キヤノンは、35mmフルサイズセンサーを搭載したミラーレスカメラ「EOS R」とRFレンズによる「EOS R システム」を2018年9月5日に発表した。新開発のRFマウントを採用したカメラボディと4本のレンズが登場したが、マウントアダプターを使用することで従来のEFマウントレンズ約70本も使用可能になる。発表会終了後のタッチ&トライで、さっそく「EOS R」を手にしてみた。
■新開発の大口径RFマウント
RFレンズを外すとすぐにセンサーが見える。ミラーレスの構造からすれば当然だ。さらに1段、光学性能を上げるために開発されたRFシステムだが、RFマウントの内径はEFマウントと同じ54mm。ショートバックフォーカスと呼ばれているフランジバックは20mmで、ニコンZシステムよりもマウント内径で1mm小さく、フランジバックで4mm長い。
■外観は一眼レフと大差なし
「EOS R」の上面は、キヤノンEOSシリーズらしさを感じさせる緩やかなカーブを描くデザインで、防塵・防滴構造となっている。全体的にオーソドックスな印象で、奇をてらった感じはない。グリップ先端からモニター面までのボディの厚みは67.7mmだが、コンパクトな EOS kiss シリーズを見慣れているせいか、あまり薄くなった印象はない。W135.8×H98.3×D84.4mmのボディサイズは、エントリー一眼レフ「EOS kiss X9i」(W131.0×H99.9×D76.2mm)よりもやや大きく感じられる。APS-Cミラーレス「EOS kiss M」(W116.3×H88.1×D58.7mm)と比べると、ミラーレスカメラという感じさえしなくなる。
■ボディ各部にもEOSらしさが
背面の液晶モニターは、バリアングルのタッチパネル液晶を搭載する。3.15型・約210万ドットの高解像度となっている(ちなみにフルサイズ一眼レフ「EOS 6D Mark II」は3.0型・約104万ドット)。
SDカード対応のメディアスロットはボディ側面に1つ設けられている。約3030万画素の画素数から見てもこれで充分と言えるのかもしれないが、スペック的に上位機種の登場を予感させるものが随所に見られる。
ボディ左側面にはEOSシステムで見慣れた端子が並んでいる。左上からリモコン、マイク、ヘッドフォンの各端子、右にはUSB、HDMIの端子が並んでいる。
バッテリーは「EOS 6D Mark II」などでも使用されているLP-E6Nが採用されている。バッテリーやアクセサリーが共通なのは、従来のシステムと併用するにしても移行するにしても嬉しいことだ。
メニュー画面もEOSシステムで見慣れた表示となっている。背面のボタン類の配置もEOSユーザーなら迷うことなく使うことができるだろう。
■マルチファンクションバーで機能呼び出し
ファインダー脇に新たに設けられたマルチファンクションバー。撮影時には触れても反応しないようになっており、バー左側の矢印を1秒ほど押すと割り当てられた機能が働くようになる。
マルチファンクションバーの設定画面。ISO感度やホワイトバランスといった撮影機能を割り当てることができる。レンズやマウントアダプターのコントロールリングにもさまざまな機能を割り当てることができるので、カスタマイズ性はかなり高くなっている。
■露出モード「Fv(フレキシブルAE)」を新搭載
「EOS R」で初搭載されたFvモード(フレキシブルAE)は、シャッタースピード、絞り、ISO感度を、AUTOまたは任意で設定することのできる撮影モードだ。すべてをオートにしたPモード(プログラムAE)の状態から十字キーを使ってAv/Tv/M/ISO感度を変えて露出を変えることができる。ただし、Pモードで操作できるマニュアルシフトには対応していない。実際の撮影で使い勝手を試してみたい機能の一つだ。
■4本のRFレンズ
大口径標準ズームレンズ「RF28-70mm F2 L USM」(税別420,000円/2018年12月下旬発売予定)は、ショートバックフォーカスをいかしてハイスペックと高画質を追求したレンズ。13群19枚のレンズ構成で、重さ約1430g。フィルター径95mmの前玉はかなり大きく感じられ、標準ズームとしてはヘビー級のレンズだ。
