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豊富な副賞が魅力! ソニー 第1回「THE NEW CREATORS」優秀賞受賞の鈴木拓哉さんにインタビュー

第1回「THE NEW CREATORS」鈴木拓哉さんインタビュー

ソニーグループ4社による写真と映像のアワード「THE NEW CREATORS」の第2回公募が始まった。このコンペでは新たな才能を見出すとともに、その後の活動をサポートしていくことにも力を注ぐ。受賞者は2年間、ソニーのカメラとレンズが利用でき、プロサポートが受けられるほか、部外者は立ち入れないソニーグループのクリエイティブ拠点でプロの映像制作現場が体験できる副賞も与えられる。

第1回 THE NEW CREATORS 受賞者インタビュー
  1. 優秀賞・鈴木拓哉さん : 受賞者の中で僕が一番機材を借りていると思います (笑)
  2. 佳作・井上翔太さん : 副賞のソニーポイントで念願のG Masterをゲット
第1回「THE NEW CREATORS」鈴木拓哉さんインタビュー
見学体験ができる施設のひとつ、ソニーPCLのクリエイティブ拠点「清澄白河BASE」。常設のバーチャルプロダクションをはじめ、先端技術を活用した制作機能を備える。

第1回 THE NEW CREATORS 優秀賞・鈴木拓哉さんにインタビュー

受賞者の中で僕が一番機材を借りていると思います (笑)

第1回「THE NEW CREATORS」鈴木拓哉さんインタビュー
「α1 II」を手にする鈴木拓哉さん。

第1回の優秀賞に選ばれた鈴木拓哉さんは「受賞者の中で、僕が一番機材を借りていると思います」と笑う。それまでは他社製品を使っていたが、「THE NEW CREATORS」の副賞である2年間の機材サポートを活用して、ソニーのミラーレスカメラとレンズを使いはじめた。今は最上位モデルの「α1 II」と「FE 50mm F1.4 GM」がメイン機材となっている。

「ボケ味が素晴らしい。描写力、色味も良く、イメージ通りに写る。このカメラを使い始めてから、ますます写真を撮る喜びを感じています」

第1回「THE NEW CREATORS」鈴木拓哉さんインタビュー
優秀賞を受賞した「旧姓へ」 © Takuya Suzuki

今回の受賞が写真家として活動する自信を与えてくれた

これまでに数々のコンペ、公募展にチャレンジし、入賞も果たしてきたが、今回の受賞は「自分にとって大きな転機になった」そうだ。最も重要だったのは、自分の作品を世に問う写真家として活動する自信を与えてくれたことだ。
「自分が単なるカメラマンではなく、写真家だと思えたことで、いろいろなことが動き出しました」

鈴木さんは武蔵野美術大学で映像を専攻した。何本かの映画作品を制作し、大学の卒業制作では優秀賞も得たが、卒業後は写真撮影の仕事を選んだ。
「映像は一人ではできない。学生時代、スチル撮影もしていて、こちらのほうが食える仕事になると思いました」

制作会社に所属し、さまざまな撮影をこなしながら、自らの作品を制作してきた。
「10年ほど、数多くのコンテストやコンペに応募し続けていましたが、かすりもしませんでした」

今はその理由がわかる。
「個性的なスナップショットを撮る写真家に倣った写真を撮り続けていたからです」

その後、コロナ禍になり、離婚を経験した。
「それまで関心のなかった人物、それも女性が撮りたくなり、最初は周囲の人を撮るようになりました」

第1回「THE NEW CREATORS」鈴木拓哉さんインタビュー
「第48回JPS展 優秀賞」受賞作品 © Takuya Suzuki

ある時、地平線を背景にしたポートレートのイメージが浮かんだ。透明な服をまとったマスク姿の女性が振り向く光景だ。
「どこまでできたかはわかりませんが、僕自身は、今の時代を暗示するような瞬間が捉えられたかもしれない手応えを感じました」

SNSで呼びかけてモデルを募集、女性たちがマスクを外す瞬間に時代を重ねる

第1回「THE NEW CREATORS」鈴木拓哉さんインタビュー
『未来で会いましょう』より © Takuya Suzuki

初めての写真集『未来で会いましょう』(2025年1月 / みらいパブリッシング刊) は、コロナ禍の「ある一時期」を残す試みだ。2023年に入り、マスクの着用義務がなくなったころから動き始めた。SNSなどでモデルを募り、116名 (写真集には103名を掲載) を撮影した。
「未知のウイルスに翻弄されたこの時代を未来に伝えたかった。規制は緩和されつつあったけど、多くの人が疑心暗鬼だったころです」

