9月17日(火)、青山ブックセンター本店にて、写真家・青山裕企さんが元SKE48の須田亜香里さんとトークショーを行った。
タイトルは「コンプレックスはどう手なづければいいか?」。これは、7月に青山さんが出版したエッセイ「コンプレックスは武器になる。」(技術評論社)の刊行記念イベントの一環で行われたもの。そして須田亜香里さんと言えば、「コンプレックス力 ~なぜ、逆境から這い上がれたのか?~」の著者でもあり、須田さんのフォトエッセイ「がんこ」を青山さんが撮影しており、青山さんたっての希望で今回のトークショーが実現したのだ。お客さんからの質疑応答もありの約1時間のトークショー。CAPA CAMERA WEBでは、写真に関するトピックスを中心にレポートする。
青山さんが「須田さんは場を作れる人」と評するように、終始和やかに笑いに包まれた2人のトークショー。
「ずっと女性を撮ってきて、こんなに可愛くて美しいのに、なんで皆コンプレックスに苦しんでいるんだろう、と思う日々で少しでも背中を押せたら」と思いながら、実は企画立案してから10年かけて、はじめて女性に向けて本を書いたという青山さん。本書を読んだ須田さんは、「女性も男性もコンプレックスを抱えている人はもちろんですけど、もっとステキになりたいなぁと思うすべての女性に読んでもらいたい。とくに“鏡の中の自分好きですか?”の問いかけがあるページとか」と、オーディションを受かってアイドルになったはずなのに視聴者から「ブス」と言われたことや、過去に自分がすごく苦しんだ経験やエピソードなどを踏まえて感想を語っていた。
コンプレックスについて青山さんは、コンプレックスをネガティブに捉えているのはおおよそ自分自身だけであって、周りから見たらそんなことないよって思うけれども、本人にはネガティブにしか感じられない。でも撮る側からすると、そこが魅力的に見えると解説。とくに須田さんについては、「撮影もすごく印象に残っていて、いろいろ動いてくれていろんな表情もしてくれる。なんか1枚1枚撮る度に違うんです。どうしてもアイドルだとキメ顔になりがちだけどそういうのがないっていうか。どの角度でどの瞬間を切り取っても、すごい魅力が詰まっている感じがします。もちろん撮影中もすごく楽しくお話もしてくれて、どこをどう撮っても間違いないみたいな感じがあります。本当にこれは私個人の好みの話なんですけど、須田さんを見て昔からブスとは思わないっていうか、かわいいと思ってるんです。だから、周りからそんなふうに言われるのをなんでだろうって思っていました。かわいいっていう言葉は幅が広すぎる言葉なんですけど、かわいい女の子とかキレイな女の子を撮るというよりは、目の前にいる女の子の中にあるかわいさとか美しさ、キレイさを探すっていうのが、撮る側としては面白いことだと思うんです」と、撮影時の様子も含めて須田さんの魅力を絶賛。
青山裕企プロフィール
写真家。 1978年、愛知県名古屋市生まれ。2002年、自転車日本縦断と世界2周の旅の道中で、写真の道で生きることを決意。2005年、筑波大学人間学類心理学専攻卒業(卒論テーマ:テンションの上げ方)後、上京して写真家として独立。2007年、キヤノン写真新世紀優秀賞(南條史生選)受賞。ギャラリー・出版レーベル・オンラインコミュニティを運営。現在、東京都在住。『ソラリーマン』『SCHOOLGIRL COMPLEX』『少女礼讃』など、“日本社会における記号的な存在”をモチーフにしたポートレート作品を制作。2009年より写真集などの著書を刊行、現在100冊を突破(翻訳版も多数)。『SCHOOLGIRL COMPLEX』は、2013年に映画化、写真集は累計10万部以上のベストセラーとなる。
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須田亜香里プロフィール
2009年11月にSKE48第3期生としてメンバーに加入。SKE48チームEリーダーを務めた。2016年・2017年の選抜総選挙では2年連続「神セブン」に選ばれ、2018年には遂に2位の座を獲得。握手会での神対応が話題で「握手会の女王」とも呼ばれている。また、持ち前のトーク力でバラエティやワイドショーに出演。SKE48を2022年秋に卒業し、現在はラジオや新聞連載等、多方面で活躍中。
【X】https://x.com/dasuwaikaa
【Instagram】https://www.instagram.com/akarisuda/
また、小さいころに両親や周囲に悪気なく言われたことがずっと心に残って、言われた当人のコンプレックスになることがあるという。これについて須田さんも、幼稚園のときに、“はないちもんめ”という遊びで、 誰にも選ばれなかった(「アカリちゃんが欲しい」って言われなかった)のが、コンプレックスとして自分の中にあったという。なのでグループに入ってからは、“選ばれる人に絶対なりたい”という逆の作用が働いたそう。「抱いているコンプレックスが自分をネガティブにしていくのではなく、逆の作用で底力をくれたっていう経験があって、コンプレックスのおかげで自分が良くなれたり、反動で頑張れた部分に目を向けられるようになった。コンプレックスによってグループで絶対選ばれる人になりたいって思えたことが成功体験になったから、いろんなコンプレックスがコンプレックスじゃなくなっていたような気がします」と、コンプレックスを成功体験にすることで克服したエピソードを語ってくれた。
トーク中、青山さんがいつも持ち歩いている1枚だけ撮るフィルムカメラで須田さんを撮影する場面も。初対面の人を和ませる撮り方として「じゃんけん」をするテクニックも披露してくれた。しかもただじゃんけんをしている表情を撮るのではなく、須田さんがじゃんけんをして勝った!と把握する瞬間の喜ぶ表情を撮影するという青山さんならではのテクニックも。
須田さんから「プライべートでカメラを持ち歩きますか?」という質問に対し、青山さんは以前は作品撮りをするときしか持ち歩かない時期もあったとか。「でも人を撮るってなんだろうっていうことをいろいろ考えたとき、まずは人を撮ることっていうのは人を知ることになる。カメラを向けるとどんな顔するんだろうとか、もちろんそのときにお話もできるし。人を知りたいから人を撮りたいんだなってこと。もうひとつは、人を楽しませるために人を撮るんだなって思いました。どんな人を撮るときも、その人に楽しんでもらうことを心がけるといい写真にもなるし、結果こっちも楽しくなるってことを考えたら、いつもカメラを持ってた方がいいよねってなって。人を撮ることは、人を知りたいから撮る、人を楽しませたいから撮るんです」。
須田さんは、心が動いた瞬間やおいしいものを食べた瞬間なんかをスマホで撮ることが多いそう。位置情報もONにして撮っているから、後から見返した時に場所もわかる。何月何日、私はどこにいて、あそこで美味しいものを食べたんだなとか、月がキレイで感動したんだなとか「振り返ったら特別な日が増えている」という素敵な写真の撮り方を教えてくれた。
気が付けばあっという間の1時間。レポートしたのはほんの一部だが、「コンプレックス」というテーマを通して、著書に書かれていないことや、青山さんのカメラマンとして写真に向き合うスタンスも垣間見ることができ、また須田さんが過去コンプレックスやネガティブなものを持ちながら、それを乗り越えたり、いい意味での諦めることで今のすてきな生き方に繋がる部分など、人の生き方が感じられる興味深いトークショーでした。
「コンプレックスは武器になる。」
青山裕企著
体裁:四六判 128ページ
定価:1,540円(税込)
発行:技術評論社