笠井爾示さんが写真集『七菜乃と湖』を上梓した。モデルの七菜乃さんと、3年をかけて紡いだフォトストーリーだ。
逢瀬は別れがあるからこそ、愛おしく濃密になる。カメラマンとモデルは都内で密会を重ね、時折、台湾や山中湖へと足を伸ばした。相手は手を伸ばせば届くところにいるのだけれど、入り込むことができない隔たりを感じる。街中で会っていると気持ちが通じ合うように思えるけど、不思議と室内で裸体で向き合うと距離が離れてしまう。1枚1枚に共通して漂うのは儚さであり、それが写真に物語性と余韻を響かせる。ページを開くたびに違うストーリーが立ち上がってくる。
■笠井爾示『七菜乃と湖』
B5判変型・160ページ
本体 3,200円(税別)
2019年3月25日発売
リブロアルテ
〈文〉市井康延