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副賞で念願のレンズを。受賞から広がる創作の可能性。第1回「THE NEW CREATORS」佳作・井上翔太さんインタビュー

第1回「THE NEW CREATORS」鈴木拓哉さんインタビュー

フォトコンテストはゴールか、スタートか。ソニーグループ4社が2024年に立ち上げた写真と映像のアワード「THE NEW CREATORS」は後者だ。新たな才能を発掘し、育てていくことに照準を合わせている。賞金だけでなく、機材のサポートや制作現場の体験といったほかのコンペにはない副賞を提供する。

第1回 THE NEW CREATORS 受賞者インタビュー
  1. 優秀賞・鈴木拓哉さん : 受賞者の中で僕が一番機材を借りていると思います (笑)
  2. 佳作・井上翔太さん : 副賞のソニーポイントで念願のG Masterをゲット
第1回「THE NEW CREATORS」鈴木拓哉さんインタビュー
見学体験ができる施設のひとつ、ソニーPCLのクリエイティブ拠点「清澄白河BASE」。常設のバーチャルプロダクションをはじめ、先端技術を活用した制作機能を備える。

第1回 THE NEW CREATORS U25部門 佳作・井上翔太さんにインタビュー

審査員に作品を見てもらいたいと思ったのが応募のきっかけ

第1回「THE NEW CREATORS」井上翔太さんインタビュー
「THE NEW CREATORS」で佳作となった「兆し」 © Shota Inoue

第1回のU25部門で佳作を受賞した井上翔太さんは、休日を使い、日本の四季を撮り歩いている。19歳から写真を始め、写歴は約6年。Instagram (フォロワーは1万人) と、WEB応募のフォトコンテストで腕を磨いてきた、まさにデジタルネイティブ世代の写真愛好家だ。

「グループ展に参加したとき、初めて自分の写真をプリントしました。プリントするのもいいなとは思いましたが、まだ取り組んではいません」と井上さん。

第1回「THE NEW CREATORS」井上翔太さんインタビュー
井上翔太さん。手にしているのは愛機の「α7 IV」と、副賞のソニーポイントを使って手に入れた「FE 70-200mm F2.8 GM OSS」。

撮影場所の情報収集を兼ねて、時間があると書店で写真関連本に目を通す。そのとき「第1回 THE NEW CREATORS」の募集告知を目にした。

「その当時の僕のメイン機種はソニーのα7 IIIですし、審査員に蜷川実花さんがいたことにも引かれました」
カメラ仲間で評判の高かった「蜷川実花展 with EiM : 彼岸の光、此岸の影」を京都市京セラ美術館で見てきたばかりだったからだ。

「受賞作は以前、グループ展に出した作品でしたが、非営利目的であれば既発表作も応募可能とのことだったので、“蜷川さんに届け” と願って応募しました」

第1回「THE NEW CREATORS」井上翔太さんインタビュー

第1回「THE NEW CREATORS」井上翔太さんインタビュー
「THE NEW CREATORS」へは上の2点と合わせ、3点を応募した。 © Shota Inoue

受賞作はSNSで知り合ったカメラ仲間との撮影旅行で、黒部ダムに行ったときのものだ。ダムの放水時、晴れていれば虹がかかる。
「まずは定番の写真を撮ろうと思っていましたが、到着時間が少し遅れてしまい、真上からのベストポジションへ行けませんでした」

スマホの待ち受け画面にできたらいいぐらいの気持ちで、虹の一部分を切り取った。気軽に撮ったとは言いつつも、虹の色を引き出すため、CPLフィルターを装着したそうだ。

「僕自身は見た目のインパクトに満足していただけでしたが、グループ展で見てくれた方からさまざまな見方を指摘され、教えられました」
斜めに射した虹を境に、白と黒のコントラストが展開したことで、鑑賞者の想像力を刺激したのだ。

第1回「THE NEW CREATORS」井上翔太さんインタビュー
被写体は自然、動物などさまざま。 © Shota Inoue

審査結果の発表時期に入ると、毎日のように公式サイトをチェックしていた。まずはメールで入選したことが伝えられ、公式サイトで佳作になったことを知った。

「最初は入賞者の名前だけが発表され、それを見たときは正直、上位賞ではなかったので悔しかった。その後、掲載された受賞作を見て、作品のレベルの違いに圧倒されました。と同時に、こうした作品の中で、僕の写真も選ばれたという嬉しさと自信がこみ上げてきました」

SNSを活用して独学で撮り方を身につけた

第1回「THE NEW CREATORS」井上翔太さんインタビュー
会心の1枚。 © Shota Inoue

写真を始めたのは、19歳の誕生祝いに祖母からデジタル一眼レフカメラを贈られてからだ。
「高校時代まで野球をやっていて、部のマネージャーが一眼レフで練習や試合風景を記録してくれていました。写りが良くて、写真を撮るならスマホじゃなく一眼レフだと決めていました」

そして手に入れたのがソニーのAPS-Cミラーレスカメラ「α6000」。友だちとの旅を撮り始め、就職後は一人で撮影旅行に行くようになった。知らない風景に出会うのが好きで、写真は旅の記憶を残すツールでもあった。

第1回「THE NEW CREATORS」井上翔太さんインタビュー
『じゃらん』フォトコンテストの入賞作。 © Shota Inoue

写真はInstagramで発表し、フォトコンテストにも応募するようになった。最初はSNSで見た写真をお手本に、独学で撮影法を身につけていった。
「SNSつながりでカメラ仲間ができると、彼らに質問したり、YouTubeのレクチャー動画も参考にしました」
「初めて入選したのは2〜3年目。旅行専門雑誌『じゃらん』(現在は休刊) のコンテストで2度ほど、誌面に掲載されました」

目標にしていたのが「東京カメラ部10選U-22フォトコンテスト」だ。第1回の2020年から挑戦し、ラストチャンスとなった2022年に、宮崎県の都井岬で撮った「帰還」で念願を果たした。

第1回「THE NEW CREATORS」井上翔太さんインタビュー
「東京カメラ部10選U22フォトコンテスト」入選作。 © Shota Inoue

独学だから、とぼけた思い違いもあった。RAWで撮った画像がパソコンにデータを移すとJPEGになってしまう。
「Wi-Fi接続していたからだったのですが、カメラのせいだと思い込み、ボーナスをはたいて今使っているフルサイズ機を買いました。初めてRAW画像を見たときの感動は今も残っています」

副賞のソニーポイントで念願のG Masterをゲット

撮影は続けていたが、目標を達成して以降はあまりコンテストに応募しなくなっていたそうだ。そこに再び刺激を与えてくれたのが今回の「THE NEW CREATORS」でもあった。

第1回「THE NEW CREATORS」井上翔太さんインタビュー
何組ものキツネがじゃれあう場所があると聞き、撮りに行ったこともある。 © Shota Inoue

副賞のソニーポイントを使い、以前から欲しかったG Master「FE 70-200mm F2.8 GM OSS」を手に入れた。
「これまで使っていたサードパーティの大三元レンズが少し柔らかい描写だったのに対し、よりシャープで存在感のある絵が撮れる。モニターで見てもその違いが分かるので、撮るのが楽しくなりました」

第1回「THE NEW CREATORS」井上翔太さんインタビュー
白馬の四季。 © Shota Inoue

長野の白馬に北アルプスが一望できる山頂テラス「HAKUBA MOUNTAIN HARBOR」がある。秋には山麓に緑が広がり、中腹は紅葉、山頂には雪が積もる三段紅葉が楽しめる場所だ。
「秋、夏、冬に行き、Twitter (現X) に載せたら、施設の運営者から “春も撮りに来て” と招待されたこともありました」

第1回「THE NEW CREATORS」井上翔太さんインタビュー
妻を風景に入れ込み、撮ることが増えてきた。 © Shota Inoue

最近は風景に人物を入れて撮ることが多くなった。モデルは今年2025年8月に入籍した妻だ。カメラ仲間のポートレート撮影に初めて参加したとき、モデルとして来ていた彼女と知り合った。今夏のお盆休みには互いに1週間の長期休暇を取り、四国を巡った。香川からフェリーで直島へ行き、徳島の阿波踊りや高知よさこい祭りを楽しんだ。

第1回「THE NEW CREATORS」井上翔太さんインタビュー
© Shota Inoue

「全都道府県を踏破して、各地域で1枚ずつ選んだ写真でフォトブックを作りたいと思っています」

明確にテーマを設定した作品制作を行うわけではないが、自らの日常の中で興味を持った瞬間を収め続けてきた。そこから何かが生まれるのか、今後、新たなモチーフにつながるのか。

「良い写真が撮れたときのセオリーが自分の中で蓄積してきて、やや撮り方が定まってきた感がある。それでコンパクトデジカメを買い、スナップを撮り始めました。違う感覚が刺激されて、リフレッシュできます」

第1回「THE NEW CREATORS」井上翔太さんインタビュー
© Shota Inoue

第2回の「THE NEW CREATORS」では、より高みを目指したい

今回、受賞したことで、ソニーストア名古屋から懇親会にも誘われた。αアカデミー講師のプロ写真家や、ハイアマチュアなどが集まった会だった。
「短期間ですが、在庫の中から機材も貸してくれるそうです。アマチュアとしてはこれ以上ない環境を与えてもらっています」

目下の目標は第2回の「THE NEW CREATORS」でより高みを目指すこと。カメラという道具を手にして、自らの興味のまま撮影を続けてきた。こういう撮影者が、新しいイメージをつかまえるのかもしれない。

第1回「THE NEW CREATORS」井上翔太さんインタビュー
井上翔太さんは今年25歳。これからの活躍に注目だ。
井上翔太 (Shota Inoue)
2000年生まれ。愛知県知立市出身。高校卒業後、旅行の思い出をきれいに残したいという想いから、就職と同時にカメラを始める。現在は風景撮影を主としているが、ポートレートや動物撮影など、幅広いジャンルの撮影に挑戦している。主な受賞歴に、東京カメラ部10選U-22フォトコンテスト2022選出、第1回 THE NEW CREATORS U25部門佳作​​​​​​​、ほか入賞多数。
→ WEBサイト
→ X
→ Instagram

グランプリ賞金が100万円にアップした「第2回 THE NEW CREATORS」MV撮影体験など特典も魅力

「第2回 THE NEW CREATORS」の審査員は写真部門が写真家の川島小鳥さんと志賀理恵子さん、映像部門は映像作家の大喜多正毅さんと映画監督の大友啓史さんが行う。

第2回はグランプリ賞金を100万円に増額したほか、U25賞と、ソニー・ミュージックレーベルズ特別賞を新設した。特別賞では、入賞者の中から各部門1名をミュージックビデオなどの撮影体験に招待する。

第2回 THE NEW CREATORS の詳しい情報はこちらからチェック

第2回 THE NEW CREATORS 概要

募集締切

2026年3月16日 (月)

部門・作品規定

写真作品
ネイチャー部門 (単写真)、自由部門 (単写真)、組写真部門 (4枚1組)

  • 2023年1月1日以降に応募者本人が撮影した作品
  • 1部門5作品までとし、複数部門のエントリー可
  • 1作品1MB以上20MB以下 (最大で5作品600MB以内) のJPEG形式

映像作品
イマジネーション部門、ドキュメンタリー部門、ショート部門

  • 2023年1月1日以降に応募者本人またはグループで撮影した作品
  • 1部門1作品までとし、複数部門のエントリー可
  • イマジネーション部門およびドキュメンタリー部門は30秒~15分以内、ショート部門は60秒以内のMP4形式 (いずれも容量15GB以内)

グランプリ (写真作品・映像作品 各1名) 賞金100万円、副賞
優秀賞 (写真作品・映像作品 各2名) 賞金20万円、副賞
入賞 (写真作品・映像作品 各3名) 賞金5万円、副賞
U25賞 (写真作品・映像作品 各1名) 賞金5万円、副賞
佳作 (写真作品・映像作品 各最大30名) ソニーポイント1万円分、副賞
ソニー・ミュージックレーベルズ特別賞 (写真作品・映像作品 各1名) 副賞

※ソニー・ミュージックレーベルズ特別賞はグランプリ・優秀賞・入賞受賞者から選出

<副賞>
■グランプリ
α7R V (写真作品)、FX3 (映像作品)
カメラ・レンズの機材サポート 2年
ソニー・イメージング・プロ・サポート 2年無料
ソニー関連各社ならではの “特別な体験”

■優秀賞
カメラ・レンズの機材サポート 2年
ソニー・イメージング・プロ・サポート 2年無料
ソニー関連各社ならではの “特別な体験”

■入賞
ソニー・イメージング・プロ・サポート 2年無料
ソニー関連各社ならではの “特別な体験”

■U25賞
ソニー関連各社ならではの “特別な体験”

■佳作
ソニー関連各社ならではの “特別な体験”

■ソニー・ミュージックレーベルズ特別賞
ソニー・ミュージックレーベルズ所属アーティストのミュージックビデオなどの撮影体験

ソニー関連各社ならではの“特別な体験”とは?

■ソニーマーケティング
<グランプリ受賞者のみ>
ソニーが支援する世界最大規模のアワード (写真作品グランプリは「ソニーワールドフォトグラフィーアワード」、映像作品グランプリは「ソニーフューチャーフィルムメーカーアワード」) 表彰式へ招待

<グランプリ、優秀賞、入賞、U25賞、佳作>
ソニーイメージングギャラリー銀座での作品展示

■ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
<グランプリ、優秀賞、入賞、U25賞>
特別試写会&トークセッションへご招待 (国内)

■ソニー・ミュージックレーベルズ
<ソニー・ミュージックレーベルズ特別賞受賞者のみ>
アーティストのミュージックビデオなどの撮影体験

<グランプリ・優秀賞・入賞・U25賞>
アーティストのミュージックビデオなどの撮影現場見学体験

■ソニー PCL
<グランプリ、優秀賞、入賞、U25賞>
「清澄白河BASE」の見学体験

発表

一次審査 : 2026年5月下旬
二次審査 : 2026年7月下旬

表彰式&交流会

2026年9月下旬

URL

https://www.sony.jp/camera/the_new_creators/

 

 

〈取材・写真〉菅原隆治 〈まとめ〉市井康延
〈協力〉ソニーマーケティング株式会社