いまだ先の見えない道半ばの意味を込め、被写体が立つ道路の手前と後ろには誰もいない空間が広がる。そこでマスクを外し始める。
「多彩なシチュエーションで撮りたかったので、都内の違う駅を選びました。道を印象付けたかったので、できるだけ細い裏路地を探しました」

第1回「THE NEW CREATORS」鈴木拓哉さんインタビュー
『未来で会いましょう』より © Takuya Suzuki

最新作ではプライベートな距離感を可視化

コロナ禍が明け、ソーシャルディスタンスが言われなくなると、今度は一人一人が持つプライベートな距離感が気になり始めた。『未来で会いましょう』で協力してくれた人たちに声を掛け、気の合う女性2人に来てもらった。
「仲が良いから近くなるわけではありません。またそれぞれが選ぶ距離感が食い違う場合もあります。1cmという人もいれば、1m以上離れる人もいました」

互いの思いが一致する場合もあれば、どちらかが相手に合わせることもある。また意図的に仲良しを演出するケースもあって、事はなかなかに複雑だ。
「距離を可視化するため、実際にメジャーでその長さを示し、写真に数字も載せました」

タイトルは『センチな関係』(仮)。写真集として、みらいパブリッシングより出版予定だ。

第1回「THE NEW CREATORS」鈴木拓哉さんインタビュー
鈴木拓哉さんは、人と人の関係や距離感に意識を向けて制作に取り組んでいる。

撮影で出会った親子をきっかけに取り組んだテーマが受賞につながった

この撮影の参加者に1組だけ母と実娘がいた。そこからシングルマザーがテーマに浮上する。今回「THE NEW CREATORS」で優秀賞を受賞した「旧姓へ」は、そのきっかけとなった親子がモデルだ。
「階段で撮影した彼女は離婚調停中でしたが、母子で暮らしていました。会う前は女性一人で子どもを育てるのは大変だろうとばかり思っていましたが、二人の姿を見ていると、子どもの存在が母親の支えになっていると感じました」

そこから知り合いの伝手などを頼りに計10組に会うことができた。

第1回「THE NEW CREATORS」鈴木拓哉さんインタビュー

第1回「THE NEW CREATORS」鈴木拓哉さんインタビュー

第1回「THE NEW CREATORS」鈴木拓哉さんインタビュー
「2025JPS展」で金賞に選ばれた「母はシングル」(3枚組)。色味が鑑賞者の意識を恣意的に誘導すると感じ、「THE NEW CREATORS」の応募作はモノクロを選んだ。 © Takuya Suzuki

撮影は被写体の家の近所で、小一時間、雑談を交わしながら周囲を歩き、撮影していく。決めていたことは「子どもに守られていると感じますか」との問いと、母親が子どもの膝枕で横になるシーンを撮ることだ。

「ドキュメンタリーを撮りたいわけではないので、これまでの経緯など突っ込んだ話はしません。安心してカメラの前に立ってもらえることを心がけていました」
撮影者の意図を超えて、不意に浮かべる表情や目の動き、仕草の中に、見る人の想像力を刺激する物語が潜んでいるからだ。

「当初は母親が主役と考えていましたが、撮影するうちに子どもに主軸が移っていきました」
受賞作に写っているのは帽子を被った姉と弟。弟は始終おちゃらけていたが、この瞬間だけ違う表情を見せた。

受賞を機に、さらなる飛躍を目指し挑戦を続ける

「ソニーの本社で開かれた授賞式は予想以上に盛大で驚きました。このコンペにかけるソニーグループの本気を感じました」

授賞式とその後行われた体験会を通じて、ほかの受賞者と交流できたことが鈴木さんに大きな刺激を与えた。
「ほかの作家の活動や考えを知る機会はこれまでにありませんでした。僕はチームが組めなかったこともあって映像制作を諦めたんですが、映像部門で受賞した2人は個人で制作していると聞いて驚きました」

第1回「THE NEW CREATORS」鈴木拓哉さんインタビュー
『青』より © Takuya Suzuki

今回の受賞を機に、写真家として活動していける自信が芽生えた。さらなる飛躍を目指し、来年度の「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭」へエントリーしたほか、「ZOOMS JAPAN 2026」も目指す。
「初めてセルフパブリッシングで『青』と題した写真集を出す予定です」

青い光が射す夕暮れの短い時間に、化粧をしていない素顔の女性50名を撮影した。
「大切な人、心を許した人に女性は素顔を見せてくれる。僕自身の過去の想い出をきっかけにしたシリーズです」

第1回「THE NEW CREATORS」鈴木拓哉さんインタビュー
『青』より © Takuya Suzuki
鈴木拓哉 (Takuya Suzuki)
1985年生まれ。武蔵野美術大学 造形学部映像学科卒。日ごろより多数の広告媒体・カタログ表紙・雑誌・ポスター等の広告写真撮影を行う。主な受賞歴に、Limelight 2023 Under40部門グランプリ、第9回・第10回写真出版賞優秀賞、2025JPS展金賞、第1回 THE NEW CREATORS 優秀賞ほか。
→ WEBサイト
→ Instagram

ほかでは体験できない特典がある「THE NEW CREATORS」第2回の募集開始

第2回の募集期間は2026年3月16日まで。年齢、経験、使用機材も不問だ。写真作品はネイチャー部門と自由部門 (それぞれ単写真) に加え、組写真部門が新設された。

写真作品のグランプリ受賞者はイギリスで開かれる「ソニーワールドフォトグラフィーアワード」の授賞式に招待するほか、ソニー・ミュージックレーベルズ所属アーティストが制作するミュージックビデオの現場見学など、ほかでは体験できない特典が与えられる。

審査は写真作品が写真家の川島小鳥さん、志賀理恵子さん、映像作品は映像作家の大喜多正毅さん、映画監督の大友啓史さん。

第2回 THE NEW CREATORS の詳しい情報はこちらからチェック

第2回 THE NEW CREATORS 概要

募集締切

2026年3月16日 (月)

部門・作品規定

写真作品
ネイチャー部門 (単写真)、自由部門 (単写真)、組写真部門 (4枚1組)

  • 2023年1月1日以降に応募者本人が撮影した作品
  • 1部門5作品までとし、複数部門のエントリー可
  • 1作品1MB以上20MB以下 (最大で5作品600MB以内) のJPEG形式

映像作品
イマジネーション部門、ドキュメンタリー部門、ショート部門

  • 2023年1月1日以降に応募者本人またはグループで撮影した作品
  • 1部門1作品までとし、複数部門のエントリー可
  • イマジネーション部門およびドキュメンタリー部門は30秒~15分以内、ショート部門は60秒以内のMP4形式 (いずれも容量15GB以内)

グランプリ (写真作品・映像作品 各1名) 賞金100万円、副賞
優秀賞 (写真作品・映像作品 各2名) 賞金20万円、副賞
入賞 (写真作品・映像作品 各3名) 賞金5万円、副賞
U25賞 (写真作品・映像作品 各1名) 賞金5万円、副賞
佳作 (写真作品・映像作品 各最大30名) ソニーポイント1万円分、副賞
ソニー・ミュージックレーベルズ特別賞 (写真作品・映像作品 各1名) 副賞

※ソニー・ミュージックレーベルズ特別賞はグランプリ・優秀賞・入賞受賞者から選出

<副賞>
■グランプリ
α7R V (写真作品)、FX3 (映像作品)
カメラ・レンズの機材サポート 2年
ソニー・イメージング・プロ・サポート 2年無料
ソニー関連各社ならではの “特別な体験”

■優秀賞
カメラ・レンズの機材サポート 2年
ソニー・イメージング・プロ・サポート 2年無料
ソニー関連各社ならではの “特別な体験”

■入賞
ソニー・イメージング・プロ・サポート 2年無料
ソニー関連各社ならではの “特別な体験”

■U25賞
ソニー関連各社ならではの “特別な体験”

■佳作
ソニー関連各社ならではの “特別な体験”

■ソニー・ミュージックレーベルズ特別賞
ソニー・ミュージックレーベルズ所属アーティストのミュージックビデオなどの撮影体験

ソニー関連各社ならではの“特別な体験”とは?

■ソニーマーケティング
<グランプリ受賞者のみ>
ソニーが支援する世界最大規模のアワード (写真作品グランプリは「ソニーワールドフォトグラフィーアワード」、映像作品グランプリは「ソニーフューチャーフィルムメーカーアワード」) 表彰式へ招待

<グランプリ、優秀賞、入賞、U25賞、佳作>
ソニーイメージングギャラリー銀座での作品展示

■ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
<グランプリ、優秀賞、入賞、U25賞>
特別試写会&トークセッションへご招待 (国内)

■ソニー・ミュージックレーベルズ
<ソニー・ミュージックレーベルズ特別賞受賞者のみ>
アーティストのミュージックビデオなどの撮影体験

<グランプリ・優秀賞・入賞・U25賞>
アーティストのミュージックビデオなどの撮影現場見学体験

■ソニー PCL
<グランプリ、優秀賞、入賞、U25賞>
「清澄白河BASE」の見学体験

発表

一次審査 : 2026年5月下旬
二次審査 : 2026年7月下旬

表彰式&交流会

2026年9月下旬

URL

https://www.sony.jp/camera/the_new_creators/

 

 

〈取材・写真〉菅原隆治 〈まとめ〉市井康延
〈協力〉ソニーマーケティング株式会社