世界各地を取材し、数多くのドキュメンタリー作品を発表してきた写真家・大石芳野さんの書籍『わたしの心のレンズ 現場の記憶を紡ぐ』が発売された。
コロナ禍で取材の予定が全てキャンセルとなったことで、大石さんは過去の取材や出会った人々を思い起こした。父親が政府側の高官で娘は解放勢力に身を投じた家族や、アウシュビッツで起きた秘史などが語られる。
どんな理由でも暴力は暴力を生み、憎しみは連鎖する。そして被害を受け、その傷を抱えて生きていくのは名もなき人々だ。今だから確かめておきたい歴史が綴られている。
大石芳野『わたしの心のレンズ 現場の記憶を紡ぐ』
体裁 新書型・264ページ
価格 990円(税込)
発売日 2022年6月7日
発行元 集英社インターナショナル
大石芳野 (Yoshino Ohishi)
写真家。日本大学藝術学部写真学科卒業。戦争、内乱後の市民に目を向けたドキュメンタリー作品を多く手がけ、ベトナム戦争、カンボジアの虐殺、スーダンのダルフールの難民、広島、長崎の被爆者への取材を続ける。またニューギニアなど世界各地の人々の暮らしに寄り添う視線からの写真作品にも定評がある。著書に『小さな草に』(朝日新聞社)、『沖縄 若夏の記憶』(岩波書店)、写真集に『長崎の痕』『戦争は終わっても終わらない』(共に藤原書店)、『戦禍の記憶』(クレヴィス) など。元東京工芸大学芸術学部教授 (現在は客員教授)。
〈文〉市井康延