キヤノンは、EOS Rシリーズのフラッグシップカメラ「EOS R1」を2024年7月17日に発表した。発売は11月の予定で、価格はオープン。参考価格は108万9000円(税込)となっている。5月15日の開発発表では、2024年中の発売を目指していることを公表していた。
■新開発のイメージセンサーと映像エンジンを採用
イメージセンサーは、新開発の有効約2420万画素のフルサイズ裏面照射積層CMOSセンサー。画像処理エンジンには新開発の映像エンジン「DIGIC Accelerator」を採用、さらにディープラーニング技術を融合することで、高速解析AF、高速連続撮影、高速読み出し、高画質などを実現している。
データ処理部分と画素部分を分離した積層構造のセンサーにすることで、高速のデータ読み出しができ、電子シャッターのローリングシャッター歪みの低減などを実現している。
映像エンジンシステムは、「DIGIC X」に「DIGIC Accelerator」を追加したEOS史上もっともパワフルな新開発のエンジンシステムを搭載する。「DIGIC Accelerator」にデータの読み出しと解析作業を振り分けることにより、これまで実現できなかった高速撮影や高速で解析・判断するAF、静止画と動画の同時撮影などを可能にする。AE(自動露出)やWB(ホワイトバランス)の精度も向上している。
■さらなる高画質化を実現
・カメラ内アップスケーリング
常用ISO感度は最高ISO102400を実現する。加えてJPEG撮影時には画素数を4倍の9600万画素に拡大する「カメラ内アップスケーリング」により、高解像度での記録が可能だ。「ニューラルネットワークノイズ低減」を組み合わせることで、パソコンレスで画質のブラッシュアップができる。また撮影した画像をトリミングと同時に「カメラ内アップスケーリング」を行うこともできる。
・ボディ内手ぶれ補正
すべてのRFレンズ、EFレンズで5軸手ぶれ補正に対応しており、手ぶれ補正機構を搭載したRFレンズ装着時には最高中心8.5段の協調制御を実現する。また対応するレンズでは、広角レンズ特有の画面周辺部のぶれを抑制。画面全体の画質向上や幅広いシャッター速度での撮影を可能にする。アルゴリズムの改善と新設計のISメカ機能を採用したことで、「EOS R3」よりも進化したぶれ補正効果が期待できる。
・GDローパスフィルター
ノイズの原因となる画素ピッチよりも細かい高周波数の成分を自然にぼかすことができる「GD(Gaussian Distribution)ローパスフィルター」を採用する。 輝度モアレや偽色を抑制し、解像感を向上をさせる効果がある。
■被写体を捉え続ける高精度で安定した「Dual Pixel Intelligent AF」
「デュアルピクセルCMOS AF」に初めて対応した「クロスAF」を採用し、水平形状の被写体に対する被写体捕捉精度が向上した。さらにディープラーニング技術を基に進化したAFアルゴリズムによって、ピント合わせの難しかったシーンでも高精度のAFを実現する。トラッキング交錯対応、上半身検知、頭部領域を推定する障害物回避などにより、類似する被写体が交錯するシーンでも被写体を逃さず追い続けることが可能になっている。
・視線入力
「EOS R3」よりも使いやすさを向上させ、入力精度をアップした視線入力機能を搭載する。新開発の小型光学系の採用と検出アルゴリズムの刷新により、検出フレームレートが約2倍に向上した。なお、視線入力は静止画撮影だけの機能となっている。
・ファインダー
943万ドットのEVFで、最大倍率0.90倍、120fpsの高倍率ファインダーを採用。より自然でなめらかなファインダー表示を実現する。ファインダー表示は、ブラックアウトレスに加えて、「EOS R3」と同様にブラックフレーム挿入もできる。視線入力用のアイカップも用意されている。
・アクション優先
サッカー、バスケットボール、バレーボールの3競技では、特定のアクションをしている被写体を認識し、その被写体にAFフレームを移動させるAF機能を搭載する。
・登場人物優先AF
複数の人物の中から優先する被写体を追尾する「登場人物優先AF」は、「EOS R3」よりも追尾性能が向上。顔が斜めの状態でも両目と鼻、口が見えていれば、AFの乗り移りを抑制できるほか、登録人物の優先度を設定することも可能だ。
・トラッキングON/OFF瞬時切り替え
メニューには、トラッキングを瞬時に切り替えられる項目を設置する。トラッキング範囲はAFエリアと組み合わせて設定することができ、画面全域でのトラッキングが可能。誤って検知したく無い場合には、全域とトラッキングOFFも選択できる。またAF設定のセットを複数登録しておくこともできる。
・フォーカスプリセット
望遠レンズにのみ搭載されていたフォーカスプリセットが、すべてのAF対応RFレンズで使用可能になった。カメラのボタンやレンズのL.Fnボタンで操作できるようになっている。
・2段階のAF ONボタン
EOSシリーズで初となる2段階のAF ONボタンを採用しており、シャッター半押しと全押しで別の動作を割り当てることができるようになっている。AFしたままで動作を変えたり、静止画と動画で別の設定を割り当てることもできる。
■自由度が拡大したドライブ機能
電子シャッター時で最大約40コマ/秒、メカシャッター時には最大約12コマ/秒の連続撮影が可能だ。またボタンカスタマイズで異なる連写速度を設定していれば、連写速度を変更することができる機能も搭載されている。
・静止画プリ連続撮影(Pre REC)
シャッターボタン全押し前の画像を記録する「プリ連続撮影」は20コマ/秒で、撮影枚数は最高連続撮影速度で0.5秒間で撮影できる枚数に固定される。JPEG、RAWともに撮影が可能で、連続撮影速度を下げることで記録できる時間を長くすることができる。また動画撮影時には撮影前の5秒間または3秒間の記録が可能だ。
・動画と静止画の同時記録
フルHD60p動画とJPEG静止画(16:9、約1779万画素)の同時記録ができる。
■プロの使用に応えるタフなボディ
マグネシウム合金制の外装に防塵・防滴性能を備えるほか、EVFの防曇構造や放熱構造などの機能も搭載して、プロのニーズに応える仕様になっている。
すべてのダイヤル内部の検知機構を非接触とすることで、摩擦が起きる部品を減らして、信頼性を向上させている。
グリップには新パターンとなるクロスパターンを採用し、高いグリップ力を実現。
マルチコントローラーは「EOS R6 MarkII」と同形状のものになっている。
「視度調整ロック」機構など、誤動作を防ぐロック機構が追加されている。
バッテリーは「EOS R3」「EOS-1D X Mark III」でも使用されている、大容量のリチウムイオンバッテリー「LP-E19」を採用する。
ペンタ部脇には、動画撮影中を示すタリーランプも新設されている。
■操作性を向上させるカスタマイズ機能が充実
・再生ボタンカスタマイズ
再生ボタンに撮影時と再生時で別の機能を登録することができる。
・2段階のAF ONボタン
AF ONボタンが2段階になり、さまざまな機能の組み合わせが可能。指を移動させずに被写体の捉え直しができるなど、AF関連の操作性が向上している。
■高速になった通信機能
無線LANはWi-Fi 6E/6、有線LANは2.5G Base-Tの高速通信に対応する。新アプリ「Content Transfer Professional」に対応しており、スマートフォン経由で画像を高速転送することが可能だ。
■ Cinema EOSとの親和性が増した動画性能
Cinema EOSと共通の「カスタムピクチャー」をEOSシリーズで初搭載したことで、Cinema EOSとの親和性の高い絵作りができるようになった。また撮影時にLUT(ルックアップテーブル)の適用が可能になっている。
Cinema EOSの標準表示機能「フォルスカラー」と「ゼブラ表示」を搭載し、露出データを直感的に把握することができるようになっている。 Cinema EOSと併用する場合でも同じ機能で露出合わせが可能になった。
動画撮影時の常用感度はISO32000。ノイズリダクションのアルゴリズムの改善により「EOS R3」以上のノイズ低減が図られている。
6K60PのRAW画像の内部記録に対応しており、ローリングシャッター歪みは「EOS R3」の半分以下に抑えられている。
EOS R1の主な仕様
有効画素数 最大約2410万画素
撮像素子 フルサイズ裏面照射積層CMOSセンサー
マウント キヤノンRFマウント
ISO感度 (静止画撮影時) ISO 100〜102400 (拡張 ISO 50相当、409600相当)
ISO感度 (動画撮影時) ISO 100〜32000 (拡張 ISO204800相当)
シャッター速度 (静止画撮影時) メカ/電子先幕シャッター 1/8000~30秒、バルブ、電子シャッター 1/64000~30秒、バルブ
シャッター速度 (動画撮影時) 1/8000~1/8秒
ファインダー EOS初 0.66型 約944万ドット 約0.90倍 OLEDカラー電子ビューファインダー
画像モニター 3.2型 約210万ドット TFT式カラー液晶モニター
記録媒体 CFexpressカード (2.0 / Type B / VPG400対応)のデュアルスロット
大きさ (幅×高さ×奥行き) 約157.6×149.5×87.3mm
質量 約920g (本体のみ)、約1115g (バッテリー、メモリーカードを含む)