伊達淳一のレンズパラダイス『CAPA』2023年6月号 アザーショット【後編】
今回は、ソニーとシグマから発売されたEマウントの50mm F1.4をピックアップ。「シグマ 50mm F1.4 DG DN | Art」は、初代「50mm F1.4 DG HSM | Art」の描写性能をより高めつつ高速AFにも対応し、さらなる進化を遂げたスタンダードレンズだ。その描写力をチェックした。
- ソニー FE 50mm F1.4 GM 実写チェック
- シグマ 50mm F1.4 DG DN | Art 実写チェック
SIGMA 50mm F1.4 DG DN | Art
[マウント] ソニーEマウント、Lマウント [最大径×長さ] Eマウント φ78.2×111.5mm、Lマウント φ78.2×109.5mm [重さ] Eマウント 660g、Lマウント 670g [レンズ構成] 11群14枚 [最短撮影距離] 0.45m [最大撮影倍率] 約0.15倍 [絞り羽根枚数] 11枚 [フィルター径] φ72mm
参考価格 137,500円 (税込)
画面周辺部にある顔から解像性能の高さがうかがえる
全身に近いポートレート撮影でも、絞り開放で背景がここまでぼけるのが、標準ズームとの大きな違い。顔が画面周辺にあるにもかかわらず睫毛や髪の毛がビシッとシャープで、解像性能の高さが感じられる。背景の木漏れ日のボケの輪郭に緑の色付きがわずかに浮いているが、50mm F1.4開放としては少ない部類だ。
ネコの毛並みをスムーズに再現
横浜関内の猫カフェ Miysisにて。開放F1.4なので、暗い店内で被写体ブレが起きにくいシャッタースピードで、ISO感度を抑えて撮影できるのが魅力。軸上色収差による色付きはほとんど気にならない範囲。ボケの繋がりも非常にスムーズで、猫の毛並みの微ボケもそれほどざわついていない。猫の足元や奥の椅子のボケ方も絶品だ。
微ボケで起こりやすいざわつきも気にならない
光る葉っぱや砂利などコントラストが高い前景や背景で、微ボケをチェックしてみた。解像性能が高いレンズは、ピント面は非常にシャープなぶん、前景や背景の微ボケが硬く、うるさくなりやすいが、このレンズは柔らかくはないものの、それほどナーバスに感じることはない。ただ輝度差の大きな境界部に、軸上色収差によるフリンジや色付きが多少残っている。
非球面レンズ特有の輪線ボケはほとんど感じない
非球面レンズを3枚使用しているが、ガラスに反射した街灯のボケを見ても、非球面レンズ特有の輪線ボケはほとんど感じられない。オブジェの微ボケを見ると、被写体のコントラストがあまり高くないので、非常に滑らかにボケている。
ピントのピークから少し外れるとコマ収差が出現する
ライブビュー拡大で周辺の点光源を見ながら最良のピント位置を探れば、絞り開放でも周辺のコマ収差はほとんど目立たなくできる。ただし被写界深度内でも、ピントのピークを少しでも外すとコマ収差が現れる。この写真はピントが合っているクレーンの衝突防止灯は点像に写っているが、氷川丸の電飾やベイブリッジの左側の街灯はコマ収差が目立っている。
※参考価格は記事執筆時点の量販店価格です。