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“あまりに間がいい写真は、かえって嘘になる” 土門拳が各界の著名人を撮影した時代のドキュメント『土門拳の風貌』

土門拳が撮影した人物写真をまとめた書籍『土門拳の風貌』が発売された。

土門拳の風貌

 

昭和を代表する文化人、著名人126名の肖像を集めた。47名は土門自身が著した撮影時のエピソードを添えた。谷崎潤一郎は撮影後、唐紙をピシャリと閉めて憤然と立ち去り、イサム・野口からは欧米で活動する無名で貧しいが志のある写真家たちの存在を聞いた。

「あまりに間がいい写真は、かえって嘘になる。いい写真というものは、写したのではなくて、写ったのである」。土門拳の世界をご堪能あれ。

土門拳の風貌

写真・文 土門拳
体裁 B5判変型・208ページ
価格 2,970円(税込)
発売日 2022年3月30日
発行元 クレヴィス

 

土門拳

土門 拳 (Ken Domon)

1909年、山形県酒田市生まれ。中学時代より画家を志すが、家の事情で断念。1933年に営業写真館である宮内幸太郎写真場の内弟子となるが、報道写真家を目指し、1935年、ドイツから帰国した名取洋之助が設立した日本工房に入社。戦後は絶対非演出の「リアリズム写真」をカメラ雑誌などで提唱し、写真界に大きな影響を与えた。1958年に写真集『ヒロシマ』(研光社) を刊行、国内外で高い評価を得る。筑豊炭鉱地帯の窮状を取材した1960年刊行の写真集『筑豊のこどもたち』(パトリア書店) は10万部を超えるベストセラーとなる。その後、仏像や寺院、古陶磁などの伝統工芸品や風景など、一貫して日本を撮り続けた。1990年、逝去。
→ 土門拳記念館

 

〈文〉市井康延