『CAPA』本誌連動企画として毎月公開している、月例フォトコンテスト「学生の部」ピックアップ作品レビュー。今回は『CAPA』2021年11月号より、誌面に掲載された入賞作品に加え、全応募作品の中から審査員の鶴巻育子先生が目を留めた“気になる作品”をピックアップしてアドバイスします。さらなるレベルアップのためのヒントが満載です!
〈講評〉鶴巻育子
1席「夜のひととき」
中川奈々未 (三重県松阪市 / 18歳 / 皇學館高等学校 / 写真部)
コメントに「我が家の普段の様子です」と。なかなか、普段の様子を撮れるものではありませんが、そのまんまの様子が写っているのが爽快で、撮影者を含めた家族4人の関係性や暮らしぶりがうかがえるイイ写真です。構図のバランスが良いところも好評価です。
2席「畏怖」
髙橋美珈 (神奈川県横浜市 / 16歳)
鼻の頭に10円玉、よく見ると針金で竹と一緒に縛られているタヌキ。出会ったままの高さでシャッターを押しています。何だかよくわからない状況ですが、写真に作者の気持ちが写っていて面白い。ストロボ使用で生々しい描写もいい。
3席「黄昏時」(4枚組)
道畑あおい (和歌山県田辺市 / 18歳 / 和歌山県立神島高等学校 / 写真部)
どの写真もいい瞬間から少しズレている感じ、そして、その前後の時間までが写っているような、決まっていない写真の心地よさがあります。まさに黄昏時の曖昧な雰囲気が出ています。柿の写真が全体の流れを止めてしまったのは惜しい。
入選「夏の終わり」
大野良輔 (岐阜県関市 / 16歳 / 関市立関商工高等学校 / 写真部)
青とも緑とも言えない微妙な色合いと湿度のある空気。その中に浮かび上がるセミの死骸。決してキレイな場所やものではありませんが、なぜか人は朽ちていくものに惹かれ、それが美しいと感じてしまいます。
入選「スマホ世代」
森口心暖 (三重県志摩市 / 18歳 / 皇學館高等学校 / 写真部)
学生までスマホが当たり前の世界。親は大変だ! と要らない心配をしてしまいます。みんながスマホに夢中の中で1人だけカメラ目線。パターンの中に一つだけ異なった被写体がある違和感が面白い。
入選「悔い」
西田順哉 (岐阜県関市 / 17歳 / 関市立関商工高等学校 / 写真部)
中途半端に身体が切れた構図にリアリティを感じました。試合に負けた物語と同時に、肌やタオルの質感、光と影が際立つモノクロ表現独特の魅力を感じる迫力ある作品です。
入選「試練」
松本真和 (島根県大田市 / 16歳 / 島根県立大田高等学校 / 写真部)
山陰の海らしい物悲しさを感じる光景です。試練というタイトルが、さらにそれを助長させます。さまざまな黒が表現され、マット紙との相性もよく、プリントで見せる意味のある作品です。日本海を撮り続けてみるといいですね。
入選「大好きな海」
山内葉月 (島根県大田市 / 16歳 / 島根県立大田高等学校 / 写真部)
背後にいる大人たちは全く気付いておらず、作者と子ども、2人だけの時間と空間。この青空の下での時間をどう記憶したのでしょう。子どもにとっては不思議な体験として残るかもしれません。
入選「こいのぼりとり」
渋谷優来 (島根県大田市 / 16歳 / 島根県立大田高等学校 / 写真部)
まるで少年が鯉のぼりを捕まえようとしているような物語性のある風景で、それぞれの被写体が生きた構図、全体の色の組み合わせも気持ち良いです。抜け感のあるプリントを目指すとより良くなります。
入選「春を迎える」(4枚組)
湯川紗愛 (和歌山県田辺市 / 17歳 / 和歌山県立神島高等学校 / 写真部)
1枚目の光が差し込む玄関先の風景は人の姿はありませんが、日常や家族が写っていて素直でいい写真です。さまざまな視点から家族との時間を捉えてる温かい組写真。撮ろうという気持ちが先行した写真と混在してるのが気になりました。