうでしょうか?
奥井 もうOVF (光学ファインダー) と変わりませんよ。違和感は全くないし、カクカクする感覚もない。ブラックアウトも気になりませんでしたね。
── それはスポーツ写真では大きなメリットになりますね。次に連写についてですが、まず普段使っているのはメカシャッターがメインですか?
奥井 いえ、スポーツ競技の撮影ではシャッター音を抑えたいので、ほぼ電子シャッターを使っています。特にパラリンピックでは、電子シャッターによるサイレント機能が使えないカメラだと、選手の近くで撮ることが許されない会場もありましたから。
── 電子シャッターがメインとなると、ローリングシャッター歪みが気になりますね。また、約30コマ/秒の高速連写はいかがでしたか?
奥井 ローリングシャッター歪みについては、普通にスポーツを撮っている限りは気になりません。これまでのカメラに比べて格段に進歩していますね。30コマ/秒の連写は、正直、最初はあまり必要ないと思っていましたが、試しに使ってみるとそれまで見逃していたシーンが写っていることに驚きました。それ以来、手放せなくなりましたよ。選択作業は大変ですけど、より魅力的なシーンが撮れる確率が上がることは、大きなアドバンテージですね。
軽くて握りやすいから長時間撮影でも疲れない
── 「EOS R3」の操作感はどうでしょう。グリップ一体型のメリットについてもお聞かせください。
奥井 「EOS R5」と「EOS-1D X Mark III」の良いところを取ったような操作周りなので、併用しても違和感は感じませんでした。レンズとのバランスを考えると、握りやすい一体型のほうが扱いは楽ですね。バッテリーも大型化されているので、連写を多用しても一日持ちますよ。加えて、しっかりした大型ボディにもかかわらず軽さが際立っています。大型の超望遠レンズとの組み合わせでも取り回しが楽だし、長時間撮影していても疲れません。
視線入力や高速連写は、撮影に集中できる大きな存在
── さて、新機能の視線入力AFについてぜひ実感をお聞かせください。
奥井 最初はちょっと怖くて (笑)。ただ使ってみると、レスポンスにびっくりしました。パラリンピックでは車椅子バスケットボールを撮影したのですが、離れたパスシーンでも2人の選手間でピントの移動が自在になります。目で追えばいいのですから、測距点を移動する速度とは比較になりません。
── 実際は、どんな操作ですか?
奥井 まず、サーボモードでシャッターボタン半押しで被写体を追い続けます。違う被写体に合わせたいときはいったん半押しを解除し、その被写体を目で見ればそちらがAF対象になり、再び半押しすれば追い続けてくれます。慣れは必要ですが、操作はシャッターボタンのみ。トラッキングとの組み合わせで、すごく便利に使えていますよ。
キヤノン「EOS R3」は、今、僕にとって最高のカメラですね!
── 最後に「EOS R3」の魅力を一言で表すとしたら?
奥井 新しいカメラが出るたびに進化は感じますが、今回はこれまでで一番です。別次元のスポーツ写真が撮れる可能性が広がったことからも「今の僕にとっては最高のカメラ」といえますね。
── これからも私たちを驚かせるような素晴らしいスポーツ写真を期待しています。
■キヤノン EOS R3 スペシャルコンテンツ
https://cweb.canon.jp/eos/your-eos/product/eosr/r3/
奥井隆史 (Takashi Okui)
1968年、東京生まれ。日本写真芸術専門学校卒業後、スポーツフォトエージェンシーを経て1996年よりフリーランス。陸上競技を中心にアウトドアスポーツやスポーツフィッシングなど、数多くのスポーツジャンルを得意としている。
〈協力〉キヤノンマーケティングジャパン株式会社