
映像制作の現場において、「機動力」と「画質」のバランスは永遠の課題です。特に、私たちのようにドローンやジンバルを多用するクリエイターにとって、カメラの形状とスペックは死活問題と言っても過言ではありません。今回は、キヤノンから2025年11月27日に発売された話題のシネマカメラ「EOS C50」を、実際のロケ現場で2週間徹底的に使い倒してきました。FPVドローンによる空撮や、海外でのVlog撮影など、過酷な現場を知るプロデューサーの視点から、その実力を伝えていければ思います。
なぜ今、この「箱」を選ぶのか
はじめまして、映像プロデューサーの小林佑誠です。普段は「DRONE UNCHARTED」という事業で、FPV (First Person View) ドローンやマイクロドローンを駆使した特殊撮影や、企業のプロモーション映像制作を行っています。
今回、CAPA編集部を通じてシネマカメラ「EOS C50」をお借りする機会をいただきました。正直なところ、箱を開けた瞬間に「これは現場が変わる」と直感しました。これまで私は、ロケ撮影の機動力を重視して機材を選んできました。しかし、この「EOS C50」を使った2週間で、私のカメラ選びの基準は大きく揺らぐことになりました。

今回は、単なるスペックの羅列ではなく、「自作ドローンに搭載できるか?」「ワンオペの海外ロケで通用するか?」といった、かなり運用に近い視点でレビューをお届けします。
シネマカメラの「最適解」は四角だった
まず、外観を見て驚かされるのがそのコンパクトさです。「四角いパッケージ」にすべてが詰まっている。この潔さが素晴らしいですね。

これまでのシネマカメラは、どうしてもリグを組む前提の「パーツ」のような存在か、あるいは大きすぎて取り回しに苦労するものでした。しかし「EOS C50」は、手に持った瞬間の収まりが抜群に良いのです。映像も写真も「エピック (映画的)」に撮れるオールインワン機として、完成されています。
特に私が感動したのは、リグ組みの自由度です。FPVドローンの世界では、撮りたい映像に合わせてカメラマウントを自作することも珍しくありません。複雑な形状のカメラは固定方法に悩みますが、真四角な「EOS C50」は上下左右どこからでも固定しやすく、ケージへの収まりも抜群。機体の下に吊り下げる「トップマウント」の構築も容易で、「アングルの制約から解放された」という感動がありました。
今回はスピードが出やすいプロペラガードがない機体でしたが、シネフープ型のプロペラガードがある機体だとリグの自由度も増え、さらに重心位置も安定するでしょう。

「オープンゲート」が制作フローを変える
今回の「EOS C50」、最大のトピックは間違いなく「オープンゲート」への対応です。ここに関しては、少し熱く語らせてください。

オープンゲートとは、センサーの領域を16:9にトリミングせず、3:2や4:3のフルサイズで記録する機能のこと。「なぜそれが重要なの?」と思われるかもしれません。しかし、私たち映像制作者にとって、これは革命的なんです。
例えば、ドローンや手持ちで撮影した映像に、後処理で強力なスタビライズ (手ブレ補正) をかけるとします。通常の16:9で撮影していると、補正によって映像の端がクロップされ、画角が狭くなったり、解像感が損なわれたりします。しかし、オープンゲートで広く撮っておけば、上下の余白を使ってスタビライズをかけても、最終的な4K出力を劣化なしで切り出せるのです。

「キヤノンがついにこれをやってきたか!」というのが、正直な感想です。オープンゲート非対応のカメラでは、アナモフィックレンズ愛用者や、私のような「後処理で構図を追い込む」タイプのクリエイターにとっては長年の悩みでした。「EOS C50」は、そこを完璧にクリアしてきました。「解像度を動画で贅沢に残せる」。これだけで、「EOS C50」を選ぶ理由になります。
7K RAWという「諸刃の剣」
もちろん、良いことばかりではありません。プロとして、運用面のリアルなコストについてもお伝えする必要があります。
「EOS C50」は驚異的なスペックを持っています。
- 7K RAW収録
- オープンゲート対応
- 4K 120fps
- 最高ビットレート RAW ST 1800Mbps
※最軽量 XF-HEVC S 360Mbps (SDカード収録可能)
この「1800Mbps」という数字、ピンときますか? 通常のYouTube動画などが約100Mbps程度だとすると、その約18倍のデータ量です。正直、7Kのオープンゲートを常用するには、PCのスペック、ストレージの容量、そして高価なCFexpressカードへの投資が不可欠です。

「ゲートを開けたいなら、そのデータ量を受け入れろ」。キヤノンからそう突きつけられているような気がしますね。ただ、そのコストを払ってでも得られる画質の密度はとても美しいのも事実です。
バッテリーの持ちも相まって抜群の機動力
2週間のテスト中、特に懸念していたのがバッテリー持ちです。かつての「EOS R5 C」などは、バッテリーの消耗が激しいことが課題でした。しかし、「EOS C50」で採用された新型の「LP-E6P」バッテリーは、良い意味で期待を裏切ってくれました。

私の感覚ですが、バッテリーが3本あれば、要所を押さえるロケなら1日回せます。今回お借りしたのは2本ですが、短い尺のPV撮影なら給電なしでも十分実用的ですし、長時間回しても3本あれば安心だと思います。
また、入出力端子も実際の運用を配慮した「わかっている」仕様です。
- フルサイズHDMI (現場モニターへの出力に必須)
- フルXLR端子 (同梱のトップハンドルに搭載)
- タイムコード端子
これらが、この小さなボディに全て収まっている。「EOS C80」と比較しても、バッグの中での占有体積が圧倒的に小さい。これは、移動の多い旅系Vloggerや、私のように機材を背負って山に登るクリエイターにとって、何物にも代えがたいメリットです。
- 小林佑誠 (Yusei Kobayashi)
- 映像制作会社に4年間勤務後、フリーランスとして独立。CM・MVを中心に、映像プロデューサー / 自作FPVマイクロドーンでの撮影を軸に活動している。映像プロデュース作品に、短編ドキュメンタリー『YUMEKI His Journey and Future Unveiled プロになるまでの18年間』(Amazon Prime Video)。2023年8月より自作ドローンラボ「YDL」立ち上げメンバーとして参画し、現在も継続して制作・検証を行う。全国の離島をドローンで撮影し都内で上映するプロジェクト「RAVEN」にもメンバーとして参加。
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