2020年2月14日、パナソニックは同社初のフルサイズミラーレスカメラ「LUMIX S1R(DC-S1R)」「LUMIX S1(DC-S1)」の2モデルを発表。発売は3月23日の予定で、実売予想価格はLUMIX S1Rのボディ単体が税別46万4000円前後、24-104mm F4の標準ズームがつくレンズキットが税別57万6000円前後、LUMIX S1のボディ単体が31万4000円前後、24-104mm F4の標準ズームがつくレンズキットが税別42万6000円前後となっています。本稿では、その発表会の様子を、実機を触った感想などを交えつつ紹介します。
S1R/S1のトピックをおさらい
昨年秋にニコン、キヤノンが相次いで参入したフルサイズミラーレス市場。その衝撃も落ち着きかけたこのタイミングでパナソニックが新たに投入するLUMIX S1R/S1(以下、S1R/S1)とは、いったいどのようなカメラなのでしょうか。
上は発表会で提示された、S1R/S1の主要機能の一覧。特に目を引くポイントについて順番に見ていきましょう。
①高画素モデルの「S1R」と動画も得意な「S1」
S1Rは有効4730万画素のセンサーを搭載した高画素モデル。一方のS1は有効2420万画素のセンサーを搭載しているのですが、S1が単純にスタンダードモデルというわけでもないようです。後述しますが、S1はS1Rに比べてより動画機能が充実しており、発表会では「動画も静止画も撮るハイブリッドクリエーター向け」であると説明がなされていました。
発表会では、ゲストスピーカーとして写真家の相原正明さんが登壇。実際にS1Rで撮影した作例を挙げながら、その描写の魅力として階調(グラデーション)の豊かさ、色のヌケの良さについて語っていました。
②新たな表現を切り拓く「ハイレゾモード」と「HLGフォト 」
ボディ内手ブレ補正の機構を生かし、センサーをシフトさせながら連続撮影した画像を合成してより高解像な画像を生成する「ハイレゾモード」に対応。この機能を使用することで、S1で9600万画素、S1Rでは1億8700万画素相当の高解像写真を得ることができます。三脚の使用は必要ですが、精細感や臨場感を際立たせたい撮影で重宝するでしょう。
撮影機能関連でもう1つ注目したいのが、「HLGフォト 」機能です。HLG(ハイブリッドログガンマ)とは、HDRの代表的な規格のこと。この機能で撮影するとダイナミックレンジの広いHLG階調で記録されるため、高輝度のHLG対応ディスプレイで再生することによって、より臨場感のある写真鑑賞が楽しめます。
③フルサイズミラーレス初の4K/60p動画記録に対応
さすがはパナソニックというべきか、S1R/S1は動画機能にも力が入っています。その最たるものが4K/60p動画記録でしょう。特にS1は、4K/60pで29分59秒の撮影が可能(S1Rは15分)、4K/30pであれば時間無制限(温度制限あり)で記録可能という充実ぶり。さらに、4:2:2 10 bit 動画記録やV-Logにも有償で対応するようです。
そのほか、シャッター速度5.5段分のボディ内手ブレ補正の搭載(対応レンズと連動時は6段分)や、ディープラーニングの活用によって格段に進化したAF機能、防塵・防滴・耐低温設計の堅牢なボディなど、見どころの多いカメラとなっています。
ライカ「Lマウント」規格対応の「Sシリーズレンズ」を開発
海外発表での情報からすでにご存知の方も多いと思いますが、パナソニックはライカ、シグマとの戦略的協業「Lマウントアライアンス」を締結。今回のフルサイズミラーレスの参入に際して、新規のマウントではなくライカの大口径・短フランジバックの「Lマウント」を採用しています。これにより、既存のライカLマウントレンズが使用できるうえ、3社が開発を進めることでレンズラインナップが早期に充実していくことが予想されます。
パナソニックもLマウント規格のレンズとして新たに「Sシリーズレンズ」を開発。今回、「LUMIX S PRO 50mm F1.4」「LUMIX S PRO 70-200mm F4 O.I.S.」「LUMIX S 24-105mm F4 MACRO O.I.S.」の3本のレンズが発表されました。
このうち50mm F1.4、70-200mm F4 の2本は、ライカカメラ社の高い品質基準をクリアしたメーカーしか得られない認証「Certified by LEICA」を受けたハイグレードライン「S PROレンズ」となっています。また、今後のレンズ展開についてもロードマップが明かされました。
実機を触ってみたら「重いっ」、でも実に良い……
ここからは簡単なインプレをお届けしたいと思います(以下、写真のカメラはすべてS1R)。
まず、手に持って感じたのは、ミラーレスカメラとは思えない重量感。それもそのはず、S1Rはバッテリー、SDメモリーカード込みでまさかの1kg超え(約1016 g)。ニコン Z 6/Z 7が約675g、キヤノン EOS Rが約660gというように、他社のフルサイズミラーレスと比べると頭ひとつ抜けているのがわかります。ただ、カメラを構えた際のバランスは悪くなく、剛性感のあるボディからは高品位な印象を受けます。また、望遠レンズでの撮影時などは、この本体の重さのおかげで安定して撮影できそうです。
また、外観の大きな特徴としては、ファインダー部がかなり大きい印象です。約576万ドットと高精細で、視認性も良好。右手親指部分に搭載されたジョイスティックでフォーカスエリアを直感的に選択できるので、ファインダー撮影が快適に行えます。
背面のモニターはカメラを縦位置に構えた際にも有効な3軸のチルト式を採用。カードスロットはXQD/SDダブルスロットとなっています。
実機を触っていて思い出したのは、ゲストスピーカー・相原カメラマンの「(S1Rは)久々に『写真機』だと感じた」というお話。近年、カメラの高性能化が進むにつれ、ふと写真機ではなく「情報デバイス」を持っていると感じることがあったそう。一方、今回登場したLUMIX Sシリーズは、確かに重くはあるものの、手にしたとき不思議とワクワクした気持ちになりました。S1R/S1は、高いスペックを備えるだけなく、持つ喜び・撮影する楽しさといったものを思い起こさせてくれるカメラなのかもしれません。