サードウェーブのクリエイター向けパソコン raytrek (レイトレック) シリーズから、14インチのモバイルノートPC「raytrek X4-T」が発売された。ハウススタジオで行なったポートレート撮影で、さっそく「raytrek X4-T」の使い心地をチェックしてみた。
「raytrek X4-T」とは?
2021年11月18日発売の「raytrek X4-T」は、インテル Core i7-1165G7プロセッサーを採用。14インチの液晶モニターは、sRGBカバー率約99%の広色域をカバーするフルHD液晶で、クリエイティブワークに対応する。16GBメモリ、512GBのNVMe SSD、Thunderbolt 4ポートを搭載と必要十分以上のスペックを搭載したモデルだ。三方向からのヘアライン加工“トリニティ・ストライプ”を天板に施した高級感ある金属製シャーシを採用しており、カラーは Black (ブラック) とRose Gold (ローズゴールド) の2色をラインナップする。
OS Windows 11 Home64ビット
CPU インテル Core i7-1165G7 (2.80GHz-4.70 GHz/4コア/8スレッド)
グラフィックス インテル Iris Xeグラフィックス(CPU内蔵)
メモリ 16GB LPDDR4 (PC4-25600)
ストレージ 512GB NVMe SSD (M.2スロット 2280)
ディスプレイ : 14.0インチ フルHD 非光沢ワイド液晶 (1920×1080ドット表示)
ディスプレイ色域 sRGBカバー率約99% (sRGB比約100%) / AdobeRGBカバー率約74% (AdobeRGB比約74%)
入出力ポート [USB Type-C] Thunderbolt4 x2 (PD対応充電 / DisplayPort Alt Mode 映像出力) [USB Type-A] USB3.2 Gen2 x1、USB3.2 Gen1 x1、USB2.0 x1
サウンド端子 マイク入力・ヘッドフォン出力 共用端子 x1 (3.5mm Audio Jack / CTIA)
映像出力端子 HDMI1.4a x1
バッテリー リチウムイオンバッテリー (約11.0時間 JEITA 2.0)
本体サイズ 幅323.5×奥行219.5×高さ18.9mm
重量 約1.5kg
また、同一筐体をベースにした兄弟機として、一般向けノートPC「THIRDWAVE F-14TG」も同時発売。こちらはラピスブルーと販売台数限定のSAKURA (サクラ)の2色展開となっている。
14インチノートPCはカメラバッグに収まる手頃なサイズ
スチル撮影がメインのロケでは、カメラ以外にも三脚やストロボ、レフ板など、持ち運ぶ機材は少なくない。それだけに、「カメラバッグに収まるサイズの携帯性に優れたノートPCがあったらいいのに」と思うことは少なくない。もちろん、写真編集に最適なスペックを備えていて欲しい。そんなユーザーのためのノートPCが「raytrek X4-T」だ。
ロケや取材では、画像のチェックやデータの一時保存用など、ノートPCを使う機会が多い。タブレットでは物足りないが、腰を据えて作業する時間も場所もないといった場面で、ノートPCの登場となる。ポートレートの撮影では、モデルとのコミュニケーションツールとして、画像を見せながら撮影するテザー撮影をあえて行なったりすることもある。大画面でピントチェックをしながら撮影するなど、ノートPCが活躍する場面は意外と多いのだ。
14インチのノートPCは、一般的なカメラバッグならすっぽり収まるサイズ。飛行機を使って移動するようなロケの場合には、空港の保安検査場で必ずノートPCを毎回取り出すことになるため、携帯しやすいだけでなく、バッグからすぐに取り出せるサイズというのはありがたい。
