『CAPA』本誌連動企画として公開している、CAPAフォトコンテスト「学生の部」ピックアップ作品レビュー。今回は『CAPA』2025年11月号で惜しくも選外となった作品の中から、審査員の須藤絢乃先生が目を留めた “気になる作品” をピックアップしてアドバイスします。さらなるレベルアップのためのヒントが満載です!
〈講評〉須藤絢乃
Each
中野 葵 (大阪府松原市 / 16歳 / 大阪府立生野高等学校)

家族が生きていく上で必要なものが、画面いっぱいにあふれています。さまざまな色や形が所狭しとある中でも、光の入り方をよく見ていて、絵画的な静けさと美しさをまとっていると感じました。それぞれの画面の中央に家族が彫刻のように佇んでいる感じも、周辺の物量との面白いコントラストを生み出しています。
一人の時間
金沢祐之介 (新潟県長岡市 / 16歳 / 中越高等学校)

選考中に思わず手が止まり、無視できない一枚でした。手前に大きく燃えさかる炎、その奥にやけに冷静な眼差しを向ける少年の姿。この対比のユーモラスなことよ。写真もプリントもその瞬間を咄嗟に捉えたという切実さにあふれていて、本当にいい写真が撮れて、そこに存在すれば、クオリティ云々は関係ないのだなと身につまされる思いでした。
時の止まる場所
𠮷岡柊晴 (大阪府松原市 / 15歳 / 大阪府立生野高等学校)

街で出会ったおばあさんのお宅に招かれ、戦時中の実体験を聞いたというドキュメント写真。おばあさんの目からこぼれ落ちる涙を見て、写した一枚に、16歳のあなたが抱いた「知りたい、残したい」という静かな情熱と行動力をひしひしと感じました。日本では、数多くの戦火と犠牲者を見てきた人々には、もうまもなく会えなくなります。そうした今、私たちは何ができるだろうと、この作品を見て考えさせられます。