吉村和敏さんの写真集『美しい世界をめぐる旅』が発売された。
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吉村さんは20歳から世界を巡り、心に響く風景を写真に収めてきた。彼の写真の魅力は、何と言っても色彩の美しさだろう。それは初めて撮影地として選び、長い時間を過ごしたカナダ、プリンス・エドワード島の自然や街並みに磨かれたはずだ。
冬のストックホルムでは道端に置かれた自転車を被写体に選ぶ。濃紺の車体に青い子ども用シートが取り付けられ、サドルとハンドルからは白い氷柱が伸びる。街にあっても多くの人が素通りする光景だが、彼の目を通して見ると、この青を基調にしたイメージが実に印象深い。
このページに至る前には夜景が組まれ、雪の風景が写っている。自転車の写真の対には雪が積もった樹木に、無数の青と白の目玉を吊るしたカッパドキアの祭りを置く。そうしたイメージの共鳴もこの写真集の見どころの一つだ。
吉村さんは本書を編むにあたり、海外で撮影した全ての写真を見直し、500点ほどに絞り込んだ。何度も写真を組み変え、ベストな流れを見つけていった。トルコの岩窟教会で撮影申請を行なうと、許されたショット数は1カットのみだったそうだ。巻末にはそうした旅を振り返るエッセイも収載した。
吉村和敏『美しい世界をめぐる旅』
体裁 A4判変型・112ページ
価格 3,960円(税込)
発売日 2023年6月30日
発行 フォトセレクトブックス
吉村和敏 (Kazutoshi Yoshimura)
1967年、長野県生まれ。1年間のカナダ暮らしをきっかけに写真家としてデビュー。2000年のデビュー作『プリンス・エドワード島』(講談社) で注目を集める。以後、東京を拠点に世界各国、国内各地を巡る旅を続けながら、意欲的な撮影活動を行なっている。「最も美しい村」シリーズをはじめ、40冊以上の写真集を出版。2003年カナダメディア賞大賞、2007年日本写真協会賞新人賞、2015年東川賞特別作家賞受賞。
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〈文〉市井康延