「raytrek X4-T」はクリエイター向けのノートPCながら、14インチとコンパクトなサイズになっている。実はこのサイズ、raytrekのノートPCでは最小クラスで、初めて投入されるサイズだ。RAW現像・レタッチパソコンとしてラインナップされている15.6インチディスプレイの「raytrek R5-TA6 写真&動画編集向けモデル」、パワーとモビリティを両立して快適な創作環境を実現する17.3インチディスプレイの「raytrek R7-TA」などがあり、いずれも性能の高さは十分すぎるほどだが、どちらも重さ2kgを超えるノートPCであり、自宅で使用する分には気にならないが、撮影機材と一緒に持ち歩きするのは、少々重く感じるかもしれない。「raytrek X4-T」はモニターサイズが小さいこともあって、重量約1.5kg。そんな点もメリットの一つだ。
大画面の外付けモニターとしても使える
シャッター音の小さいミラーレスカメラとズームレンズを使った撮影では、どんな風に撮られているのかがモデルに伝わりにくく、なかなか撮影のリズムに乗りにくい。そこで撮影開始直後には、「こんなふうに撮れているよ」と撮った画像を見せるのが手っ取り早い。「raytrek X4-T」は、ほぼリアルタイムでサクサク画像が表示されるので、撮影のリズムを乱されるようなこともない。ちょっとしたことだが、それだけで撮影の意図を的確に伝えることができ、モデルの表情もどんどん良くなっていく。
テザー撮影では、7インチの外部モニターを使っている人も多いが、画像の大きさの差は歴然だ。スリムベゼルの「raytrek X4-T」なら、14インチのモニターで撮影しながら画像をチェックすることができるので、効率的に撮影が進められる。しかもsRGBカバー率が約99%と広色域のモニターなので、色味の確認もほぼ問題なくできてしまう。動画撮影をするわけではないと割り切れば、フルHDの解像度で十分。反射を抑えたノングレア液晶も視認性が高い。
撮影後の画像セレクトとチェックでも、14インチあればモデルと並んで画面を見るのも問題ないサイズ。画像を拡大して見るピントチェックや大量の画像の読み出しもストレスなくでき、効率化が図れそうだ。
撮影後の編集作業でも小さすぎると感じることはない
データのバックアップは欠かせない作業だが、できればスタジオを出る前に済ませたい作業でもある。いつまでもカメラの中にデータを置いておくのは、フィルムを入れっぱなしにしているようで落ち着かない。カードリーダー搭載のドッキングステーションでデータを外部ストレージのSSDに保存した。「raytrek X4-T」は、USB Type-CのThunderbolt 4を2基搭載する。約400カット (9.82GB) の画像をコピーするのにかかった時間は、5分程度。転送時間は接続するデバイスやケーブルによっても変わるが、機材の片付けをしながらあっという間に終えることができた。
肌の調子を整えるといったような簡単なレタッチなど、「Adobe Photoshop Lightroom Classic」だけでできてしまうことも増えてきた。とはいえ、レイヤーが必要な画像編集は「Adobe Photoshop」で行う必要がある。いずれにしても「raytrek X4-T」ならマシンパワーを気にせずサクッと作業できる。設定画面を見ると、モニターの細かい設定ができないので、キャリブレーションをキチンとやっておく必要はあるが、sRGBのほぼ全部をカバーしているので、仕上がりに近い印象で確認できる。
いくつかのカットで、RAW現像も試してみた。ここではRAW現像に「Adobe Photoshop」を使ったので、「Adobe Bridge」も利用した。手の込んだ編集作業を撮影現場ですることは少ないが、編集者に仕上がりイメージを伝えたい場合や先に送ったJPEG画像で構成を決めてもらっている間に、先行して作業を進めることはある。早い段階で色味やトーンの方向性がある程度決まれば、その後の作業はずっと楽になる。それも信頼できるモニターのクオリティがあってこそだ。2画面で比較する場合でも画面が小さいと感じることはなく、作業を待たされることもないので、作業効率も上がりそうだ。
オンライン会議でも使える!
