『CAPA』本誌連動企画として毎月公開している、月例フォトコンテスト「学生の部」ピックアップ作品レビュー。今回は『CAPA』2024年12月号で惜しくも選外となった作品の中から、審査員の鵜川真由子先生が目を留めた “気になる作品” をピックアップしてアドバイスします。さらなるレベルアップのためのヒントが満載です!
〈講評〉鵜川真由子
「あなたの視線」
鈴木えみ (16歳 / 新潟県長岡市 / 中越高等学校)
非常に趣のある素敵なポートレートです。暗いトーンでの描写という狙いはいいのですが、今回は少し暗すぎてしまったため、せっかくの写真がよく見えなかったのが残念です。暗い中にもしっかりと階調があり、被写体が認識できるギリギリのところを見極めてほしいと思います。そうすれば、狙い通りの表現になるでしょう。
「雑踏」(3枚組)
松尾勇輝 (16歳 / 愛知県豊川市 / 豊川高等学校 / 写真部)
人が集まる場所=雑踏というイメージなのですね。1枚目と3枚目は人が写っていないので、この場所を知っている人にしか、人がたくさんいるのは想像できないことですから、自分の体験とアウトプットする写真は切り離して考えなくてはいけません。東京の観光名所を訪れた時に感じたインパクトを素直に表現しているところはいいと思いますので、言葉の選び方をもう少し考えてみるといいでしょう。
「時」(3枚組)
稲石七彩 (16歳 / 愛知県豊川市 / 豊川高等学校 / 写真部)
美しいモノクロでの描写で、特に1枚目の写真が好きです。時を表したいという着眼点は面白いと思いましたが、表現が少し直接的すぎてしまったかなと思います。時刻を表す数字を見せるのではなく、例えば誰かの人生は時間の積み重ねであるし、移ろいゆく季節ごとに変わっていく風景や、朝と夜では同じ場所でも全然違って見えたりすることでも時間の流れを感じられます。そういった概念を理解した上で世界を見てみると、今とは少し違って見えてくると思います。