オカダキサラさんの写真集『新世界より』が発売された。
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街で起きる瞬間の出来事を写真に捉える。かつて注目された梅佳代さんが動的、もしくはスラップスティック的なのに対し、オカダさんは静的でコンポジションの妙がある。鏡に映り込んだ人の姿と絵画展のポスターの対比、エスカレーターに整然と並ぶ人の列など、スナップショットながら完璧に配置された構図が目を引く。
写された人々は無防備であるがゆえに、素の表情や感情を露わにしてしまう。川原でシートに座る3組のカップルの背後には、無骨な3つの箱が唐突な感じで存在し、シュールさも醸し出す。
オカダさんは大学時代に偶然撮ったスナップ写真をきっかけに、街を撮る楽しさを知った。就職活動で自らが社会に役立つ人材かを執拗に問われる中で、自分を見失いかけた。そのとき救いになったのが、自身が撮ったスナップだった。
街の人々が見せる一瞬の光景はコミカルだったり愚かだったりもするが、心に優しく届き、生きることを静かに肯定してくれる。その視点が彼女のスナップの魅力だ。
オカダキサラ『新世界より』
体裁 B5判変型・200ページ
価格 3,960円(税込)
発売日 2024年1月12日
発行 ケンエレブックス
オカダキサラ (Kisara Okada)
1988年、東京生まれ。武蔵野美術大学在学時の課題をきっかけにストリートフォトを撮り始める。2012年、武蔵野美術大学造形学部映像学科卒業。2014年、東京写真専門学校研究科卒業。主な受賞歴に、2023年 第1回キヤノン GRAPHGATE優秀賞ほか。2023年に初の作品集を刊行。「街が見逃した奇跡の現場」をテーマに写真作品の制作を続けている。
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〈文〉市井康延