オンライン会議が増えたこともあって、ノートPCを選ぶときにはWEBカメラのクオリティを気にする人も多い。「raytrek X4-T」には、HD画質のWEBカメラがモニター上部に搭載されているので、心配は無用だ。セレクトした画像データを送って、編集部と打ち合わせをしてみたたが、画質的にまったく問題なかった。
「raytrek X4-T」の基本性能をおさらい
「raytrek X4-T」は、OSにWindows 11 Home 64ビットを搭載。CPUにはIntel Core i7-1165G7を採用する。またIntel Iris XeグラフィックスをCPU内蔵で搭載し、メモリは16GB、ストレージには512GBのNVMe SSDを採用。「Adobe Photoshop Lightroom」の推奨システム構成を満たしている※。複雑なレタッチが必要なら、デスクトップPCに作業を引き継げばいいわけだ。ノートPCの性能アップは、効率化にも大きく貢献してくれる。
※VRAMの設定によって変動する場合があります。
※Windows 11の場合、Adobe Photoshop、Bridge、Illustratorにて互換性の問題によりUIの不具合がでる可能性があります。
※Windows 11の場合はAdobe CC 2022をインストール必須。
入出力ポートは、USB Type-CのThunderbolt4 ×2 (PD対応充電 / DisplayPort Alt Mode 映像出力)、さらにUSB Type-AのUSB3.2 Gen2 ×1とUSB3.2 Gen1 ×1、USB2.0 ×1を搭載。マイク入力・ヘッドフォン出力共用端子 ×1 (3.5mmオーディオジャック) とHDMI映像出力端子 (1.4a) ×1を搭載する。
クリエイター向けのPCとして、唯一不満を感じたのがカードスロット。microSDのスロットしかないため、デジタルカメラでもっとも多く採用されているSDカードを含めて、データの読み出しにカードリーダーが必要になる。
キーボードは、JIS規格準拠のキー配列と19mmの十分なキーピッチを確保。キーストロークがやや深めだ。撮影の合間にするメールチェックやネット検索は日常的な作業だし、外出先で原稿を書いたり記事を校正することもちょくちょくあるので、しっかり押し応えのあるタイピングができるのはありがたい。キーボードにはLEDバックライトが付いており、暗い場所でも文字が見やすいというのも便利だ。
バッテリーはリチウムイオンバッテリーを搭載する。駆動時間は約11時間で、1日程度のロケなら、こまめに電源のオンオフを繰り返す必要はない。カメラマンにとっては不足のない駆動時間だろう。約1.5kgの重量は、14インチのノートPCとしては軽い方でないものの、それだけ容量の大きいバッテリーを搭載していると思うと納得できる。
セキュリティにも死角なし
タッチパッド左上には、Windows Hello (指紋認証) に対応した指紋センサーが搭載されている。指先を軽く置くだけで、パスワードを入力することなくログインすることができるというものだ。発売前の製品など、モノによっては見られたくない画像もあったりするので、セキュリティは強固でありながら、簡単にアクセスできるのは何かと便利だ。
また、本体左側にWEBカメラとマイクのスイッチが設けられている。物理的にオン / オフすることができるので、確実だ。
撮影から編集作業までを一台で! 一貫した作業をこなせる「写真編集も普段使いもできるノートPC」
14インチの「raytrek X4-T」は、一言で言えば「写真編集も普段使いもできるノートPC」だ。外部モニター代わりにもなるし、データの保存やレタッチ作業もできる。14インチという手頃なサイズは、フルスペックの大きくて重いノートPCとは違って、外出時に手軽に持ち運べ、メールのチェックやオンライン会議も好きなところでできる。スペックを抑えたとはいえ、クリエイター向けのraytrekシリーズだけに、カメラマンが必要とする機能・性能はしっかり押さえられている。また、Thunderbolt 4のポートはケーブル1本で、多くの機器に接続可能だ。4ポートを搭載し、持ち運ぶ機材を減らすことにも貢献してくれる。タブレットよりも扱いやすいモバイルノートPC。デスクトップのサブ機として、撮影の現場でも大いに活躍してくれそうだ。
■「raytrek X4-T」の詳しい性能はこちらをチェック!
〈協力〉株式会社サードウェーブ
〈モデル〉相澤菜々子 (アイズ)