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ライカ使いの写真家2人はどう思った?「ライカM EV1」のリアルな使用感を聞いた! 大門美奈×中藤毅彦スペシャル対談

今までレンジファインダーであったM型ライカに、EVFの機能性を詰め込んだ新モデルが登場。早速、ライカ使いの写真家・大門美奈さんと中藤毅彦さんが撮影を行ない、二人が認めた「ライカM EV1」の魅力を語ってもらった。

大門美奈×中藤毅彦 ライカM EV1 スペシャル対談
大門美奈さん (左)「M型ライカの楽しさがありつつも、より機能的になっています」
中藤毅彦さん (右)「ライカのDNAが受け継がれているのがわかります」

大門美奈×中藤毅彦 LEICA M EV1 スペシャル対談

EVFで使いやすいM型ライカが新登場

大門美奈×中藤毅彦 ライカM EV1 スペシャル対談
ライカM EV1

中藤 M型ライカはレンジファインダーであることこそがアイデンティティーであると認識していましたが、「ついにきたか」という感じがしました。ビゾフレックス※1のようなアクセサリーは以前からありましたが、EVFを搭載した新たなシリーズの登場は正直、衝撃でした。

大門 私もファインダーをのぞいたときに、二重像合致式じゃないんだと違和感があったんですけど、慣れるとすごく使いやすくて、思わず買ってしまいました。

中藤 スゴイ! もう手に入れたんですね。私の周りで初めてリアルユーザーを見ました。

大門 私が気に入っているのは、EVFの出っ張りが抑えられているところです。「ライカQ3 43」も使っていますが、EVFが結構出っ張っているんです。それがカジュアルすぎる印象を個人的には持っていたのですが、「ライカM EV1」はデザイン的にも洗練されています。

中藤 M型ライカの未来形が誕生した感じがしますね。

大門 重さも「ライカM11 ブラック」と比べて約50gも軽量化されています。私は少し重量感のある「ライカM11-P シルバー・クローム」を使っているので、より軽く感じます。小型の「アポ・ズミクロンM f2/35 ASPH.」を付けていると、すごく軽くて快適なんです。

※1 ビゾフレックスとは主にM型ライカに取り付けて、レンズを通して被写体を確認できるファインダーシステム。現在ではEVFタイプの「ビゾフレックス2」が発売され、解像度は370万ドット。

大門美奈×中藤毅彦 ライカM EV1 スペシャル対談
コンパクトに収められた高精細EVF
ライカSL3」や「ライカQ3」と同じ576万ドットのEVFを搭載。ファインダーの出っ張りを抑え、M型ライカらしいデザインを追求している。視度補正にも対応する。

撮影画像がそのまま見えるEVFの使い勝手が革命的

中藤 大門さんが使っているデジタルM型ライカはなんですか。

大門 最初は「ライカM-E」でしたが、今は「ライカM10モノクローム」と「ライカM11-P」、そして「ライカM EV1」が加わりました。

中藤 僕はずっとモノクロ専用機だったんですが、今は通常の「ライカM11」にしました。「ライカM11モノクローム」も魅力的なんですが、「ライカM11」には「モノクロHC」というハイコントラストモードが入っていて、これが気に入っています。

大門 「ライカM EV1」にもハイコントラストモードがありますね。

中藤 実際に撮影してみて革命的だなと感じたのが、モノクロに設定するとファインダーがモノクロで見えること。EVFだから当たり前なんですが、これまでのM型ライカではファインダーから入ってきたカラーの情報を頭の中でモノクロに変換して撮影していたので、いつもと違った新鮮さがありました。

大門美奈×中藤毅彦 ライカM EV1 スペシャル対談
ライカM EV1 アポ・ズミクロンM f2/50mm ASPH. 絞り優先オート F13 1/60秒 ISO6400 WB : オート 撮影 : 中藤毅彦

ライカの力強いモノクロで夜の街をスナップ
クリスマスが近づき銀座の街にも華やかなイルミネーションが灯った。たくさんの電球で飾り付けられた街路樹のフォルムが、何か人間の脚のように見えて面白い。少し絞ることでできる光芒を生かしてシュールな光景を狙った。

大門 これまでレンジファインダーのM型ライカは、植物の撮影が苦手だと感じていました。枝や葉が重なっていると、どこにピントが合っているのかわかりづらいのですが、EVFなら一目瞭然です。拡大表示やフォーカスピーキングによるMFアシスト機能も使えるので、花のしべにピントを合わせるのも簡単です。

中藤 レンジファインダーとEVFのどちらが好きですか。

大門 慣れているというのもありますが、レンジファインダーはだいたいこのへんかなと、パッとピントを合わせて素早く撮れるのが気持ちいい。正確にピントを合わせるためにはEVFのほうがいいのですが、レンジファインダーには勘で撮影できちゃう楽しさがあります。撮影内容に合わせて使い分けたいですね。

中藤 僕の場合はストリートスナップが中心なので、ブライトフレームで素早くフレーミングできるレンジファインダーかな。でも今回、「ライカM EV1」の使いやすさを実感してしまったので……。

大門 愛用している「アポ・ズミクロンM f2/35 ASPH.」の最短撮影距離が30cmなんですが、ファインダーをのぞいたまま最短まで近づけるのが魅力です。これまでは撮影距離が70cm未満だと、背面液晶に切り替えないと撮影できなかったのですが、M型ライカで背面液晶を見ながら撮影するのは少し不格好に感じられて、あまり好きではなかったので。

中藤 世界的にはM型ライカユーザーの約半数がビゾフレックスを使っているそうです。それならEVFを搭載した「ライカM EV1」のほうがスマートに撮影できますね。

大門美奈×中藤毅彦 ライカM EV1 スペシャル対談
ライカM EV1 アポ・ズミクロンM f2/35 ASPH. 絞り優先オート F2.8 1/12000秒 −0.7補正 ISO64 WB : オート 撮影 : 大門美奈

花の近接撮影がM型ライカで楽しめる
近くの公園で見かけたコスモスをほぼ最短撮影距離 (30cm) で撮影。二重像合致式では難しいシーンのひとつだが、「ライカM EV1」ではピント合わせもスムーズ。被写体までの距離が70cm未満でもEVFで確認できるのは大きな利点。

大門 「ライカM EV1」だと付けたくなるレンズが広がりませんか。

中藤 望遠系が使いやすいんじゃないかな。レンジファインダーだとフレームが小さくなってピントが合わせづらいけど、90mmとか使いやすそうな気がします。また、オールドレンズを楽しんでいるユーザーにも「ライカM EV1」はよさそうですね。

大門 私はノクティルックスなどの明るいレンズを付けて、開放で思いっきりスナップしてみたいです。

中藤 大門さんはライカSLシステムも使われていますが、Mマウントアダプターを付けて撮影するのと感覚的に違いますか。

大門 全然違います。「ライカM EV1」のほうが楽しいんです。大きさの違いもあると思いますが、ライカSLシステムはグリップがあり、しっかり構えて撮りやすいんですけど、楽しむという要素でいうと、「ライカM EV1」のほうが断然上です。

ライカのDNAを受け継ぐデザインと画質が秀逸

中藤 デザイン的にはファインダーの大きな窓がなくなり、フィルム時代のファインダーを搭載しない「ライカMD」や「ライカMDa」にそっくりな感じがします。

大門 「ライカQ3」などと同じダイヤモンドパターンの張り革が採用されていて、いいアクセントになっていますね。また「ライカM11」だと軍艦部とボディの間に少し段差があるのですが、「ライカM EV1」は段差がなくスッキリしています。

中藤 ほんとだ。気がつきませんでした。小さな距離計窓はセルフタイマーランプになっていますね。

大門 ファインダー窓のシールとか欲しくないですか (笑)。

中藤 それはいいですね。

大門 カメラ正面のFNレバーでクロップ撮影も楽しめます。デフォルトでは1.3倍と1.8倍が選べ、マクロ的な撮影にも便利です。

中藤 最新のM型ライカと並べてみたくて、100年前のライカA型を持ってきました。35mm判フィルムを使うカメラの元祖です。

大門 古さを感じないですね。左右に丸みのあるデザインが、現在まで残っているのがすごくいいです。

中藤 フィルムのパトローネを入れる形をそのままデザインにしたんでしょうけど、うまく手に収まる感じがライカなんです。100年経ってもライカのDNAが受け継がれているのがわかります。

大門美奈×中藤毅彦 ライカM EV1 スペシャル対談
100年受け継がれたライカデザイン
左が約100年前に登場した「ライカA型」、右が最新の「ライカM EV1」。手にすんなり収まる丸みをもった伝統のデザイン。ライカのDNAは今もしっかりと受け継がれている。

大門 「ライカM EV1」のセンサーは「ライカM11」と同じ6000万画素なので、スナップには十分すぎる画素数です。トリプルレゾリューション ※2に対応しているので、3600万画素のMサイズで撮影するのが使いやすいように感じます。

中藤 6000万画素だとブレに対してもシビアですからね。レンズの力もあると思いますが、ライカの画づくりは品格がありますね。

大門 ライカで撮り始めた前後で写真が変わったように感じています。当時は、なんでこのときライカで撮らなかったんだろうと思うことが結構あって、それだけライカの画づくりが魅力的なんだと思います。

中藤 レンジファインダーが好きなM型ライカファンが多いと思いますが、まずは使ってみてほしいですね。

大門 「ライカM EV1」はM型ライカの楽しさがありつつも、より機能的になっているので、初めてM型ライカに触れる人にも向いています。

中藤 ライカは昔から、その時代の最先端のテクノロジーを切り拓いてきました。そうした伝統を受け継いだ新時代のM型ライカが、「ライカM EV1」なんです。

※2 トリプルレゾリューションとは3つの記録画素数を切り替えて撮影できる技術。DNGまたはJPEG形式での記録画素数を60MP、36MP、18MPから選択できる。

大門美奈×中藤毅彦 ライカM EV1 スペシャル対談
6000万画素センサーでMレンズの性能を引き出す
「ライカM11」をベースにした6000万画素フルサイズ裏面照射型CMOSセンサーと画像処理エンジン LEICA MAESTRO III を搭載。立体感あふれるライカらしい画質が得られる。
「ライカM EV1」の詳しい情報はこちらからチェック!

LEICA M EV1

大門美奈×中藤毅彦 ライカM EV1 スペシャル対談
2025年11月1日発売 1,397,000円 (税込)

撮像素子 有効約6030万画素 フルサイズ裏面照射型CMOS センサー
画像処理エンジン LEICA MAESTRO III
マウント ライカM バヨネットマウント (6ビットコード装備)
ISO 感度 ISO64~ISO50000
シャッター速度 60分~1/4000秒 (電子シャッター 60秒~1/16000秒)
ファインダー 576万ドット 有機ELファインダー (倍率0.76倍)
液晶モニター 2.95型 約233万ドット液晶 (タッチパネル)
記録媒体 SD/SDHC/SDXCメモリーカード (UHS-II対応)、内蔵メモリー 64GB
幅×高さ×奥行き 138.8×80.3×38.5mm
質量 約402g (バッテリー含まず)、約484g (バッテリー含む)

 

中藤毅彦

中藤毅彦 (Takehiko Nakafuji)
1970年、東京生まれ。東京ビジュアルアーツ卒。ギャラリー・ニエプス代表。ストリートスナップを撮り続けている。ライカとの出会いは学生の時に初めて手にした「ライカM3」。現在の愛機は「ライカM11」、フィルム機は「ライカM5」「ライカM3」「ライカA型」。
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大門美奈

大門美奈 (Mina Daimon)
2013年よりデジタルライカを使用。以来、ライカMシステムやライカSLシステムを使用した作品制作を続けている。個展・グループ展多数開催。代表作に「浜」、ライカ GINZA SIXでは新橋芸者を撮り下ろした「新ばし」を開催。
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〈協力〉ライカカメラジャパン株式会社