6月1日は「写真の日」。毎年各地で、さまざまな写真関連のイベントが開催されている。公益社団法人 日本写真協会(PSJ)が行なう「日本写真協会賞」の表彰と「東京写真月間」のオープニングセレモニーもそうした恒例イベントの一つだ。
「日本写真協会賞」は、日本の写真界や、写真文化に顕著な貢献をした個人や団体に対して贈られる賞。国際賞、功労賞、作家賞、学芸賞、新人賞の各賞は、協会員と委嘱したノミネーター(有識者)によって推薦された候補者の中から、その年の選考会が各賞の受賞者を決定する。今年度の選考委員は写真家の織作峰子さん、中里和人さん、野町和嘉さん、キュレーター・映像作家の小原真史さん、日本カメラ編集長の佐々木秀人さんの5名だった。
潮田登久子さん『本の景色』より
国内で優れた写真作品を近年継続して発表し、写真界に多大な影響を及ぼした個人に贈られる「作家賞」を受賞したのは、潮田登久子さん。「実直な眼差しと並外れた集中力と持続力、そして探究心の深さを、美しいプリントによって今の時代に蘇えらせた三部作『先生のアトリエ』『みすず書房旧社屋』『本の景色』は、長い時間をかけて撮影をされた力作であり、写真との向き合い方の真髄を教える」というのが受賞理由だ。潮田さんは今年、『本の景色』で第37回土門拳賞と第34回東川賞国内作家賞も受賞している。
潮田さんは受賞の喜びを語るとともに、写真展で昨年お世話になった斎藤寿雄さんとニコンサロンが、自身と同じ年に功労賞を受賞したことの縁を語った。
新人賞を受賞した奥山淳志さん(左)の選考対象となった写真集・写真展『弁造 Benzo』は、北海道の原野にひとり暮らす開拓農民の弁造さんを追ったもの。彼の控えめで濃密な日常空間をめくりながら、写真表現の新たな地平を開いた。
同じく新人賞を受賞した佐藤岳彦さん(右)は、これまでの野生生物写真の既成概念を打ち破る圧倒的な画質力、クオリティの高さによる高精細かつ美しい作品群が評価された。数日前までジャングルの中で生活していたため、輝かしい場所に戸惑っているとコメントした。
左:奥山淳志さん『弁造 Benzo』より
右:佐藤岳彦さん ヤマトタマムシ『生命の森 明治神宮』より
2018年日本写真協会賞受賞作品展は、富士フイルムフォトサロン東京で2018年6月7日(木)まで開催中。
今年50周年を迎えたニコンサロンが功労賞を受賞。株式会社ニコンの代表取締役兼社長執行役員・牛田一雄さん(左)が受賞の喜びを述べた。ニコンサロンは、これまで4000回にもおよぶ展示を重ね、その写真文化活動が日本の写真家の育成に大きく貢献し、裾野を広げてきた。日本の写真を形成する重要な一翼を担ってきた稀有な活動に対して贈られた。
同じく功労賞を受賞した斎藤寿雄さん(右)は、60年以上にわたり銀塩モノクロームプリントを中心に、数多くの写真家のプリントを手掛けてきた。長年に渡り、プリンターとして写真家の足元を支えて続けてきた功績が高く評価された。
国際賞は、長年に渡り「日本写真」の収集・研究・展示を継続的に行なってきたサンフランシスコ近代美術館写真部門のキュレーター、サンドラ・フィリップスさん(左)。学芸賞は、2017年に『異郷のモダニズム−満洲写真全史』展を開催した名古屋市美術館の学芸員・竹葉丈さん(右)が受賞した。
続いて行われた「叙勲・褒賞祝賀」では、平成29年度文化功労者の杉本博司さん、旭日重光賞を受賞した細江英公さん、黄綬褒章を受賞した小山博さん、そして平成30年度春に黄綬褒章を受賞した山本吉男さんが紹介され、出席していた細江英公さん(写真)、小山博さんがコメントを述べた。
「東京写真月間2018」のオープニングセレモニー。国内企画展『農業文化を支える人々−土と共に−』が紹介され、エプソンイメージングギャラリー エプサイトで写真展『農業女子に会いたい』を6月7日(木)まで開催中の山岸伸さんが代表して、農業女子を撮影する際の苦労話などをコメントした。
東京写真月間の15回目を迎える国際展『アジアの写真家たち』は、スリランカの写真家を迎えてプレイスM、キヤノンオープンギャラリー2、新宿ニコンサロン、ソニーイメージングギャラリーの4つのギャラリーで開催(一部終了したものもある)。今回、スリランカから8名の写真家、スタッフが来日し、スリランカ写真家協会を代表して挨拶した会長のロメッシュ・デ・シルバさんから、日本写真協会に記念品が贈られた。
〈写真・文〉柴田 誠