さまざまなパターンのNDが併用でき、輝度差が大きい場面やスローシャッター表現で欠かせないアイテムとなりつつある角型フィルター。前回は、角型フィルターの利点を紹介した。今回は、角型フィルターを導入する際のポイントを紹介する。
目次
- 角型フィルターの利点とは?
- 角型フィルター導入のポイント
- 各社の主な100mm幅フィルターシステム
撮影する場面に応じて着脱方式を選びたい
角型フィルターの主流は100mm幅。NDフィルターは正方形、GNDフィルターは100×150mm、厚さ2mmが標準となっている。そのため、フレームなしタイプは別々のメーカーのホルダーとフィルターを自由に組み合わせられるし、フレーム付きのタイプもフレームだけを購入すれば共用できるという高い互換性を備えている。“出目金”レンズの場合は対応するアダプターが用意されているかどうかが重要だが、そうでなければ使い勝手が好みに合ったホルダーを選べばいいことになる。
検討する際、注目したいのはフレームの有無。フレーム付きのタイプはフィルター面に直接触らなくていいので指紋の付着を気にせずに済み、落下したときの衝撃にも強い。フレームのぶん高価になるのは難点だが、安心感を重視したい人にはおすすめだ。
フィルターの装着方法は差し込み式とマグネット式があって、後者は手袋をしていても素早く着脱できるのが強み。だが、重ねて使う際にホルダー側のフィルターをスライドさせるとその上のフィルターも同時に動いてしまう点は気になった。セッティングのスピードを重視するならマグネット式、確実さが大事なら差し込み式と考えればよさそうだ。
また、PLフィルターの取り付け方も各社各様。使い勝手的にはドロップインがいいが、PLだけを使いたいケースが多いならアダプターで取り付け可能なタイプや一体型のほうが運用しやすいだろう。
ホルダーにはマグネット式と差し込み式がある
マグネット式は素早さ重視の朝日・夕日撮影に有利
磁石で吸着するマグネット式 (H&Y、マルミ) はホルダーへの装着がとても簡単で落下の恐れも少ない。スライドさせる操作も軽快だが、複数枚重ねたときは少しずらしにくい。フレームがありガラス部分に触れずに済むので指紋などを気にしなくていいのもありがたい。素早いセッティングが必要な場面で有利。
差し込み式は複数の効果が必要な長時間露光に
ホルダーの溝にフィルターを差し込むタイプ (LEE、Cokin、NiSi、KANIなど) がオーソドックス。フィルターを支持するパーツを交換することで取り付けられる枚数を増やせ、複数のフィルターを使いたい場面で有利。フレームがないタイプは互換性が高く、ほかのメーカーのフィルターも使える。また、価格的にもやや安い傾向。
CPLなど、ほかのフィルターが併用できる
最新の角型フィルターホルダーは、CPLなどほかのフィルターをケラレなく併用できるのが便利なところ。H&YのKシリーズではドロップイン式の専用フィルターが使え、着脱が簡単なうえに操作も快適だ。CPLのほか、CPL+ND、高濃度ND、光害カットフィルターが用意されている。
■H&Y K-Series フィルターホルダー Mark II + ドロップインCPLフィルターの装着例
① H&Yのホルダーはドロップインフィルターに対応している。まずはアダプターをレンズにネジ込み、ホルダーを取り付ける。
② ホルダーのスロットにフィルターを差し込む。完全に押し込んだところでクリックが効くので簡単に抜け落ちる心配はなさそうだ。
③ CPLの効果を変えるにはつまみ部分にあるダイヤルを回せばいい。大型のダイヤルなので手袋をしていても操作しやすい。
④ 取り外すときはつまみ部分を持って上に抜くだけ。つまみ部分を下から押し上げるようにするとやりやすい。
樹脂製と光学ガラス製、それぞれのメリットとデメリットは?
樹脂製
<メリット>
■携行性に優れ、曇りにくく種類も豊富
素材自体が軽いので枚数が増えても重くなりにくい。荷物を軽くしたい山岳撮影などにはありがたい。また、寒冷な条件でも曇りにくいのもメリットだ。ND、ハーフND以外にもさまざまなバリエーションがあるので多彩な効果が楽しめる。
<デメリット>
■傷つきやすくフレアやゴーストが出やすい
硬質樹脂製でもガラスに比べると弱いのでスリキズなどに注意が必要だ。反射防止コーティングがないものが多く、逆光で複数枚重ねたときに内面反射でフレアやゴーストが発生する可能性がある。また、長期間使っていると変色や退色の心配もある。
光学ガラス製
<メリット>
■耐久性や面精度に優れ低反射で傷に強い
光学ガラスや強化ガラスを研磨して仕上げるため面精度が高く、色の偏りなども少ない。経年変化も少ないので長く使える。撥水・防汚・低反射コーティングが施されたものが多く、重ねて使ってもフレアやゴーストが出にくい。また、指紋なども拭き取りやすい。
<デメリット>
■導入コストが高く落下などで破損の恐れ
樹脂製に比べるとどうしても価格が高くなるので不経済になりがち。重さもあるので携行性の面では不利となる。高強度なものも増えたが、とがった石などにぶつかれば割れる可能性は高い。また、寒冷な条件で長時間露光を行なう際には結露の対策も必要となる。