ニュース

写真で子どもの自信を引き出す「ほめ写」とは?

若者の意識に関する調査で、「日本は先進諸国と比較して自己を肯定的に捉えている者の割合が低い」という結果が内閣府から発表され、対応策の検討が急務とされている。この現状を踏まえ、教育評論家の親野智可等(おやのちから)さんは自己肯定感の高い子どもの家庭には写真が貼られていることが多いことに着目し「ほめ写プロジェクト」を発足、2018年8月29日より本格始動した。

ほめ写プロジェクト
 

日本を含めた7か国の満13~29歳の若者を対象とした意識調査(平成25年度)

ほめ写プロジェクト
 

「ほめ写プロジェクト」は、写真を貼ってほめることで、子どもの自己肯定感を向上させるという新しい子育て習慣を広めていく活動だ。構成メンバーは発起人の親野さんと、脳科学者の篠原菊紀さん、発達心理学者の岩立京子さん。写真が子どもの自己肯定感に与える影響について、意識調査や実証実験、脳測定を行い、次のような調査結果を公表している。

 

自己肯定感に関する意識調査

調査対象は幼稚園児から小学生(4~12歳)とその親、合計600組。WEBによるアンケート調査を行い、子どもの写真を飾っている家庭とそうでない家庭で、子ども自身の自己肯定感を比較。写真を飾っている子どものほうが、「自分は頑張ることができる」「よいところがある」など8つの項目で有意差が確認された。子どもが写真プリントから親の愛情を感じ、自分を肯定的に捉えていると思われる。

■子ども自身の自己肯定感:写真掲出の有無による有意差が確認された項目

ほめ写プロジェクト

■親から見た子どもの自己肯定感:写真掲出の有無による有意差が確認された項目

ほめ写プロジェクト

 

「ほめ写」実験

調査対象は普段、写真を飾っていない家庭の幼稚園児から小学生(4~12歳)とその親、合計32組。3週間にわたり、子どもの写真や家族と一緒に写っている写真を飾って子どもをほめるという「ほめ写」を実験。親子ともに自己肯定感に関する意識や行動に前向きな変化が見られた。

■子ども自身の自己肯定感:事前事後アンケート結果

ほめ写プロジェクト

■親から見た子どもの変化

ほめ写プロジェクト

 

脳活動測定

上記の「ほめ写」実験に参加した小学生16名(低学年8名・高学年8名)と、参加しなかった小学生8名(低学年4名・高学年4名)に脳活動測定を実施。前者は写真プリントで、後者はスマートフォン画面で、どちらも子どもと家庭の写真10枚と関連性のない風景写真5枚を見せ、脳活動の変化を観測。

脳活動測定① 自分の写真を見たときの腹内側前頭前野の活性度が自己肯定感に関連する

「ほめ写」実験の事後アンケートで自己肯定感のスコアが高かった子どもほど、自分の写真を見たときに心地良さと関連する部位である「腹内側前頭前野」が活性化。有意な正の相関性が見られた。

■腹内側前頭前野の活性度と自己肯定感アンケートの相関
ほめ写プロジェクト
 

脳活動測定②「ほめ写」体験者は非体験者より、子ども(自分)の写真を見たときに、腹内側前頭前野が活性化

■写真を見たときの脳活動
ほめ写プロジェクト
 

■子どもの写真を見たときの腹内側前頭前野(ch44)の脳活動に関してほめ写体験群と非体験群の比較
ほめ写プロジェクト

※子どもの写真を見たときと、関連性のない写真を見たときの酸素化ヘモグロビンの濃度の差の平均値

 

脳活動測定③「ほめ写」体験者は非体験者より、自分の写真を興味を持ってしっかり見ている

■空間認知的ワーキングメモリの活性度とほめ写体験群と非体験群の比較
ほめ写プロジェクト
 

脳活動測定①~③の結果から、「ほめ写」は自分の写真を見ることで肯定的な自己イメージと心地良さを結びつけることができるようになり、日常的にこの体験を重ねることで、自己肯定感が伸びる可能性が考えられる。
 

How to ほめ写

① 撮る:たとえばこんな写真
子どもが楽しそうにしている、活躍している、がんばっている時の写真。また、家族一緒のシーンなど、愛されていることを実感しやすい写真。

② 飾る:子ども目線で大きめに
子どもの目に留まりやすい高さに貼り出すことで、家族の愛情をより身近に。枚数は10枚以上を目安に、お気に入りの写真は、A4程度の大きめプリントがおすすめ。

③ ほめる:たとえばこんな言葉で
写真を見ながら「この時はがんばったね」「よくできたね」と努力や成果をほめるだけでなく、「生まれてきてくれてありがとう」「見ているだけで幸せな気持ちになる」など、子どもの存在そのものを肯定してあげよう。
 

ほめ写プロジェクト
 

「ほめ写プロジェクト」は今後、セミナーやイベントなどを通じて効果的な「ほめ写」の進め方や、子どもの自己肯定感を向上させるコツなどに関する情報を発信していく予定だ。
 

 

■ほめ写プロジェクト協力団体・企業
メインパートナー:富士フイルム株式会社
賛同団体:独立行政法人国立青少年教育振興機構、一般社団法人日本セルフエスティーム普及協会、NPO法人Fathering Japan、日本フォトイメージング協会、ニューバランス・ジャパン株式会社
 

 

〈文〉鬼沢幸江