天体撮影時にニュートン式反射鏡単体で撮影すると、視野周辺部では主に大きなコマ収差が発生してしまう。その放物面鏡特有のコマ収差を取り除いて画質を向上してくれる天体写真撮影用の補正レンズとして好評なのが、2015年に発売されたVixen（ビクセン）の「コレクターPH」だ。口径200mmF4、明るさとコストパフォーマンスで評価の高い、ビクセン天体望遠鏡の反射式鏡筒「R200SS」シリーズの接眼部にアダプターを介してカメラに接続して使う。
ただし「コレクターPH」は、焦点距離が0.95倍に短縮される。今回、同様の効果を得ながら、焦点距離を1.4倍（R200SS鏡筒の場合、800mm F4→1120mm F5.6） に延長できる製品「エクステンダーPHキット」が2019年2月27日（水）にビクセンから発売される。希望小売価格は68,000円（税別）。
3群4枚構成の光学系を採用し、コマ収差をハイレベルに補正。44mmのイメージサークルでフルサイズカメラに対応しながら、写野周辺でもシャープな星像を結んでくれる。反射防止コートのASコーティングや筒内にも丹念なつや消し処理を施すことで、光量ロス、ゴースト、フレアの発生を抑えて、反射系ならではの色収差のない天体写真撮影を楽しむことができる。
理論上、放物面鏡であれば同等の効果が期待できるが、他製品への応用は自己責任での利用となる。
また、「エクステンダーPHキット」に、接眼アダプター※を併用すれば、倍率が高いまま視野周辺のコマ収差を補正した像を眼視で確認することが可能だ。
※2インチ（50.8mm）規格の接眼アダプターに対応。
＜作例＞
＜接続チャート＞
■Vixen 天体望遠鏡 エクステンダーPHキット
セット内容 エクステンダーPH、EXチューブ66
対応鏡筒 R200SS鏡筒、ニュートン反射（Φ50.8mmスリーブ）
レンズ構成 3群4枚
コーティング ASコーティング（1面あたり最大透過率99.9％）
倍率 1.4倍
焦点距離 R200SS鏡筒の場合 800mm（F4）→ 1120mm（F5.6）
イメージサークル φ44mm（画角36×24mmフルサイズ対応）
周辺光量 70.2%
取付規格 ねじ込み M56、P=0.75mm（オス）、差し込み φ50.8mm
フィルター取付 48mm（市販フィルター）取付可
眼視観測 可
大きさ 外径56mm×長さ128mm
質量 245ｇ
〈文〉稲葉利二