さまざまなパターンのNDが併用でき、輝度差が大きい場面やスローシャッター表現で欠かせないアイテムとなりつつある角型フィルター。昨今はドロップイン方式の採用などでPL使用時のケラレ問題を解決し、“出目金”と呼ばれる広角レンズに使用できるホルダーも登場。これを機に、一大ムーブメントになりつつある角型フィルターシステムを紹介する。
目次
- 角型フィルターの利点とは?
- 角型フィルター導入のポイント
- 各社の主な100mm幅フィルターシステム
角型フィルターシステムでワンステップ上の風景写真に
角型フィルターのいちばんの魅力は風景写真のフィルターワークをよりクリエイティブにできること。多彩なグラデーションND (GND) フィルターを使って画面内の輝度差を抑えることで白トビや黒ツブレを回避できるほか、高濃度NDフィルターや円偏光 (CPL) フィルターと組み合わせれば、超スローシャッター撮影や色彩コントラストの強調も自在。
ややかさばるうえにセッティングに手間がかかり、さらに価格も少し高めだが、“出目金”レンズにも対応できるし、何より画質劣化の少ない高性能なものが多いのは見逃せない。ワンステップ上の表現を目指したいならぜひ導入を検討してみよう。
NDフィルターワークが格段に向上する角型フィルターシステム
“出目金”レンズでもフィルターワークが可能に
ネジ込み式の円形フィルターは前玉が突出したいわゆる“出目金”レンズには装着できないが、角型フィルターなら対応が可能。ただし、大柄な150mm幅タイプになるので高価になるのと、専用のアダプターリングが必要になるため、対応レンズが限られるのが注意点だ。
他社製ホルダーでもそのまま使える
角型フィルターは100mm幅のものが主流。メーカーが違っても幅は同じなので、ホルダーとフィルターが別々のメーカーでもそのまま使えるのは便利な点だ。マグネット式のH&Yなどもフレームだけを販売しているので、2mm厚なら他社製のフィルターを利用できる。
水平線の位置など構図に合わせて効果を調整できる
濃淡のあるハーフND系フィルターは長方形なので、装着した状態でスライドさせられるのが角型フィルターシステムの特徴。減光する部分と透明な部分の境い目を移動できるため、画面内の効果を与えたい範囲に合わせて位置を調整できるのが強みだ。
山の稜線などシルエットに合わせて回転も可能
レンズに装着したホルダーは自由に回転できるので、効果をかける範囲を斜めにすることも可能。山の稜線や海に突き出した半島などのシルエットに合わせて位置や角度を調整できる。撮りたい構図に柔軟に対応できる自由度の高さは見逃せない。
豊富なパターンでさまざまなシーンに対応
ハーフNDにはグラデーションの幅が狭い「ハード」と広い「ソフト」があるほか、朝日夕日+空といったシーンに便利な「リバース」や、水平線上の太陽を狙うのに使う「センター」、ソフトとハードの両方の効果を1枚で使い分けられる「デュアルパーパス」など、いろいろなパターンのものが選べる。
角型フィルターと円形フィルター、それぞれのメリットとデメリットは?
角型フィルター
<メリット>
■前玉が突出した“出目金”レンズにも対応可
■ハーフNDのバリエーションがとにかく豊富
アダプターリングを併用するので少ない枚数でサイズの違うレンズに対応できる。3枚重ねでもケラレが起きにくく、いわゆる“出目金”レンズでも問題なく使用可能。さまざまなグラデーションのハーフNDが選べて、向きや位置を自由に変えられるのも便利だ。
<デメリット>
■携行性が悪くセッティングに時間がかかる
■ホルダーが高価で揃えるのに出費が大きい
サイズが大きいうえにアイテム点数が多いため、どうしてもかさばってしまう。着脱の手間も多いので、1枚1枚の撮影に時間がかかってしまう。最低でもアダプター、ホルダー、フィルターの3点が必要で、それぞれ2万円以上するものも多いため、初期投資は大きくなる。
円形フィルター
<メリット>
■種類が豊富で価格が比較的安い
■付けたままにでき使い勝手や持ち歩きが楽
高性能タイプや特殊なものは高価になりがちだが、サイズの小さなものなら手が届きやすい。しかも一般的な種類のものはかなり安く買える。レンズに合ったサイズのものが選べるのでキャップやフードがそのまま使える。たいていはケースが付属しているので携行性もいい。
<デメリット>
■部分的な効果が得られるフィルターが少ない
■フィルター径を揃えると高価な場合も
広角系のレンズで2枚重ねだとケラレやすいし、“出目金」”レンズには使えない。ハーフNDなどは種類が少なく、濃度の境い目が画面中央で固定されてしまう。さらにフィルター径がバラバラだとサイズごとに買い揃えなくてはならず、トータルの出費は大きくなってしまう。