水野克比古さんと水野秀比古さんの写真集『京都の意匠 窓』が発売された。
■収録内容 (タップ/クリックで拡大します)
窓は光や空気、外の景色を得るため、壁や屋根に設ける開口部を指す。が、一説によると平安時代ころまでは寺院建築だけに付けられていたそうだ。その後は外に広がる借景を楽しむほか、意匠をこらした窓も作られるようになった。本書はその窓に着目し、京都ならではの魅力を紹介していく。
嵐山 祐斎亭や瑠璃光院の借景は、季節によって全く違う美しさを見せる。窓というフレームに収めることで、密度が高まるからか、その風景に圧倒、翻弄されるはずだ。織田信長の菩提寺である総身院をはじめ、ハート形に設えた窓が多く見られるのに奇異な思いを抱いたが、これは日本古来から使われている猪目という図柄らしい。
雲龍院にある「色紙の窓」は、4つ並んだ障子にスクエアな窓が開けられ、全く違う景色が出現する。それは予想外の驚きで、風景が持つ意味合いに想像が広がる。それは良質なアートに触れたのと同じ喜びであることに気づく。未知なる魅力がまだまだこの街にはある。
水野克比古・水野秀比古『京都の意匠 窓』
体裁 170×170mm・144ページ
価格 2,200円(税込)
発売日 2024年4月18日
発行 光村推古書院
水野克比古 (Katsuhiko Mizuno)
1941年、京都市上京区に生まれる。同志社大学文学部卒業。東京綜合写真専門学校研究科を経て、1969年から京都の風景・庭園・建築などの撮影を続ける。2000年、西陣の地に町家を修復し水野克比古フォトスペース「町家写真館」を開設、ミュージアムとして一般公開 (要予約) している。著書は『心象の京都』『京都雪月花』『庭園の京都』『京・古社寺巡礼シリーズ (全15巻)』『京都名庭園』『京都・禅寺の名庭』『京都坪庭拝見』『京町家拝見』『京都桜旅』『京都紅葉旅』『京都坪庭』『京都秘蔵の庭』『京都町家の坪庭』『京 古都の情景』ほか、210冊を数える。また、電子出版『京都桜百景』『京都紅葉百景』も手がけている。第33回京都府文化賞功労賞受賞。日本写真家協会会員。
水野秀比古 (Hidehiki Mizuno)
1968年、京都市左京区に生まれる。京都先端科学大学卒業。京都に内在する多彩な情景や四季の移ろい、歴史文化や意匠を見つめ続け、神社仏閣や庭園・自然風景を中心とした作品を発表している。著書は『京都桜夢紀行』『京都絶景庭園』『京都花鳥風月』『京都紅葉旅』など多数。水野克比古フォトスペース「町家写真館」副館長。
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〈文〉市井康延