最近、フィルムの生産終了などフィルムカメラユーザーには残念な報が続いているが、2018年5月30日にキヤノンが現行機種としては同社唯一のフィルム一眼レフとなっていた「EOS-1v」の販売終了を発表。これにより、フィルムカメラ市場から実質的に撤退し、カメラに関しては販売も含めて、デジタルに一本化することとなる。
右下が「EOS-1v」、左上が「EOS-1v HS(パワードライブブースターPB-E2装着)」。2000年3月に登場し、18年以上に渡って販売され続けた「EOS-1v」。キヤノン最後のフィルム一眼の販売終了に寂しさを感じる。これで、国内大手メーカー製のフィルムAF一眼レフは「ニコン F6」のみとなってしまった。とはいえ、デジタル一眼全盛の現在まで、よくぞ販売し続けてくれたとも思う。
「EOS-1v」は、EOSシリーズのフラッグシップ機として1989年に登場した「EOS-1」、1994年登場の「EOS-1N」に続く3代目のモデルで、マグネシウム合金外装や防塵・防滴仕様、視野率約100%のファインダーを採用するなど、いわゆる“ プロ仕様 ”の一眼で、連写も「パワードライブブースターPB-E2」装着(EOS-1v HS仕様)時に約10コマ/秒を実現。現在でもフィルムを愛用するハイアマチュアなどから高い支持を得ている1台だ。ただ、キヤノンは10年ほど前にはフィルム一眼の新規開発を行わないことを発表しており、「EOS-1v」の生産も2010年には終了。在庫を出荷している状況だったという。
今回の販売終了の発表によって、今後「EOS-1v」を入手するには、一部の流通在庫か中古市場からということになる。とはいえ、プロを含む数多くのユーザーが愛用しているカメラということもあって、サポートに関しては手厚い。キヤノンの修理サービス規約で定めた修理対応期間は2020年10月31日までだが、部品の在庫がある限り、2025年10月31日まで修理対応を行うということなので、今後しばらくは安心して使える状況といえる。
ちなみにキヤノンのフィルムカメラは、1934年登場の試作機で国産初の35㎜フォーカルプレーンシャッターカメラである「Kwanon(カンノン)」以来、約85年の歴史を持つ。一眼レフは、1959年登場の「キヤノンフレックス」(Rマウント採用)が初。その後、FLマウント、FDマウントとレンズマウントなどを改良しながら、1971年にキヤノン初の“ プロ機 ”といえる「F-1」が登場。1981年には「New F-1」に進化している。
現在に続くAF一眼レフのEOSシリーズは、1987年登場の「EOS 650 / EOS 650 QD」が初号機。その時点でレンズマウントもFDからEFマウントに一新しているが、その後はレンズの互換性が高く、新旧のボディとレンズを組み合わせても問題なく使用できる高い互換性を誇り、30年以上前のレンズが最新のデジタル一眼レフでもほぼ問題なく使用できる(その逆も可)。
フィルムカメラとしてはその約85年の歴史に幕を閉じるEOS-1シリーズだが、その基本的な操作性や設計思想は、最新のデジタル一眼レフ「EOS-1 D X Mark II」などに息づいている。今後も、デジタル一眼のフラッグシップ機などに、その歴史や伝統が継承され、EFレンズと共に発展し続けるだろう。
〈文〉河野弘道