機材レポート

ライカ ノクティルックスM f1.2/35 ASPH. 実写レビュー! 探究心がそそられるF1.2の描写力

ライカにはズミルックスやズミクロンなど、いくつかのラインアップがあるが、同じ焦点距離の単焦点レンズでも種類によって、レンズの個性が大きく変化する。それがライカレンズの面白さだろう。

ライカ ノクティルックスM f1.2/35 ASPH. 実写レビュー
ライカM EV1 + ノクティルックスM f1.2/35 ASPH.

ノクティルックスに35mmが新登場

今回新たに追加になった「ノクティルックスM f1.2/35 ASPH.」は、F0.95やF1.0、F1.2と非常に明るいF値を持つノクティルックスのラインアップとなる。大口径ならではの大きなボケと、柔らかくとろけるようなボケの質感が特徴的なレンズシリーズである。

今までの歴史を簡単に見てみると、初代「ノクティルックスM f1.2/50mm」が1966年に発売されてから、F1.0、F0.95と時代に合わせて明るくなり、2018年には75mmが追加された。本レンズは初の35mmという広角のノクティルックスになる。

ライカ ノクティルックスM f1.2/35 ASPH. 実写レビュー
ライカM EV1 ノクティルックスM f1.2/35 ASPH. 絞り優先オート F4.8 1/320秒 -0.3補正 ISO200 WB : 晴天

35mmという焦点距離はストリートを撮影するのにマッチする。狭い路地でも広く表現できるため、手前のシャドー部分から奥の市場の賑わいまでバランスよく撮影することができた。また、周辺光量落ちが中央付近の光へと視線誘導してくれる。

35mmかつF1.2という大口径ではあるが、フィルター径はE49 (49mm)、重量約416g、長さ約50.2mmと小ぶりで軽量だ。それでいてライカならではの高級感がある。フォーカスリングの滑らかなトルク、金属鏡筒の質感、絞りリングのクリック感など、手触りの良さやレンズとしての美しさがある。

レンズ構成は5群10枚となり、3枚の非球面レンズを使用。また、レンズフードは内蔵になっており、撮影時は繰り出して使用する。今までのノクティルックスとの大きな違いは最短撮影距離だろう。50cmまで近づいて撮影できるため、被写体に寄って撮影したり、広角ならではの遠近感を生かしたりした撮影も楽しめるだろう。

ライカ ノクティルックスM f1.2/35 ASPH. 実写レビュー
ライカM EV1 ノクティルックスM f1.2/35 ASPH. 絞り優先オート F1.2 1/250秒 -0.7補正 ISO200 WB : 晴天

金属の質感が美しかったので、反射する光を表現するため、モノクロに設定した。また、最短撮影距離の50cmギリギリまで近づいて撮影することで、より質感が伝わりやすい写真に仕上がった。ピント位置を拡大しながら、ファインダーで撮影を行なっている。

「ライカM EV1」と組み合わせてスナップ

今回は「ノクティルックスM f1.2/35 ASPH.」に「ライカM EV1」を組み合わせて香港へと旅立った。到着後、すぐにスナップへ出かけたが、すぐにノクティルックスの描写の美しさに魅了されることとなった。F1.2ならではのとろけるような柔らかいボケが美しく、ピントが合った被写体と背景を絶妙に分離させ、絵に立体感が生まれる。

開放のF1.2ではピント面は芯のある柔らかさで、品のある描写だ。自然と主被写体が目立ち、主題が明確になる。そして、このビネットのグラデーションがなんとも言えない味わいを表現してくれる。

ライカ ノクティルックスM f1.2/35 ASPH. 実写レビュー
ライカM EV1 ノクティルックスM f1.2/35 ASPH. 絞り優先オート F1.2 1/6400秒 +0.3補正 ISO64 WB : 晴天

雲ひとつないスッキリとした空だったため、F1.2に設定し、周辺光量落ちを利用して空にグラデーションを作った。ビネット好きの私としては、こういうシーンは絞り開放で撮影したくなる。

今回撮影していて感じたのは「ライカM EV1」の利便性だ。今までノクティルックスのように被写界深度が浅いレンズを使用するときは、じっくりと被写体と向き合いながら、ゆっくりとピントを合わせていく撮影スタイルだったが、「ライカM EV1」はピント位置を拡大しながらファインダー撮影が行なえるため、正確かつ素早いピント合わせが可能だ。