RFレンズはレンズマウント側から、ズームリング、ピントリングが設けられており、赤いラインの手前がコントロールリングになっている。コントロールリングにはクリックが設けられている。
「RF50mm F1.2 L USM」(税別325,000円/2018年10月下旬発売予定)は、高画質を追求した大口径標準単焦点レンズ。最大径89.8mm、重さ約950gで、フィルター径は77mmとなっている。
ハーフマクロ「RF35mm F1.8 マクロ IS STM」(税別75,000円/2018年12月下旬発売予定)と「EOS R」にバッテリーグリップ「BG-E22」(税別34,900円/2018年10月下旬発売予定)を装着した状態。レンズ鏡筒部にはAF/MFの切り替えスイッチとスタビライザーのON/OFFスイッチが設けられている。バッテリーグリップ「BG-E22」には、バッテリーパックLP-E6/LP-E6Nを2本装填可能。
標準ズームレンズ「RF24-105mm F4 L IS USM」(税別155,000円/2018年10月下旬発売予定)は、ボディとのバランスがいいレンズだ。「EOS R」は、ボディ単体での販売となるためキットレンズはないが、ボディと同時発売予定の「RF24-105mm F4 L IS USM」か「RF50mm F1.2 L USM」が常用レンズとなるだろう。
■4種類のマウントアダプターでEFレンズが使える
RFマウントにEFレンズを装着可能にするマウントアダプターは4種類用意されている。これは、コントロールリングを備えた「コントロールリング マウントアダプター EF-EOS R」。コントロールリングにシャッター速度や絞り値などの機能設定を割り当てることができ、コントロールリングのないレンズでもコントロールリングの使い勝手を得ることができる。
70-200mmの望遠ズームレンズに「コントロールリング マウントアダプター EF-EOS R」を装着した状態。望遠レンズの手持ち撮影では、レンズの重さがあるため手元のコントロールリングを操作するのはかなり苦労する。
100mmマクロレンズに「コントロールリング マウントアダプター EF-EOS R」を装着した状態。この程度の大きさのレンズなら、レンズをホールドしている指でコントロールリングの操作が可能だ。
左から「マウントアダプター EF-EOS R」(税別15,000円/2018年10月下旬発売予定)、「コントロールリング マウントアダプター EF-EOS R」(税別30,000円/2018年10月下旬発売予定)、「ドロップインフィルター マウントアダプター EF-EOS R ドロップイン 円偏光フィルター A付」(税別45,000円/2019年2月下旬発売予定)、「ドロップインフィルター マウントアダプター EF-EOS R ドロップイン 可変式NDフィルター A付」(税別60,000円/2019年2月下旬発売予定)。
■キヤノン EOS R
2018年10月下旬発売予定
オープン価格(キヤノンオンラインショップ直販価格:税別 237,500円)有効画素数 約3030万画素
撮像素子 CMOSセンサー(撮像画面サイズ 約36.0×24.0mm)
マウント キヤノンRFマウント
ISO感度 ISO 100〜40000(拡張 ISO 50相当/51200相当/102400相当)
シャッター速度 1/8000~30秒
ファインダー 0.5型 約369万ドット 有機ELカラー電子ビューファインダー [倍率]約0.76倍
画像モニター 3.15型 約210万ドット TFT式カラー液晶モニター
記録媒体 SD/SDHC/SDXCメモリーカード(UHS-I・II対応)
サイズ(幅×高さ×奥行き) 約135.8×98.3×84.4mm
質量 約580g(本体のみ)/約660g(バッテリー、メモリーカードを含む)
付属品 バッテリーチャージャー LC-E6、バッテリーパック LP-E6N、インターフェースケーブル IFC-100U プロテクター、インターフェースケーブル IFC-100U(コアなし)、ストラップ ER-EOS R
〈文〉柴田 誠 〈写真〉青柳敏史