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大人だって工場見学したい! “映像”にこだわる老舗メーカー・EIZOの工場へ行ってきた

まん延防止等重点措置が全国的に解除され、地方への往来も何とかできるようになった2022年4月中旬、石川県白山市にあるEIZOの工場を訪問した。カラーマネージメント液晶モニターをはじめ、高品質・高機能の映像機器を生産するEIZOの心臓部を覗くことができた。

EIZO工場見学レポート

映像機器の生産現場にいざ潜入!

生産ラインは、C棟とS棟に設けられている。フロアによって、Cell (セル生産方式)、Conbeyer (コンベヤー生産方式)、Hybrid (ハイブリッド生産方式) に分かれており、生産されている機種も違う。C棟にはメンテナンスセンターもある。Cは中央、Sは南の意味で、敷地内にはこのほかにも研究開発や耐久試験を行なう研究開発棟などもあった。

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いよいよ工場内部に潜入。

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角を曲がってすぐに、EIZOらしいモノを発見。「EIZOものづくり “心得”」は石川県の方言で書かれていた。

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人気モニターが大量生産されるコンベヤー生産ライン

コンベヤー方式の生産ラインは、主にビジネスモニター「FlexScan」が生産されている。後ろから部品を取って製品に取り付けていく。取材時は2つのラインが稼働していた。

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フロアには約2時間分の部品がストックされているのだそうだ。生産進捗に合わせて、別フロアの材料倉庫や外部の倉庫から随時部品が供給されるようになっている。

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モニターを置く台には、商品管理用のICタグが取り付けられている。どの部品が取り付けられたのかを、梱包されるまで追跡できるようにするものだ。

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コンベヤーの終点には、組み上がったモニターがずらりと並んでエージングの工程が行われていた。台の色は、EIZOのコーポレートカラーでもあるRGBの3色が使われている。

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エージングや画質調整終了後は、熟練した作業者が画質検査を中心として人の目で全数検査を行っている。モニタの各ポートにさまざまな画像や音声信号を入力し、画質やスピーカーなどの具合をチェックする。不具合が発見されると調整したり部品交換が行なわれるようになっている。

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多品種・少ロットのモニターはセル方式で生産

少ロットの製品は、ライン方式ではなくセル方式で生産されている。無停電電源装置 (UPS) を装備したテーブルの上で組み立てられていき、テーブルごと移動させることができるようになっている。下の写真は、しばらく通電して画面輝度を安定させ、次のホワイトバランス調整に備えるエージングを行なっているところ。

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ウルトラワイド曲面モニター「FlexScan EV3895」もライン生産に向かないため、セル方式で生産されている。

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製造のキモ! 人の目による画質検査

組み上げられたモニターは、調整・検査工程に送られる。クリエイティブワーク市場向けの「ColorEdge」やヘルスケア市場向けの「RadiForce」が生産される最新のハイブリッド生産方式のラインでは、測色・表示ムラ補正などの各種調整工程が、自動で効率よくそれぞれの箱の中で実施されていた。

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コンベヤーの先の黒いボックスの中で厳しい検査が行なわれる。

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黒いボックスの中ではさまざまな信号を送って、きちんと表示されるかどうかを目視でチェック。遮光された中での作業なので、扇風機が置かれていた。ご苦労様です。

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「ColorEdge」や「RadiForce」は厳密な画質確認が必要なため、遮光された環境での検査が必要となる、また、一部機種では人感センサーなど遮蔽しないとできない検査もある。

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ハイブリッド生産方式のフロアには、検査のために簡易スタンドを取り付けるためだけのネジ締めマシンが稼働していた。従来、簡易スタンドは人が取り付けていたが、重筋作業の軽減、作業環境改善を目的としてマシンを導入しているとのこと。マシンが簡易スタンドを取り付け、取り付け後モニターを持ち上げ、生産用パレットに移動、置いている。すべての検査が終わったところには、簡易スタンドのネジを外すマシンがあり、製品用のスタンドを取り付けて完成する。

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「ColorEdge」や「RadiForce」は、画面全体の均一性を保つための特別な調整を行っているため、調整後、全数検査を行なう。画面上の複数ポイントを自動検査するため、可動式ロボットアームに計測器を装備している。

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エージングをしながら検査を待つモニター。ヘルスケア向けのデュアルタイプのモニターでは、個体差を最小限にするために、チェックしたデータの値が近いモニター同士を組み合わせることができるようになっている。

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頭上をモニターが疾走! 精密機器ならではの搬送方法がユニーク

工場内では、頭上にあるレールを使って組み上げられたモニターが移動していく。導線を遮らないようになっているが、27インチや32インチのモニターが頭の上を移動していくのは、ちょっと面白い。

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検査を終えたモニターは、梱包される1階までエレベーターで運ばれていく。検査後は人の手が触れることがなかった。

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部品の搬送には一部ロボットが使われていた。聞き覚えのある音楽を鳴らしながら、ゆっくりと移動してくる。C棟とS棟間の移動もできるようになっている。

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こんなもの見つけた! 工場内で目を引いた場所いろいろ

部品のストックは、工場周辺の倉庫を含めておよそ2週間分が蓄えられている。戦略的な部品在庫の確保は過去の災害時の教訓からだそうで、部品供給が一時的にストップしても、しばらくは生産を続けられるのだそうだ。

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残念ながら機密上、写真は撮れなかったが、ISO 14644-1の最高ランクであるClass 1 (最上級の清浄度) の厳しい条件をクリアするクリーンルームもあり、その中でもタッチパネルモニターを生産していた。最近発表されたEIZO初となる超高感度カメラ「SSZ-9700」もここで作られているそうだ。

 

廊下が交差する天井には、半円の銀のボールが取り付けられていた。衝突しないようにという配慮だ。

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休憩所には、すでに見慣れてしまったアクリルパネルとソーシャルディスタンスを示す注意書きがあった。工場の感染症対策は厳しく、今回の取材で入る際にも抗原検査が必要だった。

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ショールームには、さまざまなEIZO製品が並べられていた。EIZOのモニターというと「ColorEdge」や「FlexScan」などをイメージするが、航空管制用や船舶用のモニターをはじめ、産業や医療など、幅広い分野で活躍している。

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新人のトレーニングセンターも工場内にある。実際に使用する工具や部品などを使って研修ができる。ベテランのスタッフが指導にあたっていた。

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「映像」にこだわり、高品質・高機能の映像機器の開発と製造を行なっているEIZO。今度訪れる時には、超高感度カメラ「SSZ-9700」の製造現場も覗いてみたい。

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