CAPAの鉄道写真コンテスト「TEKKEN!」2025年9月の入選作品発表! 今回のテーマは「望郷・あなたの思い出」。審査員・村上悠太先生の講評とともに紹介します。
今回のテーマ「望郷・あなたの思い出」
写真に残したからこそいつでも再会できる、あなただけの思い出の風景。何気ない空や、普段なら気にも留めないような光景、いつまでも記録しておきたい情景など、そこにカメラがあったからこそ残り続ける風景たちが、撮影者みなさんの想いとともに集まりました。
〈審査員〉村上悠太
Railマイスター「思い出のシルエット」饗庭正志 (神奈川県南足柄市)

作者コメント
ありし日のSL人吉。秋になると見られた復路の八代平野での繊細なシルエットが懐かしいです。
饗庭さんのコメントの通り、ハチロクの繊細なシルエットと空のグラデーションに強く引かれました。この機関車特有の軽やかな汽笛が写真から聞こえてくるようです。思い切って空の比率を増やしたため、夕景から夜になってゆく、そんな時の流れも想像させます。
入選「思い出す在りし日の姿」栗原正隆 (大阪市天王寺区)
作者コメント
駅舎改修後も昔の雰囲気を残してくれた日野駅から望む、旧あかね号700形の在りし日の姿が記憶に残ります。
日野駅は僕も大好きな駅です。こうした雰囲気のある駅舎はシンプルに撮影してもある程度魅力的な写真になりますが、栗原さんはそれに甘えずに旧あかね号を加えることで、さらに印象的な写真に仕上げている点が素敵です。
入選「峠へ」柿崎弘志 (山形県酒田市)
作者コメント
真冬の北秋田。雪深い峠へ、列車は向かいます。
ここから羽後長戸呂までの間、内陸線は山中を走りますが、そこに挑む列車の気迫のようなものを感じます。松葉駅から近く、速度も遅いので難易度は上がりますが、雪煙が列車の後方に舞う条件下で撮影しても良かったでしょう。
入選「癒しの郷」佐藤隆之 (横浜市旭区)
作者コメント
霧で煙る風景をモノクロにて、水墨画をイメージして撮影しました。私にとってこの周辺は、SL撮影の原点であり故郷です。
モノクロームは階調描写が要ですが、美しいトーンで、タイトルにもあるとおり癒しを感じるとても優しい写真に仕上がっています。SLの煙と山にかかる霧が織りなすハーモニーが写真全体の世界観を統一してくれています。
入選「休日のひと時」佐浦元泰 (福島県鏡石町)
作者コメント
近年、遊泳風景と鉄道を一緒に見ることが少なくなった気がします。
「川の上に座っている!?」と思わず二度見した写真でした。マイペースに休日を楽しむ、ゆるやかな時間を感じます。写っている人々と撮影者の心の距離を感じるので、コミュニケーションを取ってみましょう。
入選「追憶」佐藤雄大 (北海道釧路市)
作者コメント
セミの鳴き声が聞こえる日差しの強い夏の昼下がり、時が止まったこの駅でひとり懐かしさを感じていました。
ノスタルジックな雰囲気の中に感じる時の余韻が心地よい1枚です。室内のトーンを見せようとすると、屋外がどうしても白飛びしがちになり目立つので、構図をもう一工夫してみると画面全体が引き締まります。
入選「東京発故郷行きワンマン列車」高村文啓 (富山県黒部市)
作者コメント
元々、東京23区で使われていた富山地方鉄道の車両を撮影。「東京での仕事に疲れ、通勤列車で寝てしまい、そのまま自分の地元にうっかり帰ってしまった……」という物語で作品を作りました。
コメントが興味深かったです。そのストーリーを写真からそこまで感じることはちょっと難しかったのですが、東京の通勤電車が富山の絶景の中を走る姿は、東京出身の僕から見るとインパクトがある、望郷の光景でした。
入選「夏の散歩」車 啓司 (東京都荒川区)
作者コメント
伯備線沿線、ヒマワリが咲く田舎道に突然の通り雨が降り、傘をさして犬と散歩する人。先を急ぐ特急やくもと、ゆったりとした時間が流れる田舎の風景の対比を撮影しました。
ヒマワリが一斉に背を向けている光景が「やくも」を見送っているようにも見え、ほのぼのした写真に仕上がっています。直線主体で構成されている画面上部と、丸で構成されている下部の対比もユニークでした。
入選「ばあちゃん」佐藤詔太 (宮城県多賀城市)
作者コメント
ばあちゃんにはどんなふうに車窓が見えていたのだろう……。
津軽鉄道冬の風物詩ストーブ列車は、乗客ごとの心に残った思い出を想起させてくれる列車だと感じます。今回の写真もそんな雰囲気がよく伝わる1枚です。どこかで見たような感のある構図なのでオリジナリティを求めていきましょう!
入選「汽笛と客車の音の記憶」三浦星夢 (神奈川県藤沢市)
作者コメント
夜行列車の客車音、木の温もり、汽笛、石炭の匂い、全てが昭和の記憶と合致しました。
夜の旧型客車のロマンがつまった1枚です。車内の雰囲気は十分に伝わり、旅情を感じる写真ですが、ややインパクトに課題を感じます。作品の核となる明確な主題があると、より訴求力のある写真にすることができます。
村上悠太の “鉄” 視線「雪ひとつない東京を目指して」
僕の初一人旅は中学生。東京生まれの僕は本物の雪国を見たくて、真冬の秋田を目指しました。以来、冬の秋田が大好きです。雪と闘いながら走る「こまち」。時計を見て「まだ、東京に帰れるんだ」と、闇に消えるテールランプに故郷を想いました。
鉄道写真好き集まれ〜「TEKKEN!」作品募集中
CAPA編集部では、鉄道写真コンテスト「TEKKEN!」を開催しています。毎月の募集テーマに沿って撮影した鉄道写真をどしどしご応募ください。毎月のRailマイスターには、サンディスクのメモリーカードをプレゼント!
募集中のテーマと締切
■11月「望遠レンズ (100mm〜)」
締切 : 2025年9月30日 (火) 24:00
発表 : 2025年11月20日 (木)
応募要項
■審査員
村上悠太先生 (日本鉄道写真作家協会会員)
■今月のRailマイスター賞品
サンディスク Extreme PULS 64GB
■応募形態
WEB応募のみ。こちらの応募フォームからご応募ください。プリントでの応募は受け付けていません。
■募集テーマ
毎月20日に翌々月の募集テーマをお知らせしますので、それに沿った内容の鉄道写真をご応募ください。
※テーマにそぐわない写真は審査対象外とします。
※撮影禁止場所や私有地などから撮影した作品は応募不可とします。
■応募点数
1人何点でも応募できます。ただし単写真のみ (組写真は不可)。
■二重応募について
ほかのコンテストなどで入選した作品 (結果発表されていない応募作品も含む) や類似カット、過去に印刷物や写真展 (グループ展を含む) や投稿系サイトなど公の場で発表された作品は二重応募とみなし失格とします。
■締切
毎月末日送信分まで。
■発表
締切日の翌々月20日、「CAPA CAMERA WEB」にて。
→ TEKKEN!入選作品
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