今まではレンジファインダーのカメラでノクティルックスを使用していたが、ピントの微調整に限界があった。「ライカM EV1」を使用することでピントの山が掴みやすくなり、ノクティルックスの性能をしっかりと発揮できているように思う。

というのも、今回撮影して感じたのは、開放のF1.2でも柔らかながら被写体のディテールを細かいところまで解像してくれている点だ。被写界深度の浅いレンズのため、ピント位置が少しでもずれてしまうと、ピントを合わせたはずの被写体が柔らかく写ってしまう。ノクティルックスと「ライカM EV1」の相性は抜群に良い。

ライカ ノクティルックスM f1.2/35 ASPH. 実写レビュー
ライカM EV1 ノクティルックスM f1.2/35 ASPH. 絞り優先オート F1.2 1/350秒 -0.7補正 ISO80 WB : 晴天

犬を連れていた方に声をかけて撮影させてもらった一枚。手前のトイプードルにピントを合わせている。キョロキョロと顔を動かしながら、愛嬌のある顔でこちらを向いた瞬間に撮影を行なった。絞り開放ではピント合わせが難しいシーンだが、「ライカM EV1」のおかげで瞬時にピントを合わせることができた。

また、最短撮影距離の50cmで撮影するシーンにも便利だ。レンジファインダーを搭載する機種は70cmまでしかファインダーで撮影できないが、「ライカM EV1」と組み合わせることで、70cmの垣根を気にすることなく撮影に集中できる。

香港は今まで何度も訪れている国だが、F1.2ならではの描写を堪能しているうちに、いつもの旅よりも多めに写真を撮っていた。「このシーンをF1.2で撮ったらどんな風に表現できるだろう」という探究心がシャッターを押す回数を増やしてくれた。

ライカ ノクティルックスM f1.2/35 ASPH. 実写レビュー
ライカM EV1 ノクティルックスM f1.2/35 ASPH. 絞り優先オート F1.2 1/180秒 -1補正 ISO1600 WB : 晴天

街灯のグラデーションが美しかったため、カラーに設定し、少しローキーめの露出に設定した。街灯の下付近に置きピンをしておき、人や車、バイクが通り過ぎる瞬間を何枚か撮影した。それにより、街灯に照らされたバイクの後ろ姿が引き立った。F1.2で撮影すると、手前を歩く人物が程よくボケてくれて、立体感のある写真となった。

絞りの変化による画質をチェック

F値の違いによるレンズの描写を知りたいと思ったため、カメラを固定し、F値を変更しながら撮影を行なった。

■F1.2

ライカ ノクティルックスM f1.2/35 ASPH. 実写レビュー

■F1.4

ライカ ノクティルックスM f1.2/35 ASPH. 実写レビュー

■F2

ライカ ノクティルックスM f1.2/35 ASPH. 実写レビュー

■F2.8

ライカ ノクティルックスM f1.2/35 ASPH. 実写レビュー

■F4

ライカ ノクティルックスM f1.2/35 ASPH. 実写レビュー

■F5.6

ライカ ノクティルックスM f1.2/35 ASPH. 実写レビュー

■F8

ライカ ノクティルックスM f1.2/35 ASPH. 実写レビュー

共通データ
ライカM EV1 ノクティルックスM f1.2/35 ASPH. 絞り優先オート F1.2~8 1/6400秒~1/320秒 ISO64~80 WB : 晴天

F1.2の描写はノクティルックスならではの柔らかさがあるが、思ったよりもシャープに表現している。ただ、軸上色収差が見受けられる。

F2に絞ることで、さらにシャープさが増し、軸上色収差も改善される。ノクティルックスは開放F値の柔らかさと、F2に絞った時のシャープさという、この二面性を楽しめるレンズだろう。

そして、周辺光量落ちに関してはF2.8くらいから落ち着いてくる印象だ。遠景などを撮影するときは、どのくらい周辺を落としたいかでF値を変更するのも良いだろう。

ライカ ノクティルックスM f1.2/35 ASPH.

ライカ ノクティルックスM f1.2/35 ASPH. 実写レビュー

発売日 2026年2月11日
参考価格 1,650,000円 (税込)

対応マウント ライカMマウント
焦点距離 35mm
レンズ構成 5群10枚 (非球面レンズ3枚)
絞り羽根枚数 11枚
開放絞り F1.2
最小絞り F16
最短撮影距離 0.5m
最大撮影倍率 1:11.6
フィルター径 E49 (49mm)
最大径×長さ 約φ64.6×50.2mm
質量 約416g