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高校写真部“日本一”を目指して!「写真甲子園2024」4日間の熱き戦いをレポート

北の大地で撮りまくる写真一本勝負

2024年7月30日から8月2日に北海道・東川町で開催された、第31回全国高等学校写真選手権大会「写真甲子園2024」。北の大地を舞台に高校生カメラマンが駆け抜けた本戦大会をレポートする。

写真甲子園2024レポート

「心・技・眼」がキーワード! 3人1チームで挑む撮影競技

今年で31回目を迎える全国高等学校写真選手権大会「写真甲子園」は、過去最多の604校が予選に参加。初戦とブロック審査会を勝ち抜いた北海道から沖縄までの18校が、7月30日に写真の町・北海道東川町に集まった。初出場が7校というフレッシュな顔ぶれとともに、連覇の経験がある神島高校 (和歌山) と真和志高校 (沖縄) も本戦へやってきた。

写真甲子園が一般的な写真コンテストと異なるのは、まず3人1組のチーム戦であること。機材や撮影条件はみんな同じ。そして4日間の大会期間中に撮影からセレクト、さらに発表まで行なうライブということ。選手たちが撮影場所を知らされるのは前夜。慣れない環境と先の読めない状況で、写真のテクニックだけでなく発想力や行動力、協調性などあらゆる能力が求められる大会なのだ。

大会のルール

選手たちの使用カメラ「キヤノンEOS RP」

EOS RP
フルサイズEOS史上、最小・最軽量を達成したエントリーモデル。軽快さや使いやすさがウリだが、階調の良さや高感度での低ノイズなど、画質は上位機種にひけをとらない。

■主なルール
エントリーできるのは1校につき1チームのみ。本戦は選手 (生徒) 3名と監督 (顧問) が出場するが、監督がカメラに触れたり、撮影の指示や確認をしたりするのは禁止。明確にアドバイスできるのはセレクト会議中の20分間に限られるので、選手の自主性が尊重される。変更できるカメラ設定はピクチャースタイル、ホワイトバランス、HDRのみで、撮影後のトリミングやレタッチはできない。露出や構図も含めて現場でのシビアな判断が求められる。

■使用機材
各校にキヤノンマーケティングジャパンから「EOS RP」と「RF24-105mm F4-7.1 IS STM」を3セットのほか、「RF24-240mm F4-6.3 IS USM」「RF35mm F1.8 MACRO IS STM」、スピードライトなどが貸与される。記録メディアは貸し出された16GB・9枚のみ大会で使用可能。三脚やレフ板などは自由に持ち込める。

■撮影テーマ
3日間で2回、それぞれ8枚組の作品を提出する。撮影初日に提出するテーマは「またたき」、そして3日分の写真から選んで最後に提出するのは「たいせつ」と、テーマが与えられる。このテーマをどう解釈して撮影し、組むかがポイントになる。

■審査について
代表審査委員の野村恵子さんをはじめ、中西敏貴さん、須藤絢乃さん、鵜川真由子さん、浅田政志さんに、ゲスト審査委員として大森克己さんを加えた写真家6名で審査。テーマ性やコンセプトの「心」、技術力や構成力の「技」、表現力や独創性の「眼」をそれぞれ10点満点で採点。うまく撮れた写真を並べただけでは評価されず、高いレベルの表現力が必要となる。

テーマは「またたき」と「たいせつ」

声を掛けてコミュニケーションをとって、知恵や技術を振り絞って全力で撮影!

写真甲子園2024レポート

1日目 (7月30日)

開会式&ホームステイ

東川町農村環境改善センターで開会式。初出場となる徳島科学技術高校の國清愛弥選手が選手宣誓を務めた。この日は各校とも東川町内のご家庭へホームステイ。コロナ禍で中断していたが今年ついに復活。家族やスナップを撮る絶好の機会でもある。

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2日目 (7月31日)

【1stステージ】旭岳・姿見の池周辺 (東川町)

旭岳ロープウェイに乗って、いざ天空の庭へ……のはずが、あいにくの濃霧。マクロで高山植物を撮る選手もいれば、霧を白バックに見立てて登山者のポートレートを撮る選手も。最初から厳しい条件だが、これが写真甲子園でもある。

写真甲子園2024レポート

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一瞬だけ晴れ間がのぞいた。その瞬間を逃さず捉えた作品もあった。

【2ndステージ】美瑛町

旭岳から下山して一転、観光客も目立つ美瑛駅の周辺が舞台に。大会本部のそばで座り込んでいる選手たち、いったい何をしているのかな……と覗き込んでみたら、スマホライトを照明に、鏡の上の水滴をマクロレンズで撮影していた。

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クセの強い古道具屋さん。83歳のご主人はフレンドリーで「ほら、中にも入って入って!」

3日目 (8月1日)

【3rdステージ】旭川市

北海道第2の繁華街・旭川駅前から、道北アークス大雪アリーナ周辺までの広範囲が指定された。駅前で通行人に声を掛けても、断られ続ける選手が多い中、強豪・神島高校の選手は野球の話題でしっかりと男性の心を捉えていた。撮影後は3人で吟味。

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【4thステージ】東神楽町

町の中心街から畑が広がる丘陵地帯、さらに旭川空港周辺と、バラエティーに富んだ撮影エリアに移動。日没までの時間設定で、天気がよければ美しい夕焼けが撮れたはずだが、小雨模様で選手たちも疲れが見え始め……。しかしここが踏ん張りどき!

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バリアングルモニターは柔軟な撮影スタイルを持つ高校生には必需品。

4日目 (8月2日)

【5thステージ】東川町

最後は大会の主会場でもある東川町の中心街。町内を巡って選手を運ぶバスの1便は午前6時40分に宿舎を出発するが、その前から動き始めてもよい。10時に農村環境改善センターで全員集合して撮影は終了。ファイナル審査会に向けて、総仕上げともいえるセレクト会議に臨む。

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多くの選手は早朝から撮れるお店をリサーチ済み。そのひとつ、パン屋さんにて。

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機材メンテナンス

各日とも撮影終了後はキヤノンによる機材のメンテナンスが受けられる。短時間でクリーニングや点検を済ませ、機材を選手へ戻すスタッフたちの手際の良さに感服。

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セレクト会議

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2時間のセレクト会議が2日目夕方と4日目昼の2回ある。撮った写真をセレクトした後、各校に貸し出された「キヤノン PRO-S1」でプリントし、テーマに沿った8枚組の作品を制作する。

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途中に20分間のテクニカルタイムがあり、その時間だけ監督が自由にアドバイスすることができる。

公開審査会

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3日目午前と4日目午後に公開審査会を実施。各校1分間のプレゼンテーションの後、8枚組の作品を上映。その後、審査委員が講評や選手への質問を行なう。大森さんの「このあたりの開拓地に初めて住んだ人って、なぜここへ来たんだろう? それを考えると面白いし、写真が変わるかもね」というコメントが印象的だった。

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「過去一、緊張した」という選手も。4日間の撮影の集大成!
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代表審査委員・野村恵子さん
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ゲスト審査委員・大森克己さん

厳しい条件や想定外を味方に変えるのは3人の絆だ!

今年も例年通り、撮影ステージが3日間で全5回設けられた。しかし、セレクトや公開審査会の間は晴れているのに、撮影になると曇ったり小雨だったりというあいにくの空模様。1回目の審査会では4校、2回目では6校がモノクロ作品を発表したのも天候の影響を感じさせた。

その公開審査会で発表するのは8枚組の作品。そこでカギを握るのがチームワークだ。3人一緒に行動する学校があれば、役割分担を決めて別れて行動する学校もある。正解はないが、いずれにしても最終的に作品は3人の共作となる。

優勝した白石工業高校がファースト審査会に提出した作品は、障害者支援施設を取材した力作。しかし3人で施設を訪れたものの、2人はほかの被写体を狙おうと離脱。残った1人だけの作品で審査に挑んだ。そこには1人でまとめられる実力だけでなく、お互いの信頼関係もあったはず。

開会式で代表審査委員の野村恵子さんが「3人が仲良くなるというより理解し合って」と語れば、お互いへの遠慮が見える作品に対してゲスト審査委員の大森克己さんが「一度ケンカしてもいいんじゃない? 徹底的に話し合おうよ」と辛口の講評をする場面もあった。

ファースト審査会ではほかの審査委員からも厳しい講評が聞かれたが、それをヒントや反省点にした学校も多く、ファイナル審査会の作品はどの高校もギアを一段も二段も上げた印象を受けた。また初出場の武蔵村山高校が優秀賞のほか、町民投票、選手互選、審査委員が印象的な一枚を選ぶキヤノンスピリット賞を受賞。会場にどよめきが起きた瞬間は、30年以上の歴史に新しい風が吹いたようにも感じた。

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