『CAPA』本誌連動企画として公開している、CAPAフォトコンテスト「学生の部」ピックアップ作品レビュー。今回は『CAPA』2026年2月号で惜しくも選外となった作品の中から、審査員の須藤絢乃先生が目を留めた “気になる作品” をピックアップしてアドバイスします。さらなるレベルアップのためのヒントが満載です!
〈講評〉須藤絢乃
黒面の従者
藤原未悠 (16歳 / 豊川高等学校 / 写真部)

顔が真っ黒に覆われた甲冑姿の人物と、可愛い柴犬の対比が面白い。柴犬も一丁前に陣羽織風の服を着ているところも何とも愛らしいです。良い写真を撮るぞと狙いすぎず、作者が面白く楽しく撮影している姿が目に浮かびました。柴犬を大きく画面に取り入れながら、人物と刀の収め方もとても上手で、日々の修練が生かされていますね。
独りの森
中野友琳奈 (15歳 / 神奈川県立川崎北高等学校 / 写真部)

デジタルカメラにおいて、緑色の表現は難易度が高いと思っているのですが、シダ系植物の木陰の中で発光するような、えも言われぬなまめかしい緑がよく再現されています。しっとりとしたシャツを着た学生服の人物が不穏で危うげな存在感を出していて、心がザワザワと波立ちました。大きな木と人物の対比も好きです。
春色家族
長脇実可 (18歳 / 皇學館高等学校 / 写真部)

一見、ごく一般的な桜と家族の記念写真ではありますが、人物を首から上に大胆に切り取っていることで、一人一人の顔立ちや表情に目が行き、彼らが紛れもなく親族であること、家族の「血」のようなものが生々しく立ち上がってきて、興味深い写真に見えてきました。ひとたびそういうものが見えてくると、彼らの背面から手を広げるように咲いた桜も、恐るべき生命力の象徴として感じられます。撮影やプリント技術はものすごく高いものではないけれども、だからこそ、真を写す装置 (カメラ) と作者の感性が無垢な形で